超耐熱高炉
【超耐熱高炉】
結局、オリハルコンであるかどうか確定できなかった。
何しろ、伝説的な金属で判別方法が現状ではないのだ。
ただ、オリハルコン鉱の特徴的な輝きが伝わっていた。
エメラルドに輝くのだ。
しかも、ダイヤモンドでも傷をつけられない。
「特定する方法はあるかもしれん」
「おお」
「ここに、古代書がある。オリハルコンについて書かれてある」
「だがな、この古代書。誰も解読したものがいない」
そう言い足すのは、ガリエルさんについてきたモリエルさんだ。
「ジョエルがこの手の解読に詳しいのは知っている。やってもらえんか」
「おい、ジョエル。出番だぞ」
俺はその場でさっと解読した。
「アレクがアカデミー首席卒業だとか吹いていて俺たちも適当に乗っていたが、いや、驚いた。本当に古代書をあっさりと」
「ああ、信じられん。しかも、こんなにあっさりと」
「モリエル、信じられんのは俺も同じだ。だがな、ジョエルには実績がある。わけのわからん古代書を何冊も解読してきた」
「いや、信じてないわけじゃない。ただ、この本が見つかって、なんとかオリハルコンについて書かれてあることはわかったんだが、中身がちんぷんかんぷんだった。数百年もの間な」
「古代語でかかれてありますが、中身は暗号に近いですからね。単純に翻訳しただけではわかりません」
「おお、また一つ秘密が解き明かされたのか。暇なときで結構だから、講義してもらえると嬉しいのだが」
「喜んで」
この本によると、オリハルコン鉱石の判別方法・採取方法と、
オリハルコンの取り出し方が載っている。
オリハルコン鉱石にはオリハルコンだけが含まれている、
というわけにはいかない。
いろいろ不純物が混じっているのだ。
「この本によると、やはりこの鉱石はオリハルコンぽいんだが、最終的な判断にはオリハルコンを鉱石から取り出す必要があるな」
「どうやって?」
「高温で溶かしてくれってさ」
「高温?何度だ?」
「三千度」
「はあ?三千度?」
オリハルコン鉱石を溶かす。
そのための温度が3000度。
「規格外の温度だな」
「現状で最高の高炉がだいたい推定1500度ぐらいだぞ」
「どうしますか」
「普通の耐熱レンガとかじゃ無理だ。そもそも、その温度をどうやって測定するんだ?」
「測定器の作り方も本に載ってますね。魔素濃度測定器の応用で推定温度を算出できるようです」
「そこからか。じゃあ、測定器は後で検討するとして、いっそのこと耐熱結界魔法を編み出してみるか?」
「3000度の高温火魔法も考える必要があるぞ」
「いずれにしても、3000度となると消費魔石がとんでもないことになりそうだな」
「魔石なら、ある程度融通できます。僕たち家族は25階ぐらいまで潜っているんで、大きな魔石、結構持っているんですよ」
建前的には、ダンジョンから魔石を持ち出した場合、
小さい魔石以外は、
入り口の管理所で魔石を売り払うことになっている。
入り口には魔石発見機が鎮座しており、魔石の無断持ち出しは難しい。
つまり、俺たちには無断で持ち出せる技があるということだが。
俺たちがマジックバッグを持っていることは彼らも知っている。
というか、俺はガリエルさんたちにもマジックバッグスキルを教えてある。
だが、その程度では数多の魔石を準備するのは難しい。
俺は魔石を生成するスキルを持ち、
王国の外にダンジョンを発見しているから、常識外の魔石を所有できるのだ。
こんなこと、俺たち家族以外にはめったに公表できない。
しかし、この際だからダンジョンのことを教えることにした。
「ガリエルさん、モリエルさん、魔法契約書での縛りがあるし、ガリエルさんとは懇意にさせてもらってますから打ち明けますが、俺たちは王国の外にダンジョンを発見したんですよ」
「おお、なんと!」
「すると、このオリハルコン鉱石も?」
「ええ、そうです。遠いですから気軽に行けませんが」
転移魔法陣のことはガリエルさんのみ知っている。
魔法契約書があるとはいえ、
そうポンポンと重要秘密を漏らすのはまずい。
契約を解除する魔法もあるからな。
秘密は絶対とは言えない。
「じゃあ、遠慮なく魔石を使ってみるか」
俺たちは耐熱結界魔法と高温火魔法の研究に取り掛かった。
パラメーターを変えていくだけなので、難しいことはない。
単純に魔石消費量が甚だしいだけだ。
それも、膨大な魔石ストックと省エネ技術で常識的な線におさまりそうだ。
◇
「どうかな。理論値の耐熱温度は3000度以上なんだが」
俺たちは研究のすえ、
超耐熱の試作高炉・結界魔法・超高温火魔法を開発した。
「一応、多重結界を張っておきましょうか」
古代書には、3000度に耐える物質も記載されてある。
グラファイトとか。
炭化タンタルという物質だと4000度近い温度が融点だという。
そんな物質を発見する方法も作り出す方法もわからない。
だから、耐熱結界魔法による力技で耐えるしかない。
「じゃあ、行きますよ」
高炉にオリハルコン鉱石を入れ、火魔法魔導具を稼働した。
「おお!」
取り出してみると、見事にオリハルコン鉱石が融解し、
他の物質と分離していた。
「それにしても、こうなると加工が一苦労どころじゃないな」
「従来通りの手作業ってわけにはいかんな」
「これも古代書に方法が載ってるようです」
「ほお。至れり尽くせりじゃないか」
「一種の変形魔法魔導具といったところでしょうか」
分子・原子レベルで形を整えていくようだ。
オリハルコンに融解点近い温度まで熱して、
変形魔法で形を整えていく。
これも消費魔石が半端ない。
それと、数回で高炉がボロボロになり作り変える必要がある。
◇
「うむ。一応、それらしい剣ができたぞ」
「どうかな?」
俺は少し振ってみた。
「すごいですね。なんだか空気を切り裂くような勢いがありますね」
「ああ、見てるだけでも震えがくる。そばに寄るだけで真っ二つにされそうなオーラがあるぞ」
「だな。空気が震えるような鋭気だ」
「実際、切ってみましょう」
俺は鋼製の剣を固定して、オリハルコン剣で切ってみた。
「スパッ」
「おお!」
見事に両断された。
切り口も非常に鋭利で、誤って触ると手が切れてしまう。
「ダイヤモンドも切れるかもしれないですね。ただ、振った感想ですが、これは誰でも使えるわけじゃなさそうです。それなりの剣スキルや身体能力が必要とされそうですね」
俺には高度な剣スキルはないが剣の鍛錬は小さい頃からしている。
それに、身体能力、特に敏捷性が高いことが、
この剣を扱ううえでポイントとなっているようだ。
「それにしても、超機密の塊だな」
「全くだ」
「どうする?」
「売り物にできませんよね。まあ、売るとしても天文学的な数字になりますが」
「例によって、ダンジョンの宝物に入っていたとかか」
「まあ、その線が無難か」
「なんだか俺たちってワンパターンだな」
ワンパターンか。
都合よく古代書が出てくるところもそうだ。
出来すぎている。
これは神様のアシストがあるのだろう。
俺にしか解読できなさそうだしね。
ということで、ガリエルさんには次の武具を誂えてももらった。
大剣1振り(母ちゃん用)、
盾1つ(父ちゃん用)、
剣1振り(マノン用)、
短剣3振り(俺、ガリエル、モリエル用)
を誂え、各自が持つことにした。
それと鞘も。




