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俺の話

【俺の話】


 さて、俺の話。

 俺は2年生に進級した。

 だが、進級前は深刻な悩みを抱えていた。


「この学園で学ぶ価値があるのか?」


 1年生のときは、補欠合格だったし、

 ただ単に、『上に這い上がる』というのが目標となった。


 しかし、1年後期あたりから徐々にはっきりしてきた。

 俺の居場所がない。


 座学は簡単すぎる。

 ダンジョンレベルは父ちゃんたちと遜色ないレベルになった。

 ダンジョン外の体力は王国一じゃないか。


「チートってそんなにいいもんじゃないな」


 極端な話をしてみよう。

 高校3年生が小学6年の授業を受ける。

 

 そのとき、あなたはどう思うだろうか。

 バカにして、傲慢になるだろうか。


 俺は単に興味をなくした。

 周りとの差異にがっかりし、周りとの距離感を感じた。


 これも奢りと呼ばれるのだろうか。



 俺は迷い始めていた。

 頭がいい。

 体力おばけ。

 そういうのはもういいから。

 そういうのは何かをなすための手段の一つだ。


 だいたい、俺一人が優秀になったところでたかが知れている。

 個人でできることが無力とは言わない。

 しかし、このままでは行き詰まる。


 俺には目標が必要だ。

 いっそのこと、学園をやめて放浪の旅にでも出るか。


 俺の1年末の精神状態はそんな感じだった。


 なにか俺たちに攻撃をしかけている組織らしきものが複数ある。

 しかし、それは学外でも対応できるだろう。

 むしろ、学園が足かせになっているかもしれない。



 そんな俺に光明を与えたのは、

 2年生の選択科目に新設される『魔導工学』の授業だった。


 正直、ダンジョン攻略には強い興味がない。

 家族や友達と一緒だから楽しいだけだ。


 迷宮学園は別名官僚養成学校である。

 役人になる人が非常に多い。

 だが、俺に役人は向いていないだろう。

 わがまますぎる。


 じゃあ、研究者か。

 おそらく、この方向が俺に向いている。

 前世でもプログラマー、

 一人で閉じこもる職業が性に合っている。


 しかし、どの学問を習熟させるか。

 そう考えていたときに発表されたのだ。



 魔導具作成。

 俺にないスキルだ。


 アカデミー魔導工学園とも技術協力を行うという。

 著名な先生も派遣されるらしい。

 もとより、この学園にも魔導工学の権威がいるという。


「(というか、最初からアカデミー魔導工学園を受験すればよかったんだ。今世の俺はなんにも考えずに迷宮学園を受験したんだな)」


 後悔、先に立たずか。

 しかし、遅くはない。

 漠然とだが、このスキルに俺は将来を感じたのだ。


 ◇


 2年生になり、俺は魔導工学の授業を選択した。

 週に2回授業がある。


 面白い。


「ジョエル、僕たちも授業取ったぜ」


 ライリーだ。

 ロレーヌとアスタシアも。


「あなたと一緒だと楽しそうだし」


 寮の購買・食事関係の件では、

 背後に俺がいることが彼らにはバレバレだった。

 隠していたつもりだったのだが、俺は隠し事が下手らしい。



 なお、彼女らは俺とは違う科目も選択している。

 ロレーヌとアスタシアは薬師科目を選択した。

 彼女たちはダンジョンで神聖魔法・聖魔法を発現しているからだ。

 回復系魔法と薬師は親和性が強い。


 ライリーは上級冒険者科目を選択した。

 ダンジョン20階制覇が目標である。


 俺は上級魔法陣科目だ。

 魔導具作成には欠かせない。

 ロレーヌたちも興味を示したのだが、

 内容が専門的すぎてすぐにあきらめてしまった。

 つまり、この科目を受講する学生は俺一人だ。


 ◇


 この2つの選択科目。

 俺は授業だけではもの足らず、すぐに図書館で関係図書を漁った。


 担当のガブリエル先生(2科目とも)がこれらの分野のオーソリティらしく、

 すぐに先生を質問攻めして、先生を嬉しがらせるようになった。


 何しろ、先生はドワーフだ。

 ドワーフはオタク気質が極まっており、

 自分の関心のある分野ならいつまでも話していられる。


 聞くところによると、魔導師のガリエルさんとはいとこ同士らしい。

 そういえば、名前が似ている。


 俺はちょくちょく先生の研究室にお邪魔し、

 果てにはまるで助手かなにかのように部屋にこもるようになった。


 その成果の一つは夏休みが終わる頃に結実した。

 なんだって?

 それは後のお楽しみ。



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