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教会

【教会】


「お父さん、王国で支配者って誰なの?」


「マノン、どうした。急に難しい問題を振ってきて」


「学園でさ、宿題になったんだよね」


「うーん、支配者は王族、と言いたいんだけど、ちょっと違うんだよね」


「違うの?」


「王族はさ、大きな貴族って感じで、王国の様々な支配者層をまとめる役割をする人なんだよ」


「様々な支配者層?」


「王族、貴族、市議会、大規模地主、教会とかだね。地方ごとに力のある人がたくさんいるわけ。その人達の利害関係を調整するのが王族」


「なんで調整役をするわけ?」


「誰でもさ、敵からの侵略に応戦したいだろ?農民たちはそのためにより強い人に寄りかかっていくわけ。土地を寄進するから、私を守ってくださいってね。そうやって、地方の有力者が作られていく」


「うん、わかる」


「それが大きくなったのが王国だな。地域の有力者が集まって外国に対抗するわけ。でも、王族には絶対的な強さがないから、従うものを力で押さえつけることができない。だから、ギクシャクしないように王族が旗振り役をしているってわけよ」


「教会も?」


「教会はさ、ちょっと独特なんだよ。というか、王国で最も強いのは教会」


「え、そうなんだ。王族よりも?」


「王族よりも」



 この世界で大規模な土地を所有或いは管理知行する存在(領主)として

 王族、貴族、市議会、大規模地主、教会の5つがある。


 王国での教会は『ボヌール教会』という。

 ボヌールは幸せで楽しいというような意味だ。

 幸福教会、祝福教会とも呼称される。

 このボヌール教会が領主の一形態なのだが、

 実は、王国においてはもっとも規模の大きい領主だ。


 この時代の人々は神を信じている。

 教会への信頼が王族や貴族などよりも強い。

 信仰心故に、教会にどんどん寄進をする。

 金や土地をだ。

 だから、教会は広大な土地を持っている。


 強大な力を持つがゆえに、教会の土地では独自の運営がなされる。

 例えば、教会には不輸不入の権がある。

 不輸とは、税を教会独自で管理すること。

 不入とは、外部からの権力行使を拒否できること。

 つまり、一つの独自国家、と呼んでも無理のない運営をしている。



 教会を支えるのは信者の信仰心だけじゃない。

 収入が莫大だ。


 教会の収入には大きな柱として領地からの税があるのはもちろんだが、

 他に教会が事業をしている。

 パン製造とかワイン製造とかが代表的だ。


 パンやワインにはギルドがあるが、裏で支えるのが教会だ。

 というよりも、教会が各ギルドを牛耳っていることが多い。

 元来は製造業者を保護するためのものであったのが、

 ギルドが既得権益を独り占めして、圧力団体になっている。

 現状では、経済の発展には邪魔な存在なのだ。



 他にも、高利貸しがある。

 そもそも、王国での教会は、

 前世日本が「教会」と聞いて思い描くような平和的な集団ではない。

 徐々に横暴化していったのだ。


 自分の土地を守ると称して、武装した神官兵を抱える。

 教会は武装集団であり軍閥でもある。


 酷いのになると教会は様々な場面で因縁をつけて論破し、

 大きな騒ぎを巻き起こす。

 相手は、個人から領主・王室レベルにまで及ぶ。

 武力行使をちらつかせ恫喝・恐喝し、最終的に目的を果たすという、

 乱暴・横暴なことを繰り返しているのだ。


 そういう教会が金貸しを行う。

 元来、教会の貸金事業は弱者救済のためのものであった。

 ところが、教会の横暴化とともに弱者を苦しめるものに変貌した。

 何しろ、年率100%。

 1年経つと、借金が2倍になる。


 借金の取り立てもえぐい。

 武装神官がヤクザ顔負けの取り立てをする。


 金を貸すのは、神の温情。

 その金を返さないのは、神の温情に背く。

 そのようなことをいいたてて、

 着ぐるみをはぐような取り立てを行う。

 借り手を人身売買組織に売っぱらうことも日常的に行っている。



 金貸しは貧乏人に対してだけではない。

 太客は、王族や貴族だ。

 彼らは収入も多いが、支出も莫大だ。


 遊びに使っているわけではない。

 戦費に金がかかるのだ。

 一人一ヶ月に10万sの費用がかかるとする。

 千人の軍隊だと、1億sかかる。

 1万人の軍隊なら、10億sだ。


 王室の借金も同じだ。


 前世の話になるが、フランス革命でおなじみのルイ16世。

 当時のフランス国王は、戦費のために莫大な借金をしており、

 国家収入の半分以上は借金の利子に消えたという。

 何度かデフォルトを起こして終いには借金もできなかったらしい。



 王室の借金は、前世日本国のいわゆる『借金』とは質が違う。

 日本国の場合の借金は単なるバランスシート上の問題であり、

 一般的な借金とは質が違う。

 ところが、王家の借金は個人が借入するのと同じだ。

 本当の借金なのだ。


 そもそも、信用度が違う。

 日本国には絶大なる信用がある。

 ところが、王室程度だとそこまでの信用がない。


 通貨発行権がないわけではない。

 しかし、それは王室の信用でなされるわけではなく、

 金貨・銀貨・銅貨などの貴金属の正味の価値に信用がおかれるのだ。


 そして、この世界の最大の信用とは、魔石である。

 魔石を担保にして借金が行われ、借金返済は通常魔石で行われる。


 その魔石を持っていない、ということになれば、

 王室の破産ということになる。

 貴金属は保有量が少なく、借金に見合った保有量がないのが普通だ。


 王室が教会に頭があがらない理由の一つである。

 教会の軍事力にくわえて、王室は教会への多大な借金を抱えている。


 そして、これは王室に限らず、多くの諸侯、貴族、個人が

 似たような状態に陥っていたのである。



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