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おまけ2 第一王女は物申す!



「おのれ! 地の文!」


 おい。第一王女よ。いきなり御挨拶じゃないか。


「言いたくもなるでしょ!」


 ……何がだ?

 あと、当たり前の様に地の文と会話するのを止めろ。


「第五話目でやってるんだから構わないでしょ!」


 構うわ!

 第五話目でやって、流石にどうかと思って、それ以降はやってないだよ!


「どうせ、誰も読んでない場末のコメディー作品の上、おまけ話なんだから良いでしょ!」


 ……それはその通りなんだが、流石に自由すぎやしないか?


「そんな事より!」


 ……何だよ?


「本編、最終話よ!」


 最終話?

 それが、どうかしたか?


「私の描写が無いのよ!」


 ……無かったか?


「無いわよ!」


 じゃあ、ちょっと、読み返してくる。



 ………………。



 ……本当だ。

 登場してないな。


「私、お兄様の妹よ! 結婚式に参加して無い訳ないでしょ!」


 そうだね。参加してるはずだね。


「私、第一話で登場しているのよ! 最古参よ! 何で、忘れたの⁉」


 ……いや、私の中で、お前は影が薄いんだ。


「毒霧を吐いたり、釘バットを振り回してるのに⁉」


 ……そう言われると、それなりにインパクトはあるか?


「王女が毒霧吐いてるのよ!」


 いや、書いているうちに王太子と特待生の二人のキャラが濃くなっていって、結果的に、お前の影が薄くなっている。

 考えてもみてくれ。凶器攻撃を得意とする王女と、凶器として使用されている王太子だと後者の方が印象に残らんか?


「くっ……。私もブーメランになる必要があるという事?」


 本編が終わっているのに、今更、二番煎じな事やられてもな……。


「……それもそうね。一先(ひとま)ず、この件は良いわ」


 そうか。じゃあ、もう話しかけるなよ。


「待ちなさい! 話は終わってないわ!」


 ……まだ、何かあるのかよ?


「私の婚約に関してよ!」


 ……お前の婚約者とか出てないはずだが?


「他国の王太子よ。婚約解消になりましたけど」


 ……それと私に何か関係が?


「私の婚約は、帝国に対抗する同盟強化の為の婚約だったのよ」


 それがどうかしたのか?


「貴方が帝国を崩壊させたせいで、同盟強化する必要がなくなったのよ!」


 崩壊させたのは勇者だ。

 それに、別に婚約解消しなければよかっただけの話だろ。


「輿入れするはずだった同盟国が崩壊した帝国に侵攻したのよ! 大義名分の為に、帝国の血を引く者に婚約者を変更する事になったの!」


 ……お気の毒様で。


「貴方がネタに詰まって、適当に帝国を崩壊させたせいで婚約解消になったのだから、代わりの婚約者を用意しなさい」


 無茶を言うな。


「できれば、国内の者が良いわね。そうすれば、令嬢格闘技を封印する必要が無いでしょうし……」


 勝手に話を進めるな。

 あと、他国で令嬢格闘技を封印するだけの理性はあったんだな。


「とりあえず! 私の婚約者を用意しなさい!」


 ……面倒だが、仕方ない。

 適当に見繕(みつくろ)ってやる。

 何人か候補者を準備するから、そこから勝手に選んでくれ。


「ええ。お願いね」


 傍若無人(ぼうじゃくぶじん)な第一王女は、そう言うと、その場から去っていく。

 その顔は、何処か満足気だった。


「取ってつけた様に地の文の仕事に戻るのね」


 放っとけ!






