表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

第1話 / 第2話 : 俺の妹 / 天才ギタリスト楓

登場人物紹介


中川(なかがわ) 煌大(こうだい):本作の主人公。楓の兄。成績オール3の超絶凡人間。

中川(なかがわ) (かえで):煌大の妹。ふてぶてしいがほどほどにやさしい。成績はオール4で煌大よりはマシ。

俺の妹、楓は簡単に言うと「生意気」で「ふてぶてしい」。

だが、そのくせ「ほどほどにやさしい」からやっかいだ。


今朝もそうだ。朝食を食べ終えた俺がバイトに行こうと玄関に向かうと、楓がソファに寝転びながらスマホをいじっていた。

「行ってくる」

一応声をかけると、彼女は画面から目を離さずに言った。


「んー、雨降るかもよ。傘持ってけば?」

「天気予報、降らないって言ってたぞ」

「ふーん。なら濡れれば? 別に私には関係ないし」


俺は「なんだそりゃ」と呆れつつ、そのまま玄関を出た。でも階段を降りる途中で、なぜか傘が1本ドア脇に立てかけてあるのを見つけた。俺の傘だ。

……まあ、きっと母さんか父さんが置いたんだろう。そう思って傘を持って出かけた。


だが、その日の夕方、バイト先から出ると予報に反して土砂降りになっていた。傘が役に立ったのは言うまでもない。


帰宅すると、楓はいつものようにリビングでソファに転がっていた。

「傘、役立った?」

俺が黙っていると、彼女はニヤリと笑った。


「お前が置いたのか?」

「あー、別に? たまたま玄関にあったから、気が向いてそこに立てかけただけ」

そのふてぶてしい顔を見ていると、素直に「ありがとう」と言う気にもならない。


楓はこんなふうに、必要以上に優しくしない。でも、ギリギリのラインで俺を助けるのだ。その絶妙な「ほどほどさ」が、彼女らしいと思う。


そんな彼女は学校では何かと「お姉さん肌」だと評判らしい。クラスメイトの面倒をよく見るし、先生たちにも信頼されている。俺にはその片鱗すら見せないが、たまに垣間見える行動で納得することもある。


たとえば、数日前。俺が風邪で寝込んでいるとき、食欲がない俺のために部屋の前にコンビニのゼリーが置いてあった。もちろん「誰が置いた?」なんて聞いても楓は「知らない」とすっとぼけるだけだ。


「楓、お前ってさ……」

「なに? キモいこと言わないでよ」

「いや、なんでもない」

素直に感謝したくても、楓相手にはどうしても言葉が出てこない。俺たち兄妹の距離感はいつもこんな感じだ。


だけど、こんな不器用なやり取りを繰り返しているうちに、俺は徐々に気づき始めていた。楓がただの生意気な妹ではなく、俺の生活をどうにか支えてくれている存在なのだということをーー。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


その夜、リビングから音楽が漏れてきた。

俺の部屋で課題に取り組んでいると、耳慣れたギターのメロディが聞こえる。

「……またかよ」

楓は最近、エレキギターを買った。理由を聞いたら「気分」とだけ返されたが、俺はその手元の不器用な動きから、きっと「かっこいい」とかそんな理由だろうと踏んでいる。


リビングをそっとのぞくと、楓はギターを抱えてソファに腰掛けていた。ヘッドホンを片耳だけ外して、真剣な顔でコードを押さえる指先を見つめている。


「まだ下手だな」

俺がからかうように言うと、楓はギロッと睨んできた。

「うるさい。上手くなったらライブでもやってやろうじゃないのよ」

「その腕じゃ無理だろ」

「……っ、じゃあ聞いてくれる? 今日弾けるようになった曲、聞かせてあげるよ」


そう言ってギターを構え直す楓の目は、少しだけ挑発的だった。


「ふーん、どんな曲?」

「秘密。でも、すごいやつ」

「すごいやつって何だよ」

「聞けばわかる」


俺はなんとなく椅子を引き寄せて腰を下ろすと、楓は深呼吸をして、ぎこちない指の動きで弾き始めた。


音程は怪しく、リズムも少しズレているけれど、耳をすませるとそれは懐かしい曲だった。中学生の頃、俺がよく部屋で流していたバンドの曲だ。


「……これ、俺が聞いてた曲じゃん」

「アニキ、最近あんまり音楽かけてないけど、好きなんでしょ」

「……お前、覚えてたのか」


楓はギターを弾く手を止め、照れ隠しのように肩をすくめた。

「別に。たまたま耳に残ってただけ」

その言葉とは裏腹に、きっと彼女はわざわざ練習していたに違いない。


「ありがとな」

そう言うと、楓はふてぶてしい表情で笑った。

「別に。どうせ暇だったし」


本当にこいつは、素直じゃない。

けれど、この不器用な優しさが、俺の中でなんだか妙に心地よく感じられる瞬間がある。


「お前、案外ギター向いてるかもな」

「でしょ? そのうち、兄の尊敬を一身に集める天才ギタリストになる予定だから」

「お前のギター聴きながら尊敬できる日が来るといいけどな」


そう言って俺は部屋に戻った。けれど、その夜の楓のぎこちない演奏は、なんとなく耳に残って眠れなくなった。


彼女のふてぶてしさの奥には、確かに優しさが詰まっている――そう思える日が、少しずつ増えてきている気がする。

こんにちは!

現役高校生のAzsA(あずさ)です!

このタイトルは流行語大賞が「ふてほど」であることを知って『あれ…なんかラノベみたいな名前じゃね…?』という思考になり書き始めました。


実はこの主人公とその妹、苗字と名前は知り合いの名前を拝借しています。

何となく心当たりがある方、いるかもしれませんね。


小説投稿初めてなのでこれぐらいにしておきます。

次回更新は未定なのでご了承ください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