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教会と高利貸しと教会の日常

【教会と高利貸し】


 教会の強さはどこからくるのか。

 もちろん、まず信仰。

 この世界では人々の営みと信仰は切っても切り離せない。


 あれだけ文明の進んだ前世でも宗教問題は主要な問題の一つであった。

 中世的な文明のこの世界では宗教の力はずっと強い。

 領民の献身的な信仰と寄進が境界の土台を支えている。


「神や仏の名を出せば、人は怖れて信じてしまうからな。それに知識層の大半が宗教関係者なのもある。ただ一方的に宗教が悪いとも言い切れない。王族や貴族といった高位層の政争の歴史の結果でもあるからな」


 教会には王族や貴族の関係者が多い、ということも

 教会の力の源泉である。

 例えば、兄弟二人いる。

 後継者争いの末、破れたものを教会に送り込む。

 あるいは、幼い頃より教会に送り込むことによって、

 後継者争いを事前に防ぐ。

 政争や実際の武力衝突の結果、破れたものを教会へ、

 ということも度々ある。

 その結果、表の権威や寄進が教会の奥深くまで流れ込んでいる。


 教会が力を持つのは権威ゆえのみではない。

 彼らは王国一の企業体であるのだ。


 まず、広大な領地と領地経営からもたらされる潤沢な資金がある。

 農産物、特に小麦とブドウ、パンやブドウ酒が特産品だ。

 彼らは魔導具などの工業製品を作り、流通に深く関わっている。

 莫大な寄進と合わせ、教会は王国一の資産家である。


 そのありあまる資産をどうするか。

 教会は高利貸しをしているのだ。

 教会は寄進が多い、と申し上げたが、

 逆に教会側から為政者に流れ込む資金も莫大なのだ。


 高利貸しの対象は庶民だけではなく、本命は王族や貴族である。

 両者は額が違いすぎる。

 彼らが教会に強く言えない理由である。


「商業といい流通といい金融といい、国の根幹の部分を支配してるのは宗教ということなのか」


「そうだな。それを支えるのが信仰の力だ」


 前世の現代日本でも神頼み、ということはよくある。

 子供が病気になった。

 だから神に願掛けする。

 それほど珍しい話ではない。

 

 科学技術の進んだ現代社会でもそうなのだから、

 この世界での宗教の力は大きい。

 何しろ、病気になってまず頼るのが教会だ。

 魔法とか薬とかもあるが、まずは祈りなのだ。

 精神的なものが占める割合は決して無視できるものではない。



【ある教会の日常】


「おい、酒が切れたぞ」


「はい、ただいま」


 ここはとある教会。

 神官が昼間から酒を飲んでグダっている。


「どうぞ」


「遅いぞ!」


 グラスを女にぶつける。


「いたた…」


「一人前に痛がるな。こっちにこい」


 女は街の娼婦だ。

 こんな塩梅だから、彼女たちはすぐに逃亡してしまう。


「おい、女!なに?また逃げた?売女のくせして、堪え性がなさすぎる。まあ、いい。街から他のをつれてこい!」


 教会の神官には昔から独善的な人が多いが、

 ここまで堕落した人はいなかった。

 他人にはともかく、自分には厳しい。

 それが教会の美徳とされていたのだ。


 ところが、ここ1~2年、堕落した神官が増えた。

 

「◯神官様、領民の訴えがきております」


「なんだ?税の引き下げの話か?そんなもの聞く必要はない」


「しかし…」


「つべこべ言うなら、そいつの家まで行って洗いざらいヒッペがしてこい」


「そうだぞ。税は払うもんだ。払わないのなら、教会領の領民ではない。天罰が下るぞ」


 この教会領の税は73。

 つまり、収穫とされている量の7割を教会に納めよ、

 というわけだ。

 通常、重税とされても6割。

 この教会はさらなる重税を領民に課している。


「それでもガタガタ抜かすなら、例のあれで消してしまえ」


 消してしまえ、とは文字通りの意味だ。

 業火の火魔法魔導具で骨も残らない。



「おい、おまえ。今月の取り立ては済んだのか?」


「はい。9割方は」


「は?まだ払わないやつがいるのか?」


「期日までに払わない場合は、いつものように淡々と執行する予定です」


「ぬかりはないだろうな」


「おまかせください。おそらく未払いになるでしょう。すでに、夜逃げに備えて見張っております。いずれにせよ拘束して、隣国に売っぱらう予定です」


「おお、ここんとこ人手不足とかで隣国の奴隷ギルドにせっつかれておる。きっちり型にはめろよ」


「どうか、お任せください」



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