15話『幼き恋心は愛を唄う』★
ああ。まったく面白くない。
滅多にない消沈するアベルを前に、アズラの幼き心を支配するのは憐憫ではなく、嫉妬心だった。
(アベルお兄ちゃんはいつもカインお兄ちゃんのことばっかり)
兄弟間の確執を、アズラが幼いながらも知っているつもりだ。
アベルはカインに認められたがっていて、彼に昔の優しい兄に戻って欲しいと思ってる。
でも、そのせいか、いつもどこでもアベルの口から必ずカインの話題が出てくるのだ。今こうしてアズラと一緒にいる時も。
カインのことで悩む。
カインのことで落ち込む。
全部カイン関連のことだ。
様々に不満が湧いてきて、少女は眉の角度を鋭くさせ、
「そんなのアズラが知るわけないよ」
そう吐き捨て、すぐに彼女はハッとした。
思った以上に素っ気ない返事が自分の口から出たことに気づいたからだ。
いくらまったく興味のない話だからと言って、これでは──、
「あはは、だよね......ごめんね。なんとなく弱音吐いただけ。アズラに言ってもしょうがないことだよね」
案の定、アズラの態度にアベルは反感こそ見せないものの、苦笑で自己完結してその場を取り繕う。
それはアベルが困った時にする特有の癖だ。
あぁ!アズラのばかばか!
アベルお兄ちゃんを悲しませたいわけじゃないのに!
「えっと、・・・・・・」
アズラは大きく息を吸い込み──吐いた。
「アベルお兄ちゃん次第、だと思う」
歯切れ悪くても、すぐにはそれだけ言うのが精一杯だった。
数度呼吸して、もう少し落ち着いてから言葉をつづる。
「と言っても、カインお兄ちゃんが心開かない限りは難しいと思うな」
「うん......やっぱり、そうだよね......」
カインという薄情な長兄に翻弄されてひどく現実がままならないこの次兄のために妹のアズラなりにできることはなんなのか。
その健気な思いから、
「でもアベルお兄ちゃんがカインお兄ちゃんに関わるのやめたらもうおわりじゃない?」
「あ・・・・・・」
アベルは息を呑んだ。
アズラの言葉には心当たりがあるからだ。
『アベル兄さまが諦めてしまったら、カイン兄さまは本当の意味で一人になってしまいます』
『そこで見限ってしまっては、それこそ永遠にあの人は心を開いてくれない。そんな気がします』
今朝のアワンとの会話を思い出す。
頭蓋の内側でこだまするアワンの声を、アベルは無意識に心中で繰り返すのだ。
「びっくり。アワンと同じ事を言うんだね。やっぱり姉妹なのかな」
「アワンお姉ちゃん?」
「うん。実はね──」
今朝山羊の乳搾りの当番にアワンとした話をアズラに簡潔に語った。
「へぇ〜アワンお姉ちゃんがそんなことを言ったんだ」
一部始終を聞かされたアズラは実に愛らしく首を傾げながら、
「確かにカインお兄ちゃんってさ、アズラたちにはいつも見向きもしないけど、アベルお兄ちゃんにだけは素で接してるよね。そういう意味では、カインお兄ちゃんはアベルお兄ちゃんには心を開いているのかも!」
明るくそう結論づけるアズラに、アベルは苦笑を溢す。
「あはは......素といっても、言い掛かりや八つ当たりのが多いけどね。それがカイン兄さんにとっての心を開くって意味だったら、あんまり嬉しくないような......」
「それでもアワンお姉ちゃんからしたら羨ましいんじゃないかな」
「そういうものなの?──それにしても、咲かない花が枯れないように、それでも離れずただそばで見守るなんてアワンらしいよね。ぼくも、それを見習うべきなのかな」
アワンの生き様を肯定したも同然の独白に、アズラはつっけんどんに言い返す。
「えぇっ、アベルお兄ちゃんにそんなの似合わない似合わない!」
