またもや繰り広げられる抗争2
【またもや繰り広げられる抗争2】
「みんな、奴ら拘束してつれてきたわ」
俺は奴らを紐でくくって、ずるずる引きずってきた。
「やっぱり、拳だったんじゃないの」
「だって、近づいたらいきなり攻撃してくるんだよ。反撃するしかないでしょ」
「どうせ、ステルスで近づいていきなり現れたんでしょ」
「なぜわかる」
「そんなことしたら、驚いて攻撃してくるわよ。むしろ、彼らのほうが正当防衛っぽいわ」
「むむむ」
「まあ、いいわ。ちょっと尋問しようか」
「こいつがリーダーっぽいんだよ」
俺は一人の腹を軽く蹴ってやった。
思いっきり力を抜かないと、蹴り抜いてしまうからな。
「ううう……」
俺は、水をぶっかけてはっきリと目を覚まさせた。
「!クソっ、あれだけ離れてついていったのに」
「そんなことどうでもいいだろ。おまえら、殺気が強すぎんだよ。やり口が少し素人っぽいっていうか、完全な犯罪者集団じゃないな?」
「俺たちは犯罪者じゃない!」
「何言ってるんだよ。おまえらだろ。ロレーヌやアスタシアを襲ったのは」
「襲ったんじゃない。救おうとしてるだけだ!」
「救う?誰から?」
「教会からだ」
「なんで教会が彼女らを害しようとしてるわけ?」
「おめえら、教会の本当の姿をしらないだけだ。奴らは人間の形をしているが、悪魔だぞ」
「悪魔って……あなたたちね、教会にテロ活動をしかけているのは」
ここ1年ほど、王国首都圏で教会を狙ったテロが頻繁に起きている。
「テロじゃない!聖戦だ!」
「うはっ。もろテロ組織っぽい言い方だな」
「あのな。教会はこの世の破壊を進めているんだ」
「はいはい」
「奴らは人間の骨肉を祭壇に捧げているんだぞ」
「なにそれ、悪魔宗教みたいじゃない」
「みたい、じゃない。それそのものなんだ!」
「もう頭が行っちゃてるわね」
「ロレーヌさんよ。あんた、聖女に祭り上げられているが、教会に行ったらどうなるかわかってるのか?」
「え?」
「ボロ雑巾のように働かされて、最終的には悪魔への生贄になるんだ」
「小説の読み過ぎなんじゃないの」
「小説とかじゃない!俺の姉も聖女となって教会にとられて行方不明だ。過労で体調を悪くした、という話までは伝わっているが、その先は不明だ。悪魔に喰われたって言われている」
「ほんとなら、大事件だけど、それすべて伝聞か推測ばかりじゃないの。証拠あるの?」
「俺たちの仲間には奴らから逃げてきたものがいる。潜伏して命と引換えに様子を探ったものもな」
「あのな。おまえらのようなカルト集団の言う事、聞けるわけ無いだろ?」
「カルト集団か。いいことを教えてやろう。昨年、ラ・シエルの住宅街で爆破事件が起きたのを覚えているか?」
「ああ」
俺は現場にいたからな。
「あれ、敵に追い詰められて自爆したって話だ」
「ほう」
「あれはな。教会の攻撃部隊なんだ。教会に、というか悪魔に魂を捧げている連中さ。教会に害が及ぶ前に死を選ぶ、そういう連中だ」
「……」
みんな、無言になった。
あの事件の異様さはみんなよく知っている。
ロレーヌたちが自衛のために走り回るきっかけがその事件なんだ。
「その手の奴らが跋扈してるのか?」
「ああ。去年の首都爆破テロな。あれは俺たちが絡んでいる事件だ。だが、爆破を決行したのは俺たちじゃない。奴らだ。俺たちの仲間もろとも自爆して果てたんだ」
「!」
こいつらの言うことは本当なのか?
「じゃあ、俺が襲われたのは?」
「それは知らん。俺たちが関わったのは、ロレーヌさんとアスタシアさんだけだ」
「アスタシアは?」
「彼女も生贄候補にあげられているからさ」
「なんでだよ」
「美しいからだ。生贄にふさわしいと奴らは考えている。俺の姉もそうだった」
「……」
「みんな、どう思う?」
「どうって、混乱しかない」
「こいつら、狂信者っぽいけど、確かにプロじゃないよな」
「ああ、手口がずさんだ」
「かといって、どこまで信じていいのやら」
「おい、おまえはリーダーなのか?」
「ああ」
「あのな。はっきり言おう。お前らは弱い。冒険者レベルならCレベルぐらいじゃないのか?それに色々と脇が甘い」
「……」
「命を粗末にするな。今回だってそうだ。300m離れていれば大丈夫だと思ったのか?ダンジョンの中ならな、1km離れていても探知する化け物もいる」
「うう」
「そうだ。ロレーヌを襲ったときに俺が溶液をかけた奴、いたろ。どうなった?」
「そこにいる。視力が悪くなったまま回復しないし、眩しいのが苦手になった」
「そうか。回復してやろう。どいつだ?」
男が顎で示す。
「こいつか?」
「そうだ」
俺は、そいつの腹を蹴って起こした。
「ううう」
「おい、俺を見ろ。ロレーヌ襲撃事件のときにお前に溶液をかけた男だ」
「!」
「今から目を治してやる。目を開け」
途端に目をつむりやがった。
俺は地面に回復薬容器を置き、
左手で顔を抑え、右手でまぶたをこじ開けてやった。
「ロレーヌ、頼む」
ロレーヌは瓶を取り上げると、
回復溶液を男の目にふりかけた。
「やめろ!……?」
目が白い霧に包まれ、光を発していく。
「おお、はっきり見える!光も眩しくない」
「冒険者ギルドで噂の回復薬だ。感謝しろよ。超高級品だ」
「なんで助ける?」
「まずな、俺たちにちょっかいを出すな。俺たちは誰からであろうと自衛する。おまえらはおまえらのしたいことをしろ。だが、俺たちに纏わりつくな」
男はしばらく考えていたが、
「わかった」
「調べればすぐわかるだろうから教えておく。俺はジョエル。家はクリス&アレクの店っていう冒険者向けのショップだ。ラ・シエル商店街のハズレにある」
「うむ」
俺は奴らのロープをほどき、開放してやった。
彼らはよたよたと行ってしまった。
「ジョエル、良かったの?」
「ああ。なぜか、悪い奴らには見えなくて。ロレーヌとアスタシアを救うという話に嘘は感じられなかったし。勘違い野郎かもしれんが。確かに、甘いと言われるとその通り」
「教会の話、本当なのかしら」
「わからん。父ちゃんたちに相談してみるよ。彼らのつながりで何かわかるかもしれん」
◇
その後、父ちゃんたちに聞いてみると、
教会は確かに昔からいろいろある。
そうだとしても、教会は最近おかしくなっていると感じる。
ラ・シエル街にいるとわからないのだが、
特に首都圏とその周辺の教会はかなり厳しくなっている。
傲慢に冷血にそして自分たちのことしか考えない組織に
なりつつある。
境界は昔から勘違いしやすい組織だったが、
それでもここまでじゃなかったはずだ。
特に、上層部がおかしいんじゃないかっていう噂は以前からある。
とのことだ。
悪魔と関係があるのかわからんが、
ギルマス・ジャックその他にもそれとなく聞いてみるとのこと。




