アスタシオを守れ!
【アスタシアを守れ!】
夏休みになった。
このあたりは昼間の気温は30度以上になる。
しかし、前世日本に比べると雨が少なく、カラッとしている。
また、内陸部にあるせいか昼夜の気温差がわりと大きく、
夜明け前だと半袖ではちょっと厳しいし、厚めの布団が欲しくなる。
さて、アスタシアはレベリングのために帰省せずに寮に残った。
なるべく一人になるのを避けていたのだが、
ある日の夕方、寮に一人で戻るところを五人組に襲われた。
黒尽くめの服装、
5人ともゴーグルをしている。
ロレーヌを襲った賊と同一系統の奴らだ。
目潰し溶液対策をしてきた。
アスタシアは、とっさに護身用の火魔法魔導具を使用。
賊が驚いている間に、なんとかその場から離脱。
アカデミーでは緊急職員会議が招集された。
学内で日中に学生が襲われたのだ。
しかも、その学生が首席入学者となれば話が大きくなる。
夏休みということで警戒が緩くなったところを突かれたのだろう。
結界強度を最高ランクにあげることになった。
守衛も通常通り4人体制に戻すことにした。
アスタシアとジルはロレーヌの家で寝泊まりすることになった。
ロレーヌの家には父ちゃんの提供した結界魔導具がある。
隣には父ちゃんたちもいるしな。
夏休み中だから学園寮は不安で寝泊まりできない。
帰省は危なすぎて断念することとなった。
もっとも、アスタシアは夏休みは帰省する気がなかったらしい。
田舎が遠いことと、
アスタシアのダンジョンレベルの少なさゆえに
夏休みに少しでも挽回したいらしい。
さすが女神は心構えが違う。
時々はマノンも泊まりに行っている。
同学年ぐらいの女性同士でガールズトークが面白いんだと。
耳年増になりそうで怖いんだが。
両親も度々マノンがお世話になるので、
差し入れがてら、隣家に挨拶をしにいく。
隣家両親はいずれもラ・シエル街の省庁職員だ。
彼らによると、
最近は街の雰囲気が少しずつ悪くなっているという。
そういう治安情報が上がってきているのだ。
ライリーは実家がラ・シエル街にある。
さすがに名のある元冒険者の名家を襲うバカはいないだろう。
ただ、外出時はボディガードをつけている。
◇
「こりゃ、いよいよ自衛レベルをあげなきゃいかんな」
「本当に。アレクさんたちのご忠告に従っていて助かりました。私、攻撃魔法の魔導具がなかったらどうなってたか」
「全員、ダンジョンレベル最低でも20を目指そう」
「20ですか」
「夏休みでおまえたちは暇だからな。オレたちは週1程度で関わるが、いいだろ?」
「6人でチーム組むから。問題ないでしょ」
「ムリはしないし、とっておきの回復薬あるしね」
「その回復薬さ、最近話題のじゃない?」
「ダンジョンの奥に落ちてるってやつだよね」
「噂じゃ、1億の値段がついているらしいよ」
「それなの?」
「まさか。そんなの簡単に見つけられないし、見つけても使えないよ」
「だよね。でも、ジョエルんとこの回復薬ってすごくよく効くんだよね」
「父ちゃんコネクションにはね、優秀な薬師とかがいるから。おまえらにも1つずつ渡しておくよ。ただ、非売品で薬師ギルドの許可もらっていないから、他言無用。これは絶対だよ!」
「ああ、だいたい魔法契約書で拘束されているから、漏らすことはないけど」
◇
「さて、ジョエルとマノンはレベルが18。おまえらは15。階数は、11階どまりだったよな」
「ああ、そこでレベリングしてた」
「よし、じゃあいっきに15階まで行っとこうか」
「え、アレクさん、大丈夫かしら」
「レベル15なら、11階ではもうレベル上がらんだろ」
「はい」
「13階までは同じような強さの敵が続く。つまりもうレベルが上がらない」
「ええ、そんな」
「で、14階。ここは砂漠なんだが、サンドワームというミミズの化け物が出る。これが強敵でいきなりレベルが2ランクぐらいあがる」
「初見殺しみたいなものですか」
「うーん、単純に強いんだ。もちろん、初見もレベル差で戸惑うんだが、対策をたててもやっぱり強い」
「はあ」
「だからね、この階は大急ぎで通り過ぎる。奴は地中にいる。移動速度はそれほど速くない。待ち伏せ型の魔物だから」
「おお」
「でね、15階。シャドーストーカーって魔物が出る。ボス扱いで、この敵こそが初見殺しなんだよ」
「ほお」
「奴は影や暗闇に潜む。で、寝ているところを影から急襲する」
「確かに、初見殺しだ」
「対策は簡単。この階層には昼と夜がある。昼、明るいときに自分の影を凝視する。すると、違和感に気づく」
「違和感ですか?」
「注意してれば、すぐに気づくよ。何かがそこにいるってね。で、そしたら、そこに強い光源をあてる」
「影を消すわけですね」
「そうだ。すると、魔物が影から飛び出てくる。奴は影の外では激弱だ」
「一撃ですか」
「攻撃はなんだっていいんだ。武器でも魔法でもね。なんなら、殴ってもいい。ゴブリンより弱い」
「影に隠れてないと駄目な魔物なんですね」
「ただ、1体じゃない。20体いる」
「ちょっと持久戦になりますか」
「だとしても、団体で行けば数分かせいぜい10分ほどで捕捉できるよ」
「倒し方さえ分かればボーナスステージっぽいですね」
「ああ。そして、この倒し方ははあまり人に知られていないんだ」
「なぜですか?」
「なぜだか、ここの倒し方は秘密に、という暗黙の了解があるんだよね。君たちは魔法契約書をとりかわしているから俺も伝承するけど、そうじゃなければ黙っているはずだ。多分、そういう魔法みたいなものがフロアにかかっている」
「なるほど。だから、余計に初見殺しなんだね」
「うん。それにね、一度倒すと、もう出てこない」
「じゃあ、私達だけでやんなくちゃいけないわけですか」
「そうだ。オレたちがいると出てこないからな。だから俺たちは離れたところにいる。心配するなよ。対策を知っていればゴブリンより弱いんだから」
「ですか。そうと分かれば、ダッシュで15階ですね!」
「その前に、各自強力魔導照明を買いに行こう」
こうして、15階の魔物を刈り取り、
15階の討伐証明書をゲットするのだった。
◇
15階には転移魔法陣があり、
討伐に関係なく下に降りる階段が現れている。
安心して16階に行ける。
16階からは2チームに分ける。
俺と母ちゃん、ロレーヌ、ジル。
父ちゃん、マノン、アスタシア、ライリー。
バランスを考え、こういう編成になった。
俺的にはアスタシアとチームを組めなくて残念だが。
16階からはしばらくオーソドックスな敵が続く。
基本的な敵の倒し方を続けて行けばいいので、
しっかりと実力を高められる。




