固形石鹸
【固形石鹸】
「母ちゃん、この白い粉末って何?」
「最近、お掃除溶液として人気のある粉末なのよ」
「ひょっとして、胃薬?」
「ああ、そうよ。食べ過ぎのときに飲む薬」
これは重曹だ。
王国では胃薬として一般的な薬のようだ。
「ちょっとアンリさんのところへ行ってくる」
俺は急いで薬師のアンリ薬局へ向かった。
「アンリさん、重曹ある?胃薬の」
「重曹?ひょっとすると食べ過ぎの薬か?」
「そうそう」
「ビーカって名の薬ならあるぞ。最近、掃除道具で人気の奴」
「あー、それそれ。アンリさん、この薬でさ、固形石鹸作れるぞ」
「固形?」
「ああ。今までみたいにプヨプヨじゃない石鹸」
王国には液体石鹸は昔から存在する。
しかし、固形石鹸はない。
俺は製造方法を知っている。
固形石鹸には、重曹が必要だ。
というか、苛性ソーダ、つまり水酸化ナトリウムがいる。
苛性ソーダをこの世界で作るには、重曹が必要だ。
海藻を燃やした灰汁を利用するという方法もあるらしいが、
海藻は大量に必要で、海から遠いこの場所では実用性に欠ける。
「ビーカって高い?」
「いや、鉱石としてわりとありふれたものだから、高くないぞ」
前世では天然の重曹鉱石は簡単には見つからなかった。
こちらでは、重曹は簡単に確保できそうだ。
固形石鹸は次のような手順を踏む。
①貝殻(または石灰岩)を風魔法で粉にする
②①を焼く。
③②を水に溶かす。
④ビーカ(重曹)を風魔法で粉にする。
⑤④を水に溶かす。
⑥③水溶液と⑤水溶液を混ぜる(危険)
⑦⑥に油を混ぜ、加熱する。
⑧⑦に塩を混ぜる。
⑦で加熱せずに長時間反応させて石鹸を作る方法もある。
こちらは多少洗浄力が落ちるが、保湿効果がある。
これは前世のテレビで放送していたのだ。
もし、この世界が原始時代に戻ったら石鹸はどうするか、
みたいな内容。
番組に習って俺も実際に作ってみたことがある。
◇
「凄いな、本当に石鹸が固まってるぞ」
「液体石鹸同様、精油を入れれば匂いも良くなるよ」
「精油入り?これは携帯が便利だから人気が出そうだな」
「液体石鹸と違って、容器がいらない分、安くできるしね」
「液体石鹸同様、魔石回復薬も少量配合して」
「冒険者ギルドにもってくか?」
「ああ」
◇
ギルマスジャックのところに持っていった。
えらく高く評価してくれて、高級石鹸として扱うという。
何しろ、固形の石鹸など他にない。
しかも、この世界では精油は非常に高価だ。
こっそりと魔石回復薬も混ぜてるしね。
結局、1つ1万sで売るという。
精油入は1つ1万5千s。
卸値は1つ3千s。精油入が5千s。




