俺たちの敵
【俺たちの敵】
さて、ちょっと整理しよう。
俺たちはいくつかの敵から攻撃を受けた。
それなりにあしらってきたと思うが、
2年生になって、俺たちにちょっかいを出すのは誰だ?
「まずは、守旧派だよね」
ライリーが冷静に言う。
「でも、流石に私達にっていうか、ジョエルにはつっかかってこないでしょ」
俺の強さは学園中に広まっている。
少なくとも、俺を攻撃したやつはひどい目に合わせた。
ダンジョンの中だろうと外だろうと、
学生で俺につっかかってくる奴はいない。
「だけどな、奴らの脳筋のやり方、頭悪すぎないか」
「あれが守旧派の流儀みたいよ」
「ただ、今後はもう少し持って回ったやり方をしてくるんじゃないかしら」
あいつらのやり方は守旧派だけではない。
王国が全体的に脳筋スタイルで動いている。
貴族間にはヒエラルキーがあり、下位は上位に逆らえない。
命令の伝達は顔を隠して行われる。
ある日、どこかへ呼び出されると、そこは仮面を被った紳士たちが。
そして、厳かに命令がなされるのだ。
1年D組のモルガンが俺を襲った時のスタイルである。
命令者はだれだかわからない。
一応、命令伝達経路を分からなくするためらしい。
なんだかなー。
漫画じゃないか。
「まあ、守旧派はおいといて、次は」
「ジョエルを襲った奴らね」
「学内でジョエルを襲った連中のことね」
「あれが不思議なんだよね。ジョエルがあとを追ったら、自爆したんだろ?」
「で、テロもどき野郎たちが言うには、あの連中は教会の手先なんだと」
冒険者ギルドマスターのジャックに言わせると、
王国で狂信者とされる集団『神皇の子供たち』。
「それだけ聞いてると、噴飯ものなんだよね」
「そうよ。教会はこの世界の終焉を企んでいるだなんて」
「でもさ、やっぱり襲撃者の行動は常軌を逸していたよね」
「うん。襲撃に失敗し、俺に後を付けられてアジトを探り当てられた。それだけで自爆を選択するか?って話だよな」
「不気味な行動ゆえ、あのテロ組織もどきの言うことにも信憑性をおびてきそう」
「そもそも、そのテロ組織もどき。話を混乱させているよね」
「なんだよな。ロレーヌとアスタシアを襲ったのは二人を助けるためだなんて」
「だいたい、奴らは首都でテロ行為を行って指名手配されている犯罪者集団だ。全くの説得力がない」
「でも、彼らは教会にはめられた、と抗弁したよね」
「教会がすべての悪の元締めである、って必死に主張してたわ」
「彼らの話は奇想天外だが、本人たちは嘘をいっているように見えないんだよな」
「まあ、犯罪者には時々自分の嘘を信じるやつがいるというし。単なる思い込みかもしれない」
「でも、気になる話でもあるよね」
「ええ。何が正しいのかもっと情報がいるわ」
「父ちゃんたちがギルマスのジャックに調べてもらっている。話はそれからだな」
「なんにしてもだ。敵は個人じゃないのは確かだ」
「ああ。ちゃんとした組織なのかはともかく、集団で襲いかかってくる」
「『やられたらやり返せ』。これはこの国の不文律だ」
「そのためにも、自衛力強化。これは忘れちゃいかんな」
「ああ。ダンジョンレベルを上げると、ダンジョン外の身体能力にも影響が出ることは公然の秘密となっている。それと、俺が渡した護衛用の魔導具」
「私、あれのお陰で助かったわ」
「私も」
「ロレーヌもアスタシアも襲われている。ライリーだって気をつけなきゃいけない。いや、君たちの家族とか、それと学園への納入業者とか生産者」
「納入業者はやばそうだな。だって、髪関係の製品とかマヨネーズのおかげで大半の学生が反守旧派になったからな」
「まあ、ロック先生の活躍も重要だったけどな」
「ロック先生?」
「ああ、知らない人もいるのか。ロック先生な、ボーとしているように見えて、なかなかの切れ者なんだ。学長派、中間派の先生で、この機会に守旧派の追い落としを図ったんだ」
「へえ、初耳だわ」
「彼の真骨頂だからな。こっそり動くのって。で、守旧派先生方の袖の下を暴いたのがロック先生なんだよ」
「ああ、いきなり収賄事件が飛び出してタイミングいいな、とは思ってたんだけど」
「まあ、なんとか内々で事をすませたしね。我々には信ぴょう性の強い噂話として拡散されたんだけどね」
「ロック先生、睨まれてない?」
「そりゃ、睨まれてるさ。でもね、学長やロック先生は実はエルフでね」
「ええ、また衝撃的な事実。でも、エルフの特徴がないわよ」
「簡単な変身スキルがあるらしい。特徴的な耳を人族っぽくしたりする程度だけど」
「なるほど」
「エルフたちを狙ったりすると、恐ろしい反撃がまっていると恐れられているんだ。エルフ村から総動員で出てくるらしい」
「えー、怖い」
「彼らは普段は温厚で目立たないんだけどね。実力は非常に高い。特に身体能力は人族を越えている。種族特性として、諜報とかに長けているから、扇動とかプロパガンダも得意だ。だから、直接攻撃じゃなくて、そういう方面からも怖い存在なんだよ」
「はああ、知らなかった」
「なんにしてもだ。納入業者に新たに参入した方たちには、君たちと同じマジックバッグと護衛魔導具を渡してある。まあ、彼らは元々冒険者でB級とかC級とかだったし、そのおかげでダンジョン外でも身体能力が高い。彼ら自身が気をつけているだろうから、大丈夫だと思うが」
「はあ、今まで以上にダンジョンに通うことになりそうね」
「しばらくは放課後はダンジョン活動だね」
「おー」
「ただ、腕力だけでは限界がくるわね」
「相手は多数だからな。こっちは圧倒的に不利だ」
「相手が守旧派ということであれば、ラ・シエル街は防壁にはなっているわね」
「ラ・シエル街は自由派というか、冒険者の強い街だからな」
「あとさ、学園で俺たち、いろんな製品を広めたろ。あれで守旧派をやりこめている、というのは大きなヒントになりそうじゃないか?」
「化粧品とか食品とか、物の持つ圧倒的な魅力で相手をねじ伏せるというのは意識していいってことだな」
「そのためにも、俺は魔導具にも期待している」
「魔導具?」
「俺にとってはまだ野のものとも山のものともわからない魔導具だが、頭の中に実現可能そうな妄想が広がっているんだ」
「それはお手並み拝見」
「おまえらも勉強してもらうぞ」
「もちろん!眺めてるだけではいけないからね」




