■3 邪魔者
「昨日繁華会の会合が行われた港区の会場で、数々の賞を受賞した貴重な作品の展示が僅か数時間後に全て枯れてしまうという事件がありました。何者かが除草剤を仕込んだのではないかと思われ厳重な水質の調査が行われましたが結果毒物のようなものは一切検出されず、教会の信者らはこれを検査機関の陰謀であると唱え訴訟を起こす意向を仄めかしています」
クレー射撃、クイックドロウ、ラピッドファイア。
昨日は畑違いのクロスボウ競技に初めて挑戦し、初めてにも関わらずその道のプロの顔をも曇らせる腕前を披露してちょっとした騒ぎになった。
檀郁人という男はあらゆる射撃競技で王座を征し、若干20歳にして史上最強の銃士と呼ばれるに到ったのだが、対する相手が植物なのでは朝のニュースすら話題を持っていかれるこの始末。
記者のインタビューも受けたはずだったが、エクスプランター以前なら大体は翌日に報道されたので報道予定日をわざわざ聞きはしなかった。
ここまで腕を上げるのに何十万、何百万の無駄撃ちを繰り返した事だろう。
如何にハーバー・ボッシュ法で無限のように得られるアンモニアは火薬の原料になるとはいえ、加工の手間と危険と金属資源がかかる弾薬は決して安いとは言えない。
爆音を奏でて破裂し彼方に飛び去って行ったその金額は支援金で賄われているので興味もないが、巨額を費やすに相応の努力はしてきたつもりなので、既に褒められ尽くして居ようともより大勢の評価を受けたいと思うのは妥当な事ではないだろうか。
つまらない朝にうんざりし、ソファに放り出してあったエアガンでテレビの電源ボタンをを打ち抜いて画面を切った。
その跳弾がテレビ棚の横の花瓶に当たり、更に反射して目元に向かって飛んできたのを間一髪の反射神経で躱す。
花など何処でも見られるご時世になったので家に飾る気にならないが、それだけでもとてもお洒落なデザインだからと飾り続けていた花瓶だ。故に植物からの反撃ではない。自分のむしゃくしゃした気持ちが自分に返ってきただけの事だ。
「あっぶな。こんな事で競技者人生に幕を引くことになったら笑えない」
家でエアガンを撃つときは伊達メガネをするよう心掛けていたが、何せ寝起きすぐだったので眼鏡をしているのかいないのかも郁人自身解かっていなかった。
部屋はBB弾がそこかしこに転がっていて、たまに素足で踏んづけて悶絶する。
洗濯ロープに吊るされたコピー用紙に印刷した的は上下で切り離される寸前まで打ち抜かれ、何かの拍子に揺れる様が非常に目障りだ。
以前は掃除をしてくれる恋人が居たが、愛用のエアガンをゴキブリ退治に使用されて郁人がキレ、私と銃とどっちが大事なのなどと問い詰められた挙句に銃だと言ったら別れてしまった。
実にくだらないが、女など名誉目当てにいくらでも寄って来るので惜しくもない。
少し疲れたのでこのところは独り身の気楽さを満喫していたが、さすがに部屋の汚さが気になってきた。
「史上最強の名に対等で関われるような女って、どっかに居ないかな」
などと溢すのは我ながら傲慢に思った。こんな事を女神にでも聞かれたら鼻で笑われそうだ。
『人間の分際でわらわの隣に並ぶつもりとは、ゆえに貴様らは愚かと言われるのだ』
と、女神に蔑まれる妄想をしてみた。
口調は何かのアニメで見たようなイメージを反映した。
決してマゾ気があってこのように虐げられたいわけではないが、いっそこのぐらいの気位があった方が張り合い甲斐があって楽しめそうだ。
とはいえ、こんな口調をリアルに話す奴は実際見た事がない。
居たら居たで、コミュ障扱いで気位がどうのこうのでは無いのかもしれない。
また年齢変更してます。18歳→20歳。
競技自体に年齢制限はありませんが銃の所有は20歳からです。
まあ、筆者もそこまで興味が強く持てる分野ではありません。
いかんね。情報は楽しく取り入れて楽しくアウトプット。
勢いで書き始めた小説が今のペースで投稿できるのも、アクセス解析など気にせずそこに重点を置いてるからです。




