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4章7節 汝、魔力蜷局ニ足ヲ踏ミ入レ 4

コッソリ更新すればバレへんか………(間めっちゃ空いてマジですみません)



 と、その前に、推定元凶を回収。溶岩竜が寝こけていた更に奥にそれはあった。

 何かが壊滅したと思われる死体の残骸と壊れた荷馬車たち。何が有ったかはなんとなく予想がつく。クソ、やはり人災であり神災だったかこの魔力蜷局。未練がましく怪異に化けようとしていた死体の山を眷属ブラッドを付着させたパンチで一撃粉砕。ウチの御主神様のパワー舐めんなよ。

 とりあえず『コレ』を回収すればこれ以上魔力蜷局が深刻化することはなくなるな。なるほど。コイツを俺が回収すると見越して御主神様も長すぎる休暇を黙って見てたのか?


【察しがよろしいですね】

 

 どーもお久しぶりです御主神様。ヘヘヘ、流石は御主神様。おれっちの思いつくようなことはやはりお見通しってわけで【おべっかは要らないのでさっさと戻りなさい】はい。


 久しぶりの神託だ。あると鬱陶しいけどないとなんだかないとアレって気分になる。サブスク入って消えた広告ってこんな感じ。偶に見るとちょっと楽しいけどやっぱいらねって直ぐになる。


【貴方は誰よりも私に対して不敬ですよ】


 御主神様の怒りの声をバックグラウンド再生のラジオ代わりにRTA開始。  

 まず服を着ます。

 汗ばんで着にくい!くそ!焦ってる時に限って手間取るよね基本的な事がさ!これ人類共通のアルアルだと思う!

 続いてアチアチの溶岩竜を解体。お手手がBBQしてますけど我慢!心頭滅却すれば火もまた氷!というか手の感覚がなくなれば勝ち!


 よーし解体完了。魔法をかけた作った超頑丈なリュックに強引に詰め込み!血の一滴迄お前は無駄にしたくない!

 解体RTAは概ね順調。処理しきれない物は御主神様の生贄に!脳内で流れるはうんとかクッキングのテーマ。これが完成した物になります、ってショートカット出来ないかなぁ。


【雑過ぎです】


 ガヤは気にしません。さあリュックを背負ってダッシュ開始。魔物達が血のいい香りを漂わせる俺を次々と襲ってきますが回収したブツで撃退。邪魔だ邪魔だ―!これ凄いな。なかなかの火力だ。


 おおっと貴重な薬草。これは回収。仕方ない。RTA協会もこれは許してくれる。走れ走れ走れ走れ!遅れは足で取り戻、ああああっとこれはこれも貴重な!こっちにも!どーしてRTA中に!そうか3人娘に注意を払わない分視野が広いのか!


 ええい全部回収だ!





「帰りました」


 我、帰還なり。最後は大ジャンプで足場の悪い場所を飛び越えて池周辺に直接ダイナミック着地。ヒーロー着地はしないよ。アレ絶対膝に悪いし。ウチの娘たちが何事かと武器を構えて怯えた目をしたが、俺だと気づくと安堵と混乱と色んな感情がないまぜになった目になった。

 2日ぶりですね。お元気?私は元気よ。血と煤とその他諸々にまみれて無残な状態のYシャツは気にしないでおくれ。色々あったんだ。


「猊下、無事でよかった!」

 

 おっと、ヘラクルさん不安だったのかギュッと抱き着いて来ようとしているが、これをギリギリで阻止。ほんとごめん。そんな泣きそうな顔しないで。


「ヘラクル、今の私の服はかなり汚れていましてね。気持ちは嬉しいのですが、ヘラクルが汚れてしまいます。体を整えるので少し待ってもらえますか?」


「は、はい」


 ハグをやんわりと、しかしガッシリと拒否された時のヘラクルのショックと悲しさに塗れた感情の荒れ具合は凄まじかった。信頼のおける仲間はできても、まだ完璧にトラウマに消えたわけではない。いや、もう一生消えない傷なのだ。長く気の張るストレス状態が続いている最中で自分を守りずっと行動を共にした俺がいなくなったことで精神的に少し不安定な感じになっている。