「え?どうしてなの?」
「どうしてって、アベルお兄ちゃんはどっちかといえば、花に水を与える役じゃないかな?」
「ぼくが......花に、水を与える役?」
予想外のアズラの口から出たワードに、アベルは思わず鸚鵡返しした。
「ほら、お花さんってなんの手入れもしないでただ見ているだけじゃ、咲くわけないし、すぐ枯れちゃうでしょ?お花さんだって、一人の力だけでは生きていけないもん」
「ふーん。そうなんだね。そう考えると、花も人間と変わらないね」
「そうなの!だからね、花が生きるためには、ちゃんと水をあげなきゃ!」
「水......、」
「カインお兄ちゃんがひとりの殻に閉じ籠らないように、アベルお兄ちゃんそれにいつも気に掛けて、手を差し伸ばす──それがお花さんにとっての水だよ!」
いまいち理解していないアベルに、アズラは得意げに語る。
「正直いうと、家族でそんなこと躊躇わずにできるのアベルお兄ちゃんくらいだしね」
「なんかみんなして似たような事を言うね。そんなことないと思うけどなぁ、お父さんやお母さんだってよくカイン兄さん気に掛けてるよ」
「アベルお兄ちゃんは鈍感だから察していないと思うけど。アズラから見たら、お父ちゃんとお母ちゃんはだいぶカインお兄ちゃんを腫れ物扱いしてるよ。親子の正しい距離感をすごく気にしてる感じ」
「腫れ物扱いって......、意外と難しい言葉使うんだね。アズラどこでそんな言葉覚えたの......」
「と、とにかく!アベルお兄ちゃんしかいないの!きっとアワンお姉ちゃんはそれをわかってるから、花に水をあげる役をアベルお兄ちゃんに譲ったんじゃない?アワンお姉ちゃんはアベルお兄ちゃんに期待してると思うよ」
「そんな......、アワンもアズラもぼくを買い被りすぎだよ」
アベルはますます自信のない顔つきになって、懐疑的に言った。
「現にぼくはカイン兄さんをますます遠ざけているし、」
「それは今のアベルお兄ちゃんは水のあげる量とかタイミングが下手なだけだよ」
控えめな反論の上からかぶせて、アズラはアベルの右手に左手を重ねる。
ハッと顔を上げるアベルに、アズラは苦笑を浮かべながら、
「アワンお姉ちゃんにも言われたじゃん!アベルお兄ちゃんはグイグイ攻めすぎだって!加減を知らないとね!」
「う、やっぱりそう思うかい?」
「そうよ!あとはそうねぇ......アベルお兄ちゃんには一つ足りないものがあるんだよね」
「ぼくに足りないもの?それってなんだい?」
「“肥料”だよ!」
「肥料......」
「花ってね、水だけじゃダメなのよね。そこに肥料を加えて初めて花がキレイに咲くんだよ〜!」
「なるほど。じゃあその肥料っていうのはどういうことを意味するの?」
「それはズバリ!!“ケンカ”よ!」
「へ?」
手を叩き、アズラは名案とばかりに顔を輝かせる。
それから困惑で硬直するアベルの方に身を寄せて、
「最初から仲良しなキョウダイなんていないでしょ?だって初めは絶対ケンカしたり、すれ違いとかあるじゃない。アズラだってアワンおねえちゃんとケンカするよ?いっぱいケンカして、それでいつも最後は仲直りするの。そして前より仲良しになるの」
「ケンカ......」
「そういう風にぶつかったり距離を取ったりして、そこで相手のことをたくさん知って、成長していくものじゃないの?それが、花咲くための“肥料”ってこと!」
アベルは唇を真一文字に引き結んで、しげしげとアズラを見つめた。
そして、
「・・・・・・・驚いた。アズラからこんな大人びた意見を聞けるなんて。アズラって、意外によく考えてるんだね」
