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82.裏社会を仕切る連中

「はー、予想以上に数が多かったけど……なんとか全員撃退できたわね」

「疲れた……」


 腕や顔についた返り血を川の水で洗い流しながら、エスティナが息を吐くその横ではフェリシテが率直な感想を口に出していた。

 山賊連中から話を聞いたところによれば、この山は先ほどの湖が伝説の青いドラゴンの棲み家になっていたことから観光スポットとして、毎年多くの観光客が訪れるのだという。

 その観光客を狙って、今のようにとんでもない言いがかりをつけて持ち物や服など全てをむしり取っていたのだという。

 だが、今回はそのトラップを仕掛けた相手が悪かった。

 ただでさえ精霊のアレクシアには敵わないのに、これまでの旅路や今までの経験で戦いに慣れてきている人間たちが相手だったことから、ものの十五分ほどで全てカタがついてしまった。

 持ち物を出すから勘弁してくれと言われて、ほぼ強引に受け取ることになった山賊たちの所持金や矢などの消耗品を持って、リュディガーたちは二隻の小舟で川を下り始めた。


「はー、今ごろヴィルトディンはどうなっちゃっているのかしら?」

「もちろん騒ぎになっているでしょうね。でも、もしかしたらさっきの転移ポイントで待っていれば傭兵たちや将軍たちとまた合流できたのかも?」


 転移ポイントがああやって造られたとなれば、かの青いドラゴンは自由に行き来できるようにしていたのかもしれない。

 しかしそのフェリシテの考察に対して、唯一メンバーの中で舟に乗らずに宙を浮きながら移動しているアレクシアは、魔力の観点からこう考える。


『もしかすると、わらわがあそこにいたからかもしれない』

「なぜそう思うの?」

『あの地底湖は恐らく、魔力を転移のエネルギーとして動かすのだろう。わらわは人間とは違って多量の魔力を体内に有しているから、その魔力が原因であの転移ポイントが起動したのかもしれない』


 だとしたら、自分たちはまたしても悪いタイミングで転移をしてしまったのかもしれない。

 騒ぎを起こしてそのまま、しかもよりによって一国の将軍たちの目の前でこうして別の大陸にやってきてしまったので、自分たちに対してよからぬレッテルを貼られているかもしれない。

 しかし、今の状況ではそんなことを知ろうにも知ることができないので、黙って川下りを続けるしかない。

 そんな中で、フェリシテが話題を切り替えてこの話に入る。


「そういえばさ、さっきの山賊たちからもらった物の中にこんなメモが入ってたんだけど」

「どんなの?」

「ジャレティって人間に、自分たちの活動の礼金を支払う日が近づいているって内容ね」

「ジャレティ……?」


 なんだか聞き覚えのある名前だが、ここまでいろいろなことがあったためすぐには思い出せない一行。

 そして、その名前に最初に行き着いたのはトリスだった。


「あ、それってバーレンの裏社会を牛耳っているって人間の話じゃないかしら!?」

「……ああ、前に倒したあの男だな」


 イディリークで戦ったならず者の一人、それが確かジャレティという男だった。

 そしてそのジャレティの身辺について調べるのが、世界を旅する目的の一つになっていたはずだ。

 となれば、自分たちの転移は悪いタイミングでもあったしいいタイミングだったということにもなりそうである。


「でも、そうだとしたらバーレンを離れてなんでイディリークで活動なんかしてたんだ?」

「それはこれから調べてみないとわかりそうにないわね」


 アレクシアが撃破したワイバーン乗りのあの男が拠点としていたのはこのバーレンの裏社会らしいので、もしかしたら世界進出を考えてイディリークまでやってきていたのかもしれない。

 なんにしてもワイバーンを使って襲撃をかけてきている時点でよろしくはないことなので、リュディガーたちは人里を目指して川を下り続ける。

 もしかすると、この新たな大陸で新たな闇の装備品が見つかる可能性だってあるわけだ。

 そう考えてみると、エスティナからこんな質問がリュディガーに飛ぶ。


「でもさあ、闇の装備品を集めて回っているのはあのニルスって男とあなたの元の仲間たちだけじゃないってことになりそうよね?」

「そうかもな。裏社会で幅を利かせているような男がわざわざイディリークまでやってきたのはそれが理由かもしれないな」

「そもそも、あなたの先祖のルヴィバーがその闇の装備品を世界のいろいろな場所に隠したんでしょ? その闇の装備品ってそもそもなんなの?」


 自分が今こうして首から下げているペンダントもその一つなので、何が目的でその闇の装備品が生み出されたのか。そしてそれを世界各地にバラバラに隠したのは一体なぜなのか?

 何かしらの理由がなければ、そんな面倒くさいことはしないはずだと考察するエスティナからの質問だが、あいにくリュディガーはそれに満足に答えられるほど先祖に詳しいわけではなかった。

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