 その日、第一王女の婚約者候補達が王城の一室に集まっていた。

 集まった理由は、当然、第一王女の婚約者選びの為である。

 候補者は四人。いずれも高位貴族の子弟だ。

 しかし、当然ながら、高位貴族各家の跡継ぎは婚約者が決まっており、この場に居るのは継ぐ爵位のない者達である。


「集まって頂けた事に感謝しますわ」


 第一王女が候補者達に声を掛ける。

 声を掛けられた候補者達は、目に見えて気合が入っている。

 皆、目がギラついていた。


「私の伴侶となる者には伯爵の爵位が与えられる事になりましたわ」


 第一王女の言葉に、候補者達は、声を上げる事は無いものの、明らかに歓喜の表情を浮かべていた。

 この王女相手に妙に気合が入っていると思っていたが、爵位が付いてくるというなら候補者達の気合の入り様も納得である。


「領地に関しては、帝国が崩壊した際に帝国から切り取った土地の一部が与えられる事になります」


 帝国崩壊のドサクサに紛れて、しっかり領土をふんだくっていたらしい。

 相変わらず意外と抜け目がない国である。


「……前置きは、これくらいに致しましょう」


 そう言った第一王女は、候補者達を確認する様に視線を巡らす。

 候補者達は緊張した面持ちで、その視線を受け止めていた。


「一人ずつアピールして頂きましょう」


 第一王女の言葉に、候補者の一人が、一歩、前に進み出る。

 そして、堂々とした風に言葉を発した。


「伯爵家次男です。私からで宜しいでしょうか?」


 伯爵家次男の言葉に、第一王女が小さく頷く。


「構いませんわ」


 第一王女の許可を受け、伯爵家次男が、さらに前に進み出る。

 そして、第一王女の目の前で恭しく一礼し、宣言する。


「一人ジャーマンスープレックスいきます!」


 一発芸でもやりに来たのか。

 何故、婚約者選びをする王女に対する自己アピールが一人ジャーマンスープレックスなのか?