 罪悪感で俺の心もおかしくなりそうだ。確かに依存させてしまえば運営上は楽なんだけど、ヘラクルの為にはならない。ここら辺のジレンマをどうするか俺はまだ答えが出せていない。こういう時こそクソ親父に色々聞きたいが、肝心な時に聞けやしない。けどこの感じを見るに思ったより精神的に俺に依存してしまってるな。素人目で見てもわかる。


 さて、体を最低限整えよう。もう何度もやって慣れているので目を瞑っていてもできる。

 場を軽く整地、既に作り置きしてある魔法陣を描き込んだ毛皮を広げ、その上で儀式開始。陣の上に或る教団に纏わる物以外の異物を消し飛ばすちょっと危ない儀式を利用した全身瞬間クリーニングです。強引にやるので全身から血がごそっと抜けるけど回復力の早いので地に膝を付く前に直ぐに意識を取り戻す。

 うーん、爽快!さっぱりした!泥だの枯葉だの草の汁だのもう俺滅茶苦茶だったからな。ちょっと汚れてるとかレベルじゃなかったんだ。ただいまー!って家に帰ってきておかえりーと穏やかに迎えようとした母親が玄関で絶叫するレベル。みんな一度くらい経験ない?多分まず外に出されて水やりのホースとかで水をジャバジャバかけないとお話にならないレベルだったね。


 そんな厄介な汚れがあら不思議!パッと全部消えちゃう!バグのお陰で着ている服まで消し飛ばないのほんと自分でもズルいと思う。


「どうぞ」


 さて、これでようやくハグしても大丈夫な身になった。俺はヘラクルの方に振り返りさぁこいと腕を広げる。


「あ、えと……」


 しかし先ほどのアレは感情が暴走したというか、勢いによるところが多かったらしく、ちょっと時間を置かれて冷静になったのか改めてハグをしようとすると恥ずかしいのか恥ずかしそうに体をモジモジさせ目を伏せた。

 そーね。そうだ。ハグしたい時は俺からまた頼むって言ったからね。俺は自分からヘラクルに近づくとその体を抱き寄せた。


「只今戻りました。貴方達が無事でよかったです。何か問題はありませんでしたか?」


「い、いえ、大丈夫です。問題はありませんでした」


「それは良かったです」


 俺が腰からしっかりと抱き寄せると、ヘラクルは一瞬息をのみ、おずおずと抱き返してきた。

 俺の身体にまわったその腕に、もう震えは無い。そうか。ここまで治ったか。本当に良かった。精神が体に追いついたのか、ヘラクルからおどおどとした感じが消えていき俺の事をしっかり抱き返した。そしてなんか匂いを嗅がれている気がする。何をしてんだろう。気づかれてないと思ってるかもしれないですけどバレてますよ。

 ひとまず俺抜きでよく頑張りましたと頭を優しく撫でてやると、ヘラクルの身体から力が抜けて俺に体重を預けていた。相当張り詰めていたのか。あるいは寝れなかったのか。そのまま抱きしめているとヘラクルはウトウトし始めていた。けどそのまま寝られても困るので一旦地面に敷いた布に座らせる。ん~眠そうですね。けどもう時刻は夕方。どう見てもそろそろ飯時である。ここで変に寝ると夜に寝られなくなるだろう。座らせることが出来たけどまだウトウトしてるなぁ。


