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グラノーラとフライドポテト

【グラノーラとフライドポテト】


「ジョエル、グラノーラとフライドポテトって学園で出さないの?」


「フライドポテトはね、植物油の生産進捗次第だね」


「油って高いもんね」


「そうだよ。だから、油の値段を引き下げることも重要だし、そもそも生産量が圧倒的に足りていない」


「グラノーラは?」


「これこそ、砂糖が全く不足している」


「高いしね」


「砂糖も値段を下げたいんだけど」


「最近、ジョエルとアレクおじさん、お菓子に凝ってるし」


「そうそう。砂糖が安ければもっと気軽に作れるし、みんなに紹介もできる」


「なにか対策してる?」


「ああ、砂糖大根を安く作れないかと」


「砂糖大根?砂糖の大根?」


「大根の仲間じゃないらしいけどね。元々はほんのり甘い、という程度。これを強烈に甘い、という程度に引き上げたい」


「できる?」


「魔石肥料を使って、バジルさんと実験中。いけそうな感触はある」



 砂糖大根は冬は比較的温暖、

 夏は冷涼な温度がいいという。

 寒すぎても暑すぎても良くない。


 王国では北方の海に面した地域がこの条件にあてはまる。

 そこでは以前から細々ながら砂糖大根が栽培されていた。

 その農家クローリーさんをバジルさんに紹介してもらう。


「クローリーさん、このあたりは比較的暖かいんですね」


「まあ、内陸のラ・シエルよりはね。そのかわり夏は上昇しても25度ぐらいだな」


 季節は2月である。


「で、この肥料を試してほしいと」


「クローリー、色々な作物に施肥してみた。芽が出たあとだったが、良好な結果を出したぞ。ちょっとこのじゃがいもをかじってみろよ」


「おお……ほお、随分と甘いんだな。なんというか、栗みたいだ」


「だろ。生でそれだ。茹でたりするともっとはっきりわかる」


「ふむ」


「それからな。収量が増える。これはまだ野菜でしか確認できていないが、種からこの肥料で育てた農産物はすべて従来の数倍の収穫量になった」


「ほお」


「春小麦な。最初の追肥には間に合わなかったが、3回のうち2回の追肥を行った」


「で?」


「俺の農場は今までもしっかりと肥料を与えて農作物を育てている。それでも例年なら1haあたり2~3トンの収穫量だ。普通の農民みたいにあんまり施肥しないと1トンかせいぜい1.5トンぐらいだ。しかし、この新しい肥料を与えると、なんと7トン近くの収穫があった」


「それはすごいな」


「だろ?冬小麦は最初からこの肥料で育てている。1haあたり10トン越えるんじゃないかって期待してる。もう、育ち方が尋常じゃないんだ」


「そんなこと言われると早く試してみたいな」


「小麦、じゃがいも、なんでもいいんだ。ただ、砂糖大根に一番期待している」


「ああ。うまく行けば金になるからな」


「現状では糖度が低くて今ひとつ商品になりにくいだろうが、どこまで糖度があがるか。俺もワクワクしてるんだ」


「病気に対する抵抗力は?」


「おお、言い忘れたが、見事なぐらい病気にかからない。まあ、虫はよってくるがな。それはこの除虫液を使ってみてくれ。それとな、この飼料も凄いからな。このゆで卵食ってみな」


「……なんだ、えらく濃厚な味なんだな。しかも、鶏卵特有の臭みが全然ないぞ」


「今日はもってきてないが、肉質もすごく向上する。水牛とかもだ」


「おお。このあたりは畜産業が盛んだから期待できるな」


 ◇


 クローリーさんは主に小麦、じゃがいもと畜産を手掛けている。

 そして、砂糖大根は細々と栽培していた。


 今まで、砂糖大根から取れる砂糖は砂糖大根1kgあたり

 20~30gだった。


 それが、魔石肥料を使った所、一気に約100gの砂糖が採れたのだ。

 年々地道に品種改良を行い、最終的には300gを越えることになる。

 味はサトウキビ砂糖よりもさっぱりとした上品な味である。

 

 これだけ甘いのであれば生で食べられると思いきや、

 灰汁が強く土臭いので、生はもとより煮ても美味しくない。

 砂糖をとった残りは飼料にまわすことになる。


 これで手応えを感じたクローリーさん。

 来年度から大規模栽培をする決心をした。



 ところで、施肥の話が出た。

 バジルさんたちのように、しっかりと施肥している農家は、

 この世界では珍しい。


 多くの農家は年1回、数年に1回、という場合も珍しくない。

 肥料が高いのと、絶対量が不足している。

 人口は増加しているのに農産物の不足が問題となっているが、

 その解決の一つが肥料の増産と価格の引き下げなのだ。 


 ◇


 さて、グラノーラやポテトフライは味以外にも利点がある。

 オーツ麦、じゃがいも、2つとも対応するギルドがない。

 もともと貧乏人が食べるものとされ、上級国民には不評だ。

 金にならないから、ギルドを作る利がない。


 厳密にいえば、農業ギルドが対応する。

 しかし、かなり規制が緩いのだ。


 無論、バジルさんもクローリーさんも独立農家だ。

 農業ギルドに加盟しているわけではない。

 しかし、生産・販売するときは一応農業ギルドに申告している。

 近所挨拶みたいなものだが、農業は案外近隣トラブルが多い。

 農業ギルドはトラブル解決で間に入ってくれる。


 これがパンとなるとギルドは非常に厳しい。

 小麦栽培、製粉、パン焼き、パン販売それぞれに対応するギルドがある。

 バックに権力者、王族、領主、教会がついているので、

 新規は簡単には手が出せない。


 いくらギルドに加盟していないから、といっても、

 彼らには通用しない。

 大切な既得権益だからだ。

 彼らは各種嫌がらせ・暴力を使うのを厭わない。

 

 その点、グラノーラやポテトフライといった製品は

 バジルさんたちには非常に扱いやすいわけだ。


 砂糖大根による砂糖もそうだ。

 砂糖ギルドはある。

 王国南方でサトウキビを栽培しているからだ。


 しかし、砂糖大根ギルドはない。

 砂糖大根による砂糖はほとんど市場に出回っていない。

 クリスさんが砂糖大根による砂糖を市場に出せば、

 ほぼ彼が先駆者になり、かつ独占状態になる。



 もっとも、これもサトウキビ砂糖ギルドの反発を呼ぶだろう。

 我々としてもクローリーさんとしても

 一人だけに市場を独占させるつもりはない。


 単純に一人勝ちは良くないと思うし、同時に非常に危険でもあるからだ。

 早急に仲間を作って互助会組織を作る必要がある。

 要するに砂糖大根ギルドを立ち上げるわけだ。


 ギルドはいろいろと問題のある組織ではある。

 しかし、元来は自分たちを守るために設立されたのであり、

 現状ではそれが過剰になっているのが問題なのだ。


 攻撃をしてくるのは権力者だけではない。

 隣の農家でさえ、襲ってくるかもしれないのだ。

 儲かることに対する妬み。

 市場を独占される恐れ。

 或いは、生産に失敗し飢えた人たち。

 こういう人たちは平気で隣の畑の収穫を盗みにくる。



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