 ……いや、分かっている。この、とんでも国家の婿探しである以上、耐久力がアピールになるのは分かる。

 だが、他にもやり様はあるはずである。


「でりゃぁぁぁぁっ!」


 伯爵家次男が雄たけびと共に後方へと跳ぶ。

 そして、ブリッジをきかせ、頭部から床に着地した。

 その瞬間、鈍い音が響いた。

 床と人の頭が激突した音である。


「なかなかですね……」


 第一王女が声を漏らす。

 その視線の先には伯爵家次男。

 彼は、崩れ落ちる事なく、頭部から着地した姿勢を保っていた。

 その姿勢は、彼にジャーマンスープレックスを仕掛けた人物が幻視出来そうな程だった。

 無駄に芸が細かい男である。


「やるな……!」

「イマジナリー第一王女殿下が見えてきそうだ……!」


 イマジナリー第一王女が何なのか、知りたい様な、決して知りたくはない様な微妙なところである。


「侯爵家三男です! 次、宜しいでしょうか!」


 叫ぶ様にして、侯爵家三男が前に進み出る。


「宜しいでしょう」


 第一王女の許可を得て、侯爵家三男が、いまだに姿勢を崩さぬ伯爵家次男の(そば)まで進み出る。


「失礼します!」


 そう叫んで、侯爵家三男が服を脱ぎ始める。

 そして、上半身が裸になる事で露わになった驚愕の事実。


「今日は、朝から全身をきつく(しば)り上げてきました!」


 変態か、貴様は。

 耐久力が物をいうこの国でも、流石にそれは無いと思う。

 それと、誰に縛り上げてもらったのかが気にはなるが、決して知りたくはない。


「ふむ……。新たなアプローチですね」


 第一王女が感心した様に呟くが、絶対に、いらんアプローチである。

 もはや、そういうプレイにしか見えない。


「侯爵家四男です! 小道具の使用を許可して頂けないでしょうか!」

「許可します」


 第一王女の許可を受け、扉が開き、室内に割と大きめの箪笥(タンス)が運び込まれる。

 そして、第一王女の前に箪笥が設置される。


「いきます!」


 宣言と共に、侯爵家四男が靴を脱ぎ棄て走り出す。

 箪笥目掛けての全力疾走だった。

 箪笥を(かす)める様に侯爵家四男が走り抜けた瞬間、鈍い音が響いた。

 その場に居た者達全てが目撃していた。

 侯爵家四男の右足の小指が箪笥の角にぶつかったのだ。

 絵面は地味だが、確実に痛いやつである。


「まだ終わりじゃない!」


 そう叫んだ侯爵家四男が折り返して走ってくる。

 そして、また響く鈍い音。

 今度は左足の小指が箪笥の角にぶつかっていた。


「地味な不幸代表、箪笥の角に足の小指をぶつけるを逆手に取るとは……」


 第一王女が感心した様に言う。


 ……感心する様な事は何一つないはずである。

 正直、ただ頭がおかしいとしか思えなかった。


「……最後は私の番ですね」


 四人目の男が前に進み出る。

 その顔は不敵な笑みを浮かべていた。


「現公爵の末弟です。私も道具を使用させていただきたい」

「宜しいでしょう」


 第一王女の言葉に、公爵の末弟が懐から袋を取り出す。

 そして、袋を逆さにして、これ見よがしに袋の中身をばら撒いて見せた。


「これは……! 洗濯ばさみ!」


 第一王女が驚愕の声を上げる。

 そう、彼女の言う通り、袋の中身は幾つもの洗濯ばさみだった。

 正直、何がしたいのか分からない。おそらく、洗濯ばさみで自らの皮膚でも挟んでみせるのだろうが、他の面々と比べると地味すぎた。


「公爵家の倉庫から見つかったマジックアイテムです」

「と……、申されますと?」

「電流が流れるのです」


 何が目的で作られた洗濯ばさみなのか。

 罰ゲーム以外では用途が思いつかないマジックアイテムである。


「誤って、通常の洗濯ばさみとして使用された際、洗濯物が炎上しました」


 どんな電圧だ。

 専門外なので詳しい事は分からないが、ヤバい電流が流れる事だけは分かった。

 そして、絶対に罰ゲーム用でもない。むしろ処刑用洗濯ばさみである。


「フフフ……。これを顔中に着けてみましょう」


 そう言った公爵の末弟は、自らの顔に、洗濯ばさみを、一つ、二つとつけていく。


「スパーク!」


 公爵の末弟が叫んだ瞬間、その身体から放電が始まる。

 公爵の末弟が前へと掌を突き出し、その手から青白い光が伸びた。


「ジャジャジャジャジャジャーマン!」

「キキキキキ緊縛!」

「タン、タン、タン、タン、タ〇スにゴン!」


 光が他の候補者三人に直撃していた。

 それぞれ、訳の分からない言葉を口走っている。


「こここここれが、せせ洗濯ばさみみみみの力ららでです!」


 公爵の末弟が感電しながら言う。

 指先から放電して見せつつの決め顔だが、その顔は洗濯ばさみだらけだった。


「感電して見せるとは……」


 絞り出すような声で第一王女が言う。


「皆さん、見事です」


 賞賛の言葉を第一王女が口にする。

 賞賛するべき点が本当にあるのかは疑問だ。

 その場に居るのは、一人ジャーマンスープレックスの態勢を崩さない男と、自ら緊縛された変態、箪笥の角に足の小指をぶつけに行く狂人。そして、一人だけ異能力にでも目覚めたかの様に放電し続ける奇人である。


「皆さんの魅力をさらに見せていただけますか?」

「「「「お任せください!」」」」


 候補者四人の声が重なる。

 どうやら、この狂宴は終わってくれないらしい。

 四人が我先にとイカれたアピールを始める。


「一人ブレーンバスター!」

「こちらは一人鞭打ちだ!」

「なんの! 画鋲(がびょう)ロード!」

「ダブルスパーク!」


 今更だが、こんな連中が王女の降嫁先として適格なのか疑問だ。

 だが、第一王女本人は満足気だった。

 まあ、本人が満足なら何よりである。

 これ以上、地の文に文句をつけないなら、正直なんでもいい。


「地の文のくせに良い仕事ですね」


 ……本当にそうだろうか?

 まあ、良い事にしておくか。

 その方が平和だ。


「ハイパースパーク!」


 閃光が部屋を埋め尽くす。

 男達がもれなく感電する。

 そんな男達を満足気に見つめる第一王女。

 酷い空間である。

 正直、どうしようもないと思う。

 だからこそ、こう思う。



 もう、どうとでも、勝手にしてください。


遅くなって申し訳ありませんでした。

今年中は無理ですが、おまけ話は後一話くらい上げるつもりです。

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