第4部第11話 ロマンスは突然に⑵
朝から街の外壁を一周する守とモモちゃんは、日課のパトロールが終わり、訓練場に顔を出していた。
ここでは、訓練指定日に指定された班が、射撃訓練をしている。
射撃教官は遠藤だった。意外にも拳銃の指定指導員らしく、射撃訓練の流れはスムーズだ。
「あれ?守とモモちゃんじゃないか。守は撃っていく?」
「いや、ちょっと気になることがあって顔出しただけだよ。」
遠藤は訓練を中止し、ハイポート訓練の自主練をさせる指示を出していた。
「うわぁ、ハイポート訓練きっついんだよなぁ。」
「仕方ないじゃない?走った後すぐに構えられないと使い物にならないよぉ」
飄々と言ってのけるが、かなりきつい訓練だ。
基本的に現代とは設備が違いすぎるが、サーキットがないから、設置された射撃台まで銃を持ったまま走り、射線に着いたら即構えるを繰り返す訓練だ。
何本もやらされると胃の中が空っぽになるくらいきつい。
「それで?きになる事って?」
ヘラヘラした顔から急に真剣になる。
「昨日金焼き行ってきたんだけど、見慣れない女がいてさ。そいつが妙に違和感があってさ。」
「へぇ、違和感ねぇ。ってことはしっかりお話してきたんでしょ?」
「そうなんだが、話した感じはそうでもないんだが、なんかこう気持ち悪いんだよな。」
ふぅーん、と首を傾げる遠藤。
昨日の焼き芋亭での話を細かく話す。
「うーん、どうだろうねぇ。本当に盗賊に襲われたのなら大変だろうけど。服装は?」
「白い高そうな服を着ていたなぁ、いかにも貴族というか。」
「靴はみた?汚れとかは?」
「靴...あれ?汚れ...?なんでだろ、普段はよく見るはずなのに思い出せないっ」
「ほぇー、何してるのさー。とりあえず美女で白い貴族みたいな服って事しかわからないじゃない。」
「す、すまないっ、遠藤さんの検索でなんとかなったりしないかな?」
「いやぁ、基本的には僕の力ってデータベースにアクセスできるって事なのよね。この世界はデータベースってのが無くてね。基本的には行商人が販売してる新聞的なのを検索してるだけだからね。」
両手を広げて肩をすくめる遠藤。
そうか、と肩を落とす守に笑いながら問いかける。
「でも、気になるってさ、我々の基本的な捜査の始まりなわけじゃない?僕は射場の安全面もあるから、訓練時間中は一緒に行動出来ないけど、今は沢山仲間が出来てるから捜査しようよ。その女をさ。」
ひょんな事から異世界で捜査を始める事になるが、防犯カメラもなく、写真もないからこその聞き込みが始まった。
守はまずは昼時の休憩中である、金の焼き芋亭に向かうのだった。
「やぁ、休憩中悪いね。」
「いやぁ、駐在さん昨日も来てたけど、今日はどうしたの?時間終わっちゃったよ?」
「あー、今日は飯を食べに来たわけじゃないんだ。」
守の言葉に店の店主は首を傾げる。
それはそうだろう。
この世界には警察といった概念は薄く、基本的には軍が憲兵を持ち王都の治安を守っているのだ。
こうやって聞き込みをすることも、久しぶりだから少し緊張する。
守は久しぶりの感覚に高揚しつつ、店主に昨日のリディアと名乗る女について、色々と聞いてみるのだった。