まさかまだ五才で、言葉も舌足らずな妹の口から、難しい言葉と一緒にアドバイスが出てくるとは思わなかったようだ。
「ちょっとアベルお兄ちゃん!それどう言う意味!?こう見えてアズラだっていろいろ考えてるんだよ!」
「まだ五才なのにすごいね」
「まだ五才じゃなくて、もう五才なの!」
抗議すれば「ごめんごめん」と謝られ、髪をくしゃりと撫でられた。
そうすればアズラはたちまち大人しくなるのをアベルは承知しているのだろうか。いや、おそらく無自覚なのだろう。
「う〜!アベルお兄ちゃん、アズラのことバカにしてるでしょ〜?」
「そんなつもりは無いけど、ちょっとびっくりかな?今日のアズラ難しい言葉の言い回しをするから、いつもより大人びて見えるんだよね」
「もしかして、アズラの素ってそっちだったりしてね?」
「そ、それはっ!」
アベルが冗談半分で訊ねれば、アズラはこの上なく顔を赤くして俯いてしまった。
どうやら図星だったらしい。
「子どもらしくいようとか気を遣ってるのかな?アズラはありのままのアズラでいていいんだよ」
「べ、べつに?気を遣ってるとか、そんなじゃない......よ」
しどろもどろと歯切れ悪くアズラが答える。
言えない。
いつもの舌足らずな言葉使いも、無知なところもすべてアベルに可愛く思われたいがための演技だなんて──そんな自身の計算高さを彼にバレたくないとアズラは内心冷汗を流した。
「あははっ!にしてもアズラまだ小さいのに、すごくしっかりした意見を持っててすごいねぇ!」
だがアベルは大して気に留めず、アズラの言葉を何度も反芻した。
「手を差し伸べるだけじゃなく、ぶつかってケンカして、距離取るのも仲を深めるのに必要......か、考えたこともなかったな」
「確かに、アベルお兄ちゃんって怒らないもんね〜、ケンカとかそういうのすごくダメそうだもん」
「え、そ、そんなかな?」
「だってカインお兄ちゃんとケンカなんてできないでしょ?カインお兄ちゃんにはいつも一方的に言いられっぱなしじゃない!」
アズラに指摘されたアベルは自分で少し考えてみた。
確かにアベル自身あまり誰かに怒ったりはしない。怒る前に悲しいなと思いながら自分で全部自己完結するタイプだ。
「う......、それとこれとは別じゃないかな?カイン兄さんに一つでも口答えしちゃうと、十倍の嫌味を倍返しされるというか、とにかく後が怖いんだよ!」
「もう!そんな生ぬるい覚悟じゃだめだめ!たまにはこうガツンと言ってやらなきゃアベルお兄ちゃんの気持ちは伝わらないよ?」
「あのカイン兄さんにガツンと......?あはは、アズラはなかなか無茶なことを言ってくれるね...」
「カインお兄ちゃんとまた前みたいに仲良しになりたいでしょ!?傷つくのが怖くてケンカを避けたら二人ともいつまで経っても成長しないし、本当の仲良しになれないと思うなぁ!」
そういうものなのだろうか。
今からでも間に合うだろうか。
どのような形であっても、どれだけの時間を掛けても、相手と相手が面と向かう限り、わかり合える事もあるのだ。
関わりがないことの方がなんの可能性も生まれない──つまり、アズラはそう伝えたいのだろう。
もはや兄弟関係の修繕すらも絶望的だと言うのに。まだ自分も兄も共に成長することが出来るだろうか。
幼い妹たちの言うように、焦らず、少しずつ、少しずつでいい。
少しずつ歩み合っていければ──。
「わかったよ。アズラ。ぼくにできること、まだあるのならやってみる。諦めるのはそれからでも遅くないもんね」
「そうそう!後悔のないようにね!」
そうすれば、アベルの胸の蟠りもいつかは晴れるだろう。
今は自分に背を向ける兄を思い、アベルはしばらく空を見つめた。
