第3部第1章 速達飛竜便
王都で尋問を終えたアデルは、謁見の間を飛び出した。
康隆の言葉が耳から離れない。五人の異世界人。村を滅ぼした現実。スキルという、常識を超えた力。
「まずい……守さんに知らせなきゃ。今すぐに」
アデルは衛兵に駆け寄り、息を切らせながら叫んだ。
「飛竜を一頭、借りられるか! 急ぎだ!」
衛兵が目を丸くしたが、王命に従い厩舎への案内が許可される。
巨大な石造りの厩舎。その奥で、鎖につながれた黒緑色の飛竜が身じろぎしていた。鱗の隙間からは淡い熱気が漏れ、鋭い眼光がこちらを射抜く。
――人を乗せ、大空を渡るための存在。
この世界では、遠距離の連絡や緊急移動に欠かせぬ飛行手段だった。
「悪いが……急ぎなんだ。頼むぞ」
アデルが鞍に飛び乗ると、飛竜はひとつ甲高い鳴き声を上げ、翼を広げた。
次の瞬間、城壁を飛び越え、風を裂いて空へ舞い上がる。
眼下に広がる王都の街並みは、壊れた城壁と修復途中の建物で傷ついていた。人々が蟻のように動き、戦禍の余韻が色濃く残っている。
「……遅れてはならない」
アデルは強く拳を握り、飛竜の首筋に身を伏せた。




