獅子は眠らず
親愛なる白鳥。
約束した通り、貴女の国の書店で、この物語と、瞳が合いますように。
私、あらずして、また君もなし
時を待たず、獅子は眠らず
歳月を待たず、老成し得る心ありて
儚からずや、永久の魂
父の葬儀の日、私の腕を、力一杯、握った親戚のおばあちゃん。
「泣くんじゃない。泣いてはいけない。」
その時から、喪に服せないでいる。苦い思いだけが、身体中を廻り、恨んだこともあった。
なぜ・・・、と問い続けた。空は春の初めだというのに、真夏のように太陽は照りつける。
「泣くな!」
毎日のように、幼少期、叱られ続けた事を思い起こしてる。
父さんが、死んでまで、私に伝えたいのは、たったそれだけ。
病院へ行く自分が、通りすがる、授業参観帰りの、親子3人を見るたびに、泣きたくても、泣けないまま、唇を噛んだこともあった。
でも、今は、わかってる。ちゃんと。
涙は、人のためにある。
自分の為に、泣くことは、しなくていい。
何かを察したからか、晴明が云う。
「汝、試して思いからずや。」
何と言いか、察しがつくから、言い返してみる。
「汝、きみ思うべからず。」
お互い、苦笑して終わる。ただ、綺麗な、茜空だった。
多重投稿。NOVEL DAYSにて掲載済作品です。お引っ越しいたしました。