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両親の復活戦

【両親の復活戦】


 両親の冒険者時代。

 20階の大猿討伐で大怪我を負った。

 討伐は果たしたが、これが原因で引退した。


 彼らの当時のダンジョンレベルは30。

 20階に到達しており、

 これ以上レベルの上がらないところにまで来ていた。

 19階までの魔物では弱すぎて経験値が入ってこないのだ。


 満を持して挑んだ20階ボス戦。

 誰もが楽勝だと思っていた。

 ところが、父ちゃんとの相性が最悪だった。


 大猿はB級上位、限りなくA級に近い。

 力も強いがそれ以上に敏捷性が高い。


 当時、父ちゃんは力押しの脳筋タンク。

 大猿の敏捷さに振り回された。


 父ちゃんが崩れると、母ちゃんも一気に弱くなる。

 母ちゃんは攻撃力に偏重している。

 守備力がない。

 逃げながらの攻撃ということになる。


 父ちゃんは重傷を負いながらも母ちゃんを守り抜き、

 母ちゃんも魔石を使い切り魔力が底をつくほどの大乱戦を勝ち抜いた。


 しかし、この怪我の完治が長引き、完全な赤字になった。

 父ちゃんたちはちょっと気持ちがへこんだわけだ。

 命をかけるにしては代償が割に合わない。


 俺が誕生することもあって、父ちゃんたちはスパッと引退を決意した。

 そもそも、冒険者は長くするもんじゃない。



「だけどな、ずっと心の底に澱のように淀んでいたわけだ」


「やっぱり悔しかったとか?」


「だな。確かに俺たちは大猿戦で勝利を掴んだ。しかし、大怪我を負って気持ち的には勝った気はこれっぽっちも持ってなかった」


「半年入院したよね」


「ああ。毎晩な、オレは奴に叩きのめされる夢ばかりみるわけだ。深夜、真っ暗な中で悪夢で目が覚める。きっついぞ」


「ああ、わかる」


「オレは、心の奥ではずっと敗者復活戦を思い描いてきた。奴にやられる姿ではなくて、奴を叩きのめすオレの姿をずっとイメージしてきた」


「イメージ訓練だけじゃないよな」


「うむ。オレに不足していたのは、敏捷性だ。それをジョエルから学んだ」


「オレもマノンも敏捷性だけは父ちゃんより優秀だからな」


「特におまえの分身の術はすごく参考になったよ」


「なんだっけ、軸線をずらすんだよな」


「そうだ。敵から攻撃を受けたときに瞬時に軸線をずらして攻撃を受け流す。この技を開発できたことで、オレは若い頃のオレを越えたと思っている」


「それを今日確かめると」


「そうだ」


 父ちゃんのこの技。

 対戦してみるとよくわかる。

 攻撃しても父ちゃんに当たってるはずなのに、手応えがまるでない。

 俺のレベルでさえ、父ちゃんは攻撃を受け流すのだ。

 大猿ごときでは相手にならないだろう。


 実際、20階で大猿と対峙。

 父ちゃんは見事なヘイトコントロールで

 ずっと大猿を父ちゃんに張り付かせていた。

 大猿は殴っても殴っても手応えのないことに苛立ち、

 目を真っ赤にして奇声をあげて攻撃していた。


 その横から俺たち3人、母ちゃん、マノン、俺は、

 ただ遠距離攻撃するだけだった。

 ああ、俺の遠距離攻撃は魔導具でおこなったが。



「アレクさん、素晴らしかったわ」


「父ちゃん、お見事」


「私達、攻撃するだけで楽だったよね」


 対戦時間は20秒程度しかかからなかった。

 もっとも、その僅かな間で大猿は100発以上の攻撃を

 父ちゃんに浴びせていたのだが。


「父ちゃん、言葉通り昔より強くなってるんじゃない?」


「アレクさん、私もそう思うわ。今回は4人で対戦したけど、二人で攻撃しても楽勝だと思う」


「ああ。あっけなかったな。なんでこんな奴に苦戦したんだろ、って思ってたよ」



 俺たちは余裕をもって21階に降り立った。

 父ちゃんたちにとっても初めてのフロアであるけど、楽勝だった。

 21階以降も同じだった。


「こんな年齢になってから全盛期を迎えるとは思わなかったな。ジョエルの技を教えてもらってオレの欠点がかなり解消されたし」


「ジョエルちゃんとマノンちゃん加入のおかげも大きいわよ」


「そうだな。4人パーティってこんなに楽なんだって初めてわかったよ」


「ずっと二人パーティだったものね」



 夏休み中に俺たちは25階までを走破した。

 結局、父ちゃんたちはレベル30→33にまで増加させた。

 俺とマノンは6月にはレベル19だったが、レベル24にまであげてきた。


 ただ、流石にマノンにはきつくなってきた。

 いわゆるパワーレベリング状態で中身が伴わなくなってきたので、

 20階前後にもどってマノンの実戦力増強に注力している。


 強くなることが最終目的じゃないしな。

 家族4人でわいわいやりながら討伐を重ねていく。

 それが楽しいからやっているんだ。

 無理して下層階に行こうとは思わない。



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