表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/39

3章1節 汝、心ノ棚ヲ設ケ



 訳アリが増えると進路がもっと複雑になります。

 ケテトの身の上話から更に詳しく話を聞いたけど、黄龍人族が今もケテトの事を探しているかはわからん。わからんけど確定しない限り慢心はNGだ。宝具パクったてあーたねぇ、と思ったけどまぁ今更何も言うまい。その宝具達も神との取引で売り払ったとか問題発言してるけど、宝具目的ならもうケテト自身を熱心には追ってきてないはずだが果たして。そもそも里が半壊ならトラブルの元を人員割いて追っかける理由もそんなないだろうし。宝具を取り戻すまではいかなくても所在だけでもせめて掴んでればとりあえずは里を立て直す方が先だろう、普通ならね。でも人の逆恨みって怖いからな~。油断はしない方が良いだろう。


 なので俺の持つ知識とケテトの知識を合わせて、黄龍人族と獅羊族、あと念のために俺達がぶっ潰した盗賊の元の教団がうろついてそうな場所も避ける分布帯を推定し進路を決めた。信徒を集めなばいかんのに相変わらず人の多い所を徹底して避けるスタイルとはこれ如何に。お尋ね者ムーブを素でやってますこの教団。


 気になるのはチュートリアル完了のお知らせがないこと。まだあるのかしら。このゲーム、チュートリアル長いな。あるよねそういうゲーム。おつかいいつまでやるねん!みたいな。いやもう説明書でくれ!みたいな。ダメなオンゲ、チュートリアル長くなりがち説あります。パソコンでやってた時代ちゃうぞ。VRだとだるいねん。

 この愚痴、開発陣に届け!(ニチアサ感)。まあ二度とすることもないので届いても仕方ないんだが。


 さて、拠点のある状態でしっかりと準備を整えて出発したからか3人旅は本当にトラブルなく進んでおります。知識だけは豊富な俺に加え、女性として5年間一人でハードな旅をしてきた経験に基づいたケテトの知識がある。男性として俺が口にしにくいこともヘラクルに言ってくれるのは正直凄く助かる。旅に関して詳しい浪羊族の中にヘラクルも一時期いたけど、期間も長くないし意思疎通もスムーズにできていなかったから最低限しか知識が無いのよな。ここにきて一気にケテトが頼りがいのあるお姉さん枠になってます。


【このためにケテトを確保させようとしました?】


【それも目的の一つです】 


 つまり暫く旅は続きそうということですねわかります。当面は信仰元の神にわざわざお伺いを立てなくても改宗しちゃうような問題児を中心に少しずつ地盤を固めていく感じだな。

 ………………ほんとに事故物件アパート化するのでは?いやだよ俺チェインメイデン教団が問題児の駆け込み寺みたいになるの。管理者ストレスで頭剥げるよソレ。


【祝福のお陰で禿げませんよ】


 そーゆー話ではない。いやまぁ少し安心できるけど。


【とりあえずチュートリアルは続くんですよね?神託ナビ止まってますけど】


【ナビで導くにしても何かしら面倒な物にぶつかる可能性がありますので、現在の進路ですと逐一方向を示すより大まかな方向を指示した方が良いでしょう。偶然にも貴方方が進んでいる方向で今の所問題ないのでナビが止まってます】


【なるほど。つまりここ1週間で遭遇してる盗賊とか猛獣は『面倒な物』扱いにもならないと】


【実際直ぐに対処できているではありませんか】


 うーん、まあ確かに。教義や戒律的な問題で略奪をなんとも思ってない団体が普通にある世界なので盗賊(神がバックにいるのがめんどくさい)が普通にポップする世界なんですが、戦闘スイッチの入ったヘラクル一人でどうにかなっちまうんだよな。夜は俺が処理してるけど。ケテトも魔法で危険物の接近を判別する結界を作ったりしてくれるので戦ってる時も別方向から襲われる心配が減って安心できる。


 繰り返すように、この世界の魔法ってファイアボール!みたいに短文唱えて即発動します、みたいな仕組みじゃないので魔法が使えるからと言ってそれでなんでも解決できるわけじゃない。

 そう考えると、事前に万が一に備えていたとはいえ里を半壊させるほどの魔法を発動できるケテトって凄まじい魔法の使い手なんですよ。略式発動とかもできるらしいし、戦闘に魔法を組み込める時点で魔法使いとしては相当の腕前だ。まぁ、そうでもなきゃ女一人身寄りも無しに5年も旅とかできないだろうからある意味納得ではあるんだが。

 てか普通に考えて、魔法がゲームみたいにバカスカ発動できる世界って統治すんの相当難しいんじゃなかろうか。ある意味国民全員が取り上げられない銃器を常に携帯している世界と例えると俺だったら頭抱えたくなるな。ちょっと衝動的になっただけで殺人が簡単に起こせる世界なんて怖すぎる。ゲームみたいに街内は戦闘系技能封印みたいな場所なら違うんだろうけど。

 その点、この世界の魔法はとにかく事前準備がないとダメなのでヘラクルみたいなスーパーフィジカル持ちには押し切られたりする。なので略式発動みたいに使い勝手の良さそうな範囲に落とし込もうとすると触媒込みで一日に使える数にも限界アリ(発動できる人がそもそも少ない)って感じに落ち着く。

 といっても、ケテト、フィジカルも結構あるんだよな。一人でずっと暮らしてたし、魔法に熟達しているからこそ魔法の弱点をよく理解しているから結構動ける。てかあの重い杖を肌身離さず持ち歩ける時点でフィジカルは保証されている。我流の喧嘩殺法だが盗賊程度頭の良さとフィジカルで簡単に捌いてしまう。なんだろうな、動きがとても理にかなった動きをしているんだよな。

 唯一の弱点はスタミナかな。それも旅を始めてから随分改善している。ケテトのスタミナ不足は運動がダメってより偏った食生活によるところが割と大きかったからだ。というかそもそも食を疎かにしがちだ。そこはしっかり注意した。この世界には栄養学がないからピンと来てなかったけど、ウチの教団はそこんところ徹底するからね、


 旅のスケジュールだが、日中は移動。休憩中にケテトの言語学習に付き合ったり、俺も混ざって組手したり。夜は俺が寝ずに見張りでヘラクルとケテトには寝てもらう。ケテトが意味深な目を向けてくるが、旅中は体力が大事なのでダメです。

 まあ、軽く首を絞めると喜ぶのが発覚した時はちょっと複雑な気持ちになりましたよ、ええ。絶対原因あれだもん。生命の危機を一番感じたあの瞬間と何かが混ざって恐らく脳がショックを和らげるために変な処理をしてしまったんだ。

 あと体力以外の問題もある。夜間警戒でもケテトの腕は信用しているが魔法だけってのも万が一があるかもしれないからな。それと、ヘラクルがいるからなぁ。

 あの日、自分が外で寝るとヘラクルが自分が馬車にいき、俺の背をケテトの家に押した時点でヘラクルも理解はしてるんだろうけど、それはそれとしてだ。ケテトくんは色々といっぱいいっぱいで気づいてなかったっぽいけど、ヘラクルちゃん聞き耳立ててたよガッツリ。てか一度目が合った。凄い遠くからだけど。これぞ知らぬが仏とはなんとやらなんでしょうね。


 しかし、ある意味それぐらいヘラクルもだいぶショックが和らいできたともいえるのかもな。3人で暮らすようになってから更に結構回復してきた感じがある。やはり同じ女性が近くで寄り添ってくれるのて大事だよな。まあ、ケテトは男慣れしてたわけじゃないことが発覚したけど、旅をしていた間に似たような案件には何回か遭遇しているらしいので安心して任せられた。

 今のあの二人はもう姉妹の様に仲がいい。お互い年の近い同性と仲良くお喋りする機会のなかった者達だ。それもうパズルがカチリとハマるみたいに相性が良かった。

 因みに、男慣れしていたのはまるっきり嘘ってわけではなく、言い寄られたこともあったし、何度か本気で求愛された時もあったらしい。けど全て断ってきたそうだ。確かにあの綺麗な目で見つめられながら命を救われたり今後に一生響くようなケガを治してもらったらちょっとときめいちゃうのも理解できなくはない。男ってそういうの弱いもんね。種族を隠そうと振舞っていたせいで殊更ミステリアスに見えるのも余計に男を惹きつけたのだろう。

 人は隠された物を暴きたくなる、あわよくば自分だけがその秘密のベールの下を知りたいと願ってしまう生物なのだ。

 そんな女が自分から絶妙に全てが見えないくらいにチラッとベールを上げて、こっちに来てと恥ずかしがりながら手招きして、自分にだけ弱い所も全部さらけ出してたらね、もうね、流石にズルくないかって。


 ただね、御主神様、それで点数寄越すのは変じゃない?いやありがたいけどね。でも100点ってのはガバ採点でしょ?


【あれで完璧に楔を打ちましたので】


 あくまで教団の状態を見ての点とな。拗れたら寧ろ大変そうですが。


【そうしないようにするのが教祖の務めです。言ったでしょう。何をしてもいいと。酒池肉林を築いてもいいと。淫楽に耽っても良いと。ただ、信仰には忠実でありなさい】


 要するにそれも含めて上手くやれって事ね。はいはい、りょーかい。いよいよリアルでもいそうなダメな教祖に足を踏み込んでますが、別に弱みに付け込んでないしツーアウトワンボールくらいかな?


【ツーアウトワンストライクです。信仰は公私混同しないように。心に棚を設けるのです】


 ソーデスネ。やだなぁ全部筒抜けなの。それと、次の祝福どうしよーかなぁ。一気に100点ももらっちったし。


【てか100点ごとなんすね?それってガン【余計な事を考えずに早く次を決めなさい】】


 はいはい。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