(綺麗だなぁ)
本当に、綺麗な夕焼けだ。
まるで落ち込む自分を慰めるような夕空にアベルはむむ、と唇を噛み締めると、勢いよく立ち上がった。
「よーっし!ブルータイム終わり!」
大丈夫、今度はちゃんと笑えている。
だって、今までだってそうだったから。
「ぼくまた頑張るよ!カイン兄さんに、ぼくたち家族全員の思いが届くまで!」
「アベルお兄ちゃんがんばって!自分の本当の気持ちをちゃんと伝えたら、もしかしたらカインお兄ちゃんもわかってくれる日が来るかもしれないよ?」
「いつか、かぁ、それっていつなんだろうね」
「それはアベルお兄ちゃんの努力次第じゃない?明日かもしれないし、数日後かもしれない。あるいはものすごく遠い未来のお話かもしれないし」
「う〜ん。なんか気が遠くなりそうな......」
「別に無理してカインお兄ちゃんなんか構う必要もないんじゃない?アズラとしてはこのまま二人が今の関係のままなのは困らないし」
「うぅ......アズラは意地悪だなぁ」
形の良い、髪と同じ色の眉を寄せ、困った顔をする様は不満げとというよりアベルの情けなさを見せつけられている気がする。
蕾がふわっと開くような笑顔も好きだが、アズラは殊の外、このアベルの困り顔が好きだった。
自分でも意地が悪いと思うのだが、好きなものは好きで仕方がないとそう思う訳だ。
アズラが内心そう思っているのを知る由もなく、アベルは顎に手を当て、
「でも、カイン兄さんと話すのにも、やっぱりなにか機会がないとね。昨日の夜の一件あってからじゃ、今までみたいに無闇矢鱈に気安く話し掛ける訳にもいかないし」
それだとカインの導火線を短くするだけで逆効果だ。
「ふーん?早速今まで反省を生かして、肥料のあげるタイミングを見てるのね」
「さすがのぼくもいい加減に学習するよ、ははは......」
明日。あるいは遠いいつの日か。それで、何かが変わる。
良い方向でも悪い方向でも、今のアベルにはきっかけが欲しかった。
カインを理解するきっかけ。仲直りするきっかけ。それがあれば、自分たちはきっと────。
とにかく今のアベルにできることは、ドカンと開花させる機会を虎視眈々(こしたんたん)と待つだけ。それがとても歯痒かった。
「もし、もしもさ......カイン兄さんの花が咲いたら、ようやく家族みんなでまたあの頃みたいに仲良く暮らせるね」
「......それがアベルお兄ちゃんの夢なんだね」
ただ、みんなといたかったのだ。
一緒の場所に立っていたかった。
アベルの願いはただその一つだ。
「そうだね。今度はアズラもいるから、きっと今よりももっと楽しいよ!」
「......うん!アズラも応援してる!きっとカインお兄ちゃんと仲直りできる日が来るよ!」
「あっはは!ありがとう!アズラ」
前途多難でしかない自分の願いが否定されなかったからだろうか、アベルの顔がほんのり赤くなる。
嬉しい、と顔に書いた彼に心にもないことを言ったアズラは胸がきゅうっと締め付けられるような気持ちになった。
その顔が愛おしいのと、その顔を向けるのが自分ではないことに対する激しい嫉妬が、未だに幼い少女の胸の中に渦巻いている。
そんな複雑な負の感情を抑えるための沈黙を一拍挟み。
(本当の気持ちを伝える......か、よく言うよ)
自分だって伝えていないくせに、とアズラは胸の内で自嘲的に笑った。
アズラは自分の中のモヤモヤした気持ちに引っ掛かりを覚えたが、
「......アズラ」
「なに......ぇ、え!?アベル、お兄ちゃん!?」
そんなものはアベルが唐突に彼女の頭を両手でやんわりと挟み、ぐいと覗き込むように距離を縮めてきたことにより吹っ飛んだ。
