表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
依存性  作者: スノスプ
3/14

クラス内と会話


 高層ビルの一角にある教室。広々とした窓からは、無数の浮遊ビークルが行き交う都会の景色が広がっている。高度情報資料学校の生徒たちは、政府高官や要人の子供ばかり。制服を着た生徒たちが席に着き、今日の授業の始まりを待っている。


 フィリスは、窓際の席に座り、外の景色に目をやりながら、ゆっくりとため息をついた。頭の中では、先日の戦闘の光景が鮮明に浮かんでいる。


「フィリス先輩、お疲れのようですね。」隣の席に座る菜穂が、心配そうに声をかけた。


「ん?ああ、ちょっとね。」フィリスは顔をほころばせ、菜穂の方に振り向いた。「最近、あまりよく眠れなくてさ。戦闘のことが頭から離れないんだ。」


「それは大変ですね。でも、私たちは日常を大切にしなきゃ。戦闘のことは、少しでも忘れられるように…」菜穂は言葉を選びながら続けた。「例えば、今日の昼食は何にするか考えるとか?」


「昼食かあ…」フィリスは考え込む。「今日は何があったっけ?あんまり食欲がないけど…」


「今日のメニューは確か、特製のカルボナーラだったと思います。クリームソースたっぷりで、エネルギー補給にぴったりですよ!」菜穂は、少しでもフィリスの気持ちを明るくしようと努めた。


「それなら、少しは食べてみようかな。最近、栄養失調になりそうな勢いだから。」フィリスは苦笑した。


「フィリス先輩が栄養失調なんて、それは絶対にダメですよ!ちゃんと食べて、元気を出してください。」菜穂は軽く拳を握り、応援するように言った。


 その時、教室のドアが開き、背の高い男子生徒が入ってきた。彼は、周りの注目を集めながら、教室の中央へと進んだ。


「おや、あれは新しく転入してきた生徒だね。」フィリスが興味深げに言った。


「そうですね。名前は…確か、アオイ・シンジ君だったと思います。」菜穂が応えた。


 アオイは一瞬、フィリスたちの方をちらりと見たが、すぐに別の方向に視線を移し、黙って自分の席に着いた。


「なんか、無口そうな子だね。ちょっと気になるな…」フィリスは、アオイをじっと見つめながら言った。


「でも、彼ってすごく優秀なんですよ。政府から特別に推薦されて転入してきたみたいです。成績もトップクラスらしいですし。」菜穂が情報を付け加えた。


「へぇ、そうなんだ。それにしても、この学校に来るなんて、何か特別な理由がありそうだね…」フィリスは少し考え込んだ。


 その時、教室の天井に設置されたホログラムスクリーンが突然点灯し、教師の姿が映し出された。彼は、軽く咳払いをしてから生徒たちに向かって話し始めた。


「今日は、特別授業として、皆さんに新しい課題を出します。」教師は真剣な表情で続けた。「この課題は、政府の新たなプロジェクトに関するものです。皆さんの創造力と分析力を試すものですので、全力で取り組んでください。」


 フィリスと菜穂は互いに目を見合わせた。政府のプロジェクトに関する課題が出されるのは珍しいことではないが、何か重大なことが始まろうとしているのではないかと、二人は感じた。


「さて、課題の内容を発表します。」教師の声が教室に響き渡る。「皆さんには、次の月の終わりまでに『未来の人間社会の設計図』を作成してもらいます。技術、文化、倫理、経済など、さまざまな観点から、人間社会の未来を描いてください。」


 教室内がざわめいた。生徒たちは、突然の難題に戸惑いながらも、やる気をみせる者、困惑する者、さまざまな反応を見せていた。


「フィリス先輩、どうしましょう?これ、かなり難しい課題ですよね。」菜穂は少し不安そうにフィリスに尋ねた。


「うーん、確かに。技術だけでなく、倫理や文化まで考えなきゃいけないなんて、大変だよね。」フィリスは眉をひそめた。「でも、やるしかないか…。一緒に頑張ろう、菜穂。」


「はい、頑張りましょう!」菜穂は笑顔を見せたが、どこか緊張しているようだった。


 その後も、クラス内では課題についての議論が続いた。誰もが、未来の社会をどう描くべきかについて意見を交わしていたが、その中には楽観的な意見もあれば、悲観的な意見もあった。


「僕たちの未来は、技術の進化によってもっと快適で便利なものになるはずだ。」前列に座っていた生徒が、意気揚々と発言した。


「でも、それだけでは足りないわ。倫理的な問題を無視して技術だけが進化すると、取り返しのつかない事態になるかもしれない。」別の生徒が反論した。


「未来を考えるって難しいですね…」菜穂がぽつりと呟いた。


「そうだね。でも、こういう課題を通じて、私たち自身も成長できるかもしれない。」フィリスは、少しずつ気持ちを切り替えようとしていた。


 その時、アオイが突然立ち上がり、皆の注目を集めた。「未来を考えることは重要だ。でも、僕たちは過去から何を学ぶかも考えなければならない。」彼は静かながらも、力強い声で言った。


 教室内が再び静まり返った。アオイの言葉が、皆にとって深い意味を持つように感じられた。


「確かに、過去を無視しては未来を語れないね…」フィリスは、小さく頷いた。


「彼、やっぱりただ者じゃないですね…」菜穂は、アオイの背中を見つめながら呟いた。


 フィリスと菜穂は、これからの課題に向けて新たな決意を固めた。彼女たちにとって、この課題は単なる学校の宿題以上のものであり、未来を見据えた新たな一歩となるはずだった。


**そして授業の終わりが近づき、教室のドアが再び開いた。**

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