 さて、次は。そう思って振り返ったらタックルされた。あぶねぇ。俺が接近に気づいてなかったら吹っ飛んでたよ君。ねぇ、ケテトさんよ。


「これは激しい出迎えですね」


「遅い」


 はいはい俺が悪かったです。そんなグリグリ頭を擦り付けてマーキングするみたいな事するんじゃないの。みたいっていうか、本当にこれマーキングしてる気がする。角が危ないですよー。俺に刺さったらあわや殺人事件である。まあ死なないけど。よーしよし。ヘラクルの番の間ずーっと後ろでウロウロうずうずしてたのちゃんとバレてるからねぇ。可愛いヤツめ。ヘラクルの手前しっかり者として行動してくれたんだろうけど、ケテトも精神的に色々と負荷がかかったみたいだな。でもちゃんと眠りはしたのかヘラクルほど消耗はしてない。ケテトみたいに5年も逃避行をしてると、寝られるときに寝ないと命取りだったんだろうな。その習慣がまだどこかで生きているのだろう。


「ちゃんと約束に間に合わせましたよ」


「っ!?…………そうか」


 俺が覚えていないとでも思っていたのかちょっと驚いた顔しおって。でもその後の嬉しそうな、ちょっと恥ずかしそうなはにかみの入った微笑みで全部許した。この子意外と甘えん坊さんなのよね。普段は「クールタイプでござい」みたいな顔してるのに偶にこうしてちょっと幼げな可愛さを見せるところ、良いと思います。細い尻尾で俺の腕をギュッと抱きしめて、先っぽが機嫌よさげにヒラヒラしてるのもいじらしくて可愛い。30秒ほどハグするとケテトの方から少し名残惜し気に離れ、俺のネクタイをキュッと引っ張ると背伸びして首筋にキスしてきた。


「…………夕食の仕上げをしてくる。夜、忘れるなよ」

「ええ、そうですね」


 あぶねぇ。そのまま抱きかかえてテントに連れ込むところだった。俺は理性をフルで起動させ、赤らんだ顔を手で覆ってテテテテッと小走りで居なくなったケテトの背中を見送る。

 ケテトさんが俺特攻過ぎる件について。なんか俺の性癖ストライクゾーンに手足でも生えたような子だ。怖い。本人は別に誘惑してる気ではない素の動きだから余計に怖い。魔性過ぎる。



「随分と好かれておるの。見ているこちらまで顔が熱くなりそうじゃった」


 最後に来たのはイヨカ。やはり他2人とは潜った修羅場の数と質が違うな。圧倒的にタフだ。

 3人を途中で帰したけど、実はイヨカだけならついて行けなくもなさそうだったのよね。気の張りつめ方の割合も心得ているというか、過剰に肩に力が入らない様にするためのメンタリティがイヨカには生まれついてあるのだろう。これが異様な勝負強さを作り出し、賭け事でも遺憾なく発揮されているのだ。別れ際に2人の事を託していたのだが、イヨカに任せて正解だったようだ。


「2人の事、しっかりと見ててくれましたね。ありがとうございます。頼りになります」


「此方が年上じゃし、踏んだ場数でも違うからの。礼には及ばん。必要な事じゃったのだろう?一体何があったのか色々と話を聞かせてくれればそれでよい」


 カカカッと2日間の感じていた重圧と責任感でさえもイヨカは笑い一つでチャラにしてくれる。この人も本当に得難い人だ。

 それでよい、とは言ったが、俺が腕を広げると少し遠慮がちにしながらもイヨカも抱き着いてきた。


「ふふふ、結局皆ですね」


「これでも心配したのじゃぞ。魔力蜷局に入ってから見た強さから万が一は無いとは思っていたが、それはそれ、これはこれ、じゃからな。眷属とて無敵ではない。ただ、あの凄い格好で戻ってきた事で別の心配に変わったが、何もなかったようで何よりじゃ」


 イヨカのハグはケテトの様なギューッと力を籠める感じではなく、程よい感じのソフトな感じ。優しさと労りを感じる暖かい大人のハグだ。


「此方にはもっと頼っても構わぬぞ。猊下一人で全てを背負う必要はないのじゃからな」


「そうですね。今後も頼りにさせてもらいます」


「うむ、それでいい」


 蒸し暑い場なので汗が滲みそうになりそうなところお互いそれとなく離れると、イヨカは少し恥ずかし気にしながらもいい笑顔をしていた。笑顔の練習の成果、イヨカもちゃんと出ているようで何より。


 

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