心の準備も無しに近距離で見ることになった端正な顔に、思わず息が止まる。
「動かないで?」
そう言ってアベルの指がアズラの落ちた前髪をとらえて、耳に触れる。
彼女の開けた視界に入るのは、穏やかで暖かい黄金の目。
「お兄ちゃんっ!ち......、近い!」
近すぎる視線が恥ずかしくて爆発してしまいそうだった。
「こーら。大人しくしてて?すぐ終わるから」
だが、その金色の瞳があまりにも真剣にアズラの瞳を覗き込んでくるものだから、騒ぐにも騒げず、どころか見惚れてしまう始末だ。
綺麗だ、と小さな恋心の前では、兄といえ異性に対する照れがますます強まる。
アベルは少しも視線を乱さず何やらアズラの髪に何かつけているようだ。不意にその真剣な目が和らぎ、柔らかさを取り戻した。
「うん。これでいいかな」
そういってアベルはあっさりと離れた。
アズラはきょとんとした顔で、頭に斜めにかかっているものに手をやる。
「アベルお兄ちゃん、これ......」
アベルが先ほどキレイに編んだあの花の冠だった。
「話を聞いてくれたのと、色々アドバイスしてくれたお礼だよ。うん、綺麗だ」
優しく微笑むアベルに、アズラは頬を染めながら俯いた。
「......わたし、きれい?」
「うんうん。とってもよく似合ってるよ。アズラ」
頭に飾られた綺麗な花の冠にアズラはパッと花咲くような笑みを浮かべた。
「嬉しい〜!アベルお兄ちゃんありがとう!」
「おっと」
アズラの首ったけに抱き着くように全身で喜びを示し、無邪気に笑う妹にアベルはほっと肩の力を抜いた。
こちらの好意を無碍にするような子ではないが、やはり喜んでもらうのは嬉しいものだった。
ほわり、と笑う。
「どういたしまして」
アベルは優しくアズラの頭を撫でた。
髪を飾った花の冠が揺れて、アズラがくすぐったそうに小さくはにかむ。
アベルがアズラに向ける笑顔。
アズラだけに見せる笑顔。
正しくそれは花が綻ぶと言うに相応しいものだ。さっきまでの少しの苛々が晴れていくのをアズラは感じていた。
アベルの一言一行に一喜一憂するなんて我ながら現金なやつだと思うが、この際惚れた方が負けなのだとアズラは開き直ることにした。
「んふふっ......」
「? どうかしたの?」
「ううん!な〜んでもないっ♪」
アベルはやけに機嫌の良さそうなアズラの様子をポカンと見つめると、彼女はさらに語尾を弾ませた。
「ねえ、アベルお兄ちゃん」
「なんだい?」
「楽しいねっ♪」
突然の言葉にアベルは首を傾げるが、なんとなくアズラらしいなとも思う。
日常のふとした何気ないことにも喜びと幸せを見つけることが上手い少女を優しく見守っていると、
「アズラね、アベルお兄ちゃんが好き」
出し抜けに妹の口から飛び出た告白にアベルは一瞬面を喰らったが、すぐにそれを親愛の証だと受け取って、顔を緩ませ応えた。
「うん。ぼくもアズラが大好きだよ」
自分とは正反対の波打つ髪を撫でながら、アベルは笑った。
(うん。これは違うわね)
アズラは即座にそれを悟った。アズラの「好き」とアベルの「好き」はきっと意味が違うのだと。
(でも、今はこれでいいの)
どこか臆病になっている自分を恨みながら、 アズラは一等綺麗な花を見つけてそれを摘んだ。
何度もアベルに教えてもらった手順を思い出しながら、丁寧に編みこんでいく。今度はもっと綺麗な花冠を作ろう。
まだまだ粗さは目立つが、たくさん練習して、アベルに似合うような、アベルの為を思って作った、世界でたった一つ彼の為だけの花の王冠を。
(それで、)
無事に綺麗な花冠できた頃には──、
この幼き恋心を大好きな人に伝えよう。
 




