解決策を模索する
【解決策を模索する】
そんな教会の日常を目の当たりにし、俺は驚いて父ちゃんに報告する。
「ジョエル、お前の報告を疑うわけじゃないが、ちと酷すぎないか?」
「父ちゃん、俺だって嘘だろって思う場面に何度も出くわしてるよ。父ちゃんも教会領に行ってくればいい。びっくりするぞ」
「うーむ、税は73なんだろ?」
「ああ。収穫の7割がもっていかれる」
「払えないと、とんでもない目に合わされるんだな?」
「ヤクザ顔負けだぞ」
「解せんな。まるでタコが自分の足を食べてるようなもんじゃないか。このままだと、教会領は自滅するぞ」
「その通りだよ。教会は明日のことなどこれっぽっちも考えちゃいない。目先の欲に取り憑かれているように見える」
「ちゃんとした教会はないのか?」
「末端の教会だと、真面目なところも多いぞ」
「ということは、教会上層部ほど堕落してるってことか」
「だと思うよ」
「ふうむ。ジョエル、教会の身分制を知っているか?」
父ちゃんはおもむろに語り始めた。
教会には3つの階層がある。
まずは、教会系の聖伝導学校出身者だ。
しっかりと修行をして祈りを捧げる人たちが多いと言われている。
教会の本質を支える人たちなのだが、大抵は出世できない。
生真面目すぎるのと、後ろ盾がないからだ。
では、教会で出世する人とは。
神官が王族・貴族の関係者の場合だ。
王族や貴族たちは相続問題とかで
自分の子弟やら或いは引退して教会に入るケースが多い。
教会側も無料で引き受けたりはしない。
多額の寄進とともに彼らを引き取る。
表の世界でそれなりの権勢のあるものが教会に入る。
やっぱり、教会でもそれなりの力を振る舞うことになる。
つまり、教会は王族・貴族のサブシステム、裏の世界となる。
教会内の出世も表の世界によることが大きい。
彼らの表の権威や寄進の量によって教会内のポジションが決まる。
彼らはいわゆる神官らしい厳格な生活とは無縁だ。
そもそも、しっかりとした神官教育がなされていない。
現世時代の緩い生活をそのまま教会に持ち込んでくる。
当然、真面目な神官からは嫌われているが、
「尊い」神官たちは歯牙にもかけない。
3番めに、ほぼ出世の立たれた神官もいる。
教会は身寄りのない子供を引き受けている。
彼らも神官になるのだが、
実際は彼らは教会の下働き、体の良い奴隷である。
このように教会内部は3重構造によって成り立っている。
「すると、教会のガンは俗世まみれの奴らってことか」
「そうなるな。父ちゃん、物が食えないとか貧乏とかの話じゃすまないな」
「うむ。下手に権力を持ってるだけに質が悪い」
「どうすんだ、これ」
「どうすんだ、って言われても、個人でどうなるって話じゃないぞ」
「かといって、手をこまねいていてもなあ」
「ジョエル、おまえの力は天賦のものがある。通常の個人の限界を遥かに超えている。だからと言って、一人ではすることに限界がある。とりあえず、教会の話は横においておこう。やばすぎるからな」
「何から始めればいいかな?」
「衣食住とかいうが、まずは食事だろう」
「バジルさんにも応援を頼まなくちゃね」
「ああ。ただ、バジルの農園は質を追求している。今求められているのは量だ」
「確かに。すると、アンリさんにも応援を頼まなくちゃ」
「それとな、仕事を与える必要がある」
「無料で配るわけにはいかないってか」
「そうだ。無料で配ろうもんなら、大量の乞食が発生するぞ。働けるのに口を開いて餌が放り込まれるのを待っているだけの奴なぞ、配慮する必要はない」
「働き口か。それこそ、俺らではお手上げだな。ギルマスジャックとかロレーヌの両親に相談してみようか」
ロレーヌの両親はラ・シエル市議会の高位層である。
「そうだな。農産物の増産は道筋をつけたあとは市議会に運営してもらうほうがいいかもしれない」
「そうだね。やっぱり手が必要だろうし」




