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とある一室で/生徒会選挙

【とある一室で/生徒会選挙】


「どうなんだ、アカデミー迷宮学園の生徒会選挙は」


「は、懸命に工作をおこなっておったのですが……」


「よい。結論を申せ」


「は、またもや自由派の学生が当選しました」


「ううむ、昨年に続いてか。何故なんだ」


「守旧派と反守旧派。2、3年は概ね半々です。1年に至っては2対1で我々の陣営が有利のハズなんですが」


「そのはずだ。そもそも、我々の陣営の学生が4分の3を占めておる。なのに、去年も自由主義陣営の息子が勝利しおった」


「彼は陣営に関わらず大変人気のある生徒でして。学力、ダンジョン成績もさることながら、性格も大変よろしく、気配りのできる男として特に女学生から絶大なる人気を誇っております」


「それは知っておる。我々も油断があったろう。何しろ、自由派から生徒会長が出るなどとは思っておらなんだからな」


「は」


「だが、今年はしっかり対策をしたのであろう?」


「もちろんです。しかし、今年は寮の備品コーナーに置く製品にやられたそうです」


「何をわけのわからんことを?」


「シャンプーなる液体石鹸、それに髪の毛をキレイにする溶液が販売されまして」


「それは私に対するあてつけか?」


 彼は頭が寂しかった。


「いえいえ!とんでもございません!」


「まあよい。続きを」


「女学生がこの製品に熱狂的な支持を致しておりまして」


「それで?」


「それが、反守旧派陣営による製品なのでございます」


「むむ」


「この製品を備品コーナーに置くのにクラスごとに採決をとりまして」


「リクエスト制度というやつか?」


「そうでございます」


「その製品に賛成票を入れないと、その製品が使えないなどとデマが飛び交い、女学生がこぞって賛成票を入れた模様です」


「親への締め付けはしていたのであろう?」


「それはもうしっかりと。にもかかわらず、女学生どもは親に反抗してまで支持を与えたようです」


「ぬぬぬ」


「投票者はブラックボックス化しておりますから、誰が投票したのかは正確にはわかりません。それをいいことに、女学生どもは反旗を翻したようです」


「ふざけたことを」


「しかもですね。マヨネーズという製品もございまして」


「マヨネーズ?初めて聞くの」


「はい。新商品だそうです。調味料というかドレッシングなんですが、

それを料理にかけると誠に美味なるもの変身する魔法の調味料だそうで。これが男子学生を含む学生の多くが夢中になっておりまして」


「なんと。で、男子学生も投票した、というわけか?」


「はい。そして、それがそのまま生徒会選挙にスライドしました。自由派を選ばないクラスにはこれらの製品が回らない、などとの噂が」


「では、なにか。反守旧派の製品が迷宮学園を席巻しておると。ただそれだけの理由で生徒会長は自由派の子弟になりそうだというのか」


「誠にその通りでございます」


「ふざけた話だな」


「これが密かに手に入れたマヨネーズでございます」


「おお……なるほど、これはすこぶる美味ではないか!不味い食材でもこれほど旨いものにするとは」


「はい。それと、髪製品のことでございますが」


「うむ。不愉快な製品じゃの」


「最近、髪の毛を復活させる神からの贈り物とされる回復溶液がダンジョンで見つかった話をご存知でございますか?」


「おお、おお、一時期大騒動であった。ダンジョンの深い層で手に入れられるとかでワシも子飼いの冒険者共に探らせておるところだ」


「仮にですよ。仮にですが、その溶液が冒険者ギルドからしか供給されないとしたら、お館様はいかがなさいますか」


「うむむ、難しい話だの」


「そうでございます。私もお館様と同じ悩みを共有しております。お気持ちはわかります」


「ふむ」


「女学生どもにとっての髪薬は、我々の神の薬と同じような位置づけにあるのでございます」


「まさか、そんなことが」


「お館様、我々は男でしかも壮年。10代の女学生とは感覚が隔たっております。ですので、あえて例え話を致しました。これで生徒会選挙の背景が多少なりともご理解いただけるかと存じまして」


「むむ」


「そのうえで、学園では、反守旧派に賛成票を入れないとその製品が使えない、などとデマがいまだに飛び交っているという話です」


「なんと。おそらくデマではあるまい」


「おそらくは。ただ、それがデマであろうとそうでなかろうと、学生どもにとっては一大事だ、ということです。特に女学生にとっては」


「ううむ、守旧派の立候補者が負けた理由か」


「はい」


「教職員はどうなっておる?このために色々と便宜を図ってきておろうが」


「それが、ここにきて一気に袖の下が明るみに出まして」


「なんと」


「学長派の工作の模様です」


「あのエルフめ。大人しそうな顔をして今まで何度煮え湯を飲まされてきたことか!」


「そのことで一気に教職員の発言力が低下しております。守旧派の学生も反感を抱くものが多く」


「ううむ」


「そもそも、学生は守旧派・自由派というものにさほど縛られているわけではありません。しょせんは親のスネカジリ。厳しい社会に身をおいているわけではありませんから」


「この流れを裏で主導しておる学生、なんといったか」


「ジョエルでございます」


「そうだ。少なくともそやつをどうにかできんのか。このままだと、来年も飲み込まれるぞ」


「実は、ある筋に依頼しまして」


「教会系の組織だな」


「はい。通称、神皇の子供たち。彼らに動いてもらいました。それも2度」


「その物言いだと失敗したのか」


「2度とも一方的に。アジトを突き止められて、自爆して果てました」


「ううむ」


「2度めなど、人工魔素フィールドを使用して複数で一気に畳み掛けようとしたとのことですが、失敗し、アジトに戻ったところ後をつけられ、結局自爆で倒そうとしたそうです。しかし、それさえ失敗しました」


「信じられん」


「彼は、アカデミーでも前期試験の座学部門でダントツの首位。クラス対抗戦に至っては、ダンジョンの20階ボスである大猿を2回討伐。しかもソロで。迷宮学園の歴史に残る活躍をした模様です」


「化け物級ということか?……では、その家族を抑え込めんのか」


「両親は著名な元冒険家。妹も兄には至りませんが、中学生としては並外れた身体能力を誇り、しかも自衛の武具を常時携帯しておる模様。この武具が強力で、彼の交友関係者が一律携帯しております。何度も撃退されております」


「うーん、手がないのか?」


「守旧派の領内であればまだなんとかなるのかもしれませんが、ラ・シエル街という自由派の拠点のようなところに住んでおりますから」


「とにかくだ。このままでは、来年、再来年と一気にいかれるぞ。手を考えよ!」


「はっ!」



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