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【完結】序芝居  作者: のぼぼん(º∀º)
【転】〜カインとアベル〜
63/160

X話『いつかの水の記憶』★


 ──どうして、こんなことに。



 冷たい水は飛沫を上げてそんな自分の疑問ごと身体を呑み込むと、そのまま静かに流れを戻した。


 目の前の影が身を乗り出してこちらに手を差し伸べる頃には、自分の体も見えなくなっていた。



 激しい水音。

 洪水のような濁流(だくりゅう)の音が耳元で聞こえる。


 上から下へ、重力に従って激しい飛沫を上げる瀑布(ばくふ)のようだ。


 耳元で、あるいは頭蓋(ずがい)の内側で響くとめどない轟音(ごうおん)に脳を揺さぶられながら、意識は覚醒へと導かれていく。





(つめたい、)



          (くるしい)




 ごぼっ、と空気の泡が漏れて、口内に水が流れ込んでくる。




(いき、できない)




 身体を丸めて両手で口を塞いでも、身体はどんどん水の中に沈んでいく。


 



(......だれか、たす、)




 酸素が足りない。




(“────”)




 死んでしまうのか。



 こんなところで、水死体になってしまうのか。それは、




       ──嫌だ。





 そう思った瞬間、




『──忘れよ』




 忘れる?





『すべて、忘れてしまえば良い』





 ああ、そうだ。


 きっと、これは、わるいゆめだ。



 目の前の冷たい水の世界が黒いモヤのようなものに包まれて、視界がブラックアウトする。




 ──水の音も匂いもすべて消え失せた。




挿絵(By みてみん)


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