60.決着、廃村の戦い
その瞬間、四角い箱がボンッと音を立てて煙を噴き上げ始めた。
「うわっ!?」
『ぬん!!』
箱の爆発によって吹っ飛ばされたリュディガーだが、空中で待機していたアレクシアが彼を素早く受け止めて地上へとおろしてくれる。
そんな二人の目に映ったものは、ガガガ、ギギギと妙な音を立てながら動きが鈍くなっていく大型兵器の姿だった。
先ほどまでロングソードを振り回して廃村を破壊し、リュディガーたちを仕留めようとしていた大型兵器のあっけない最期である。
そしてとうとう動力が尽きたのか、グラリと後ろに重心がかかった大型兵器はそのまま背中から地面へと倒れてズシーンと地を揺らしたのである。
「はぁ、はぁ……何とかやったか……」
『……いや、まだ終わっていない!』
「ん!?」
まさかまたこのデカブツが立ち上がってくるのだろうかと、リュディガーは再度ソードレイピアを構える。
しかし、アレクシアのセリフの真意は別のところにあった。
彼女が見据えるその視線の先には、先ほど彼女を狙ってきていた弓使いと戦うエスティナの姿があったからだった。
「ぐふぅ!?」
エスティナはロングソードを武器に大型兵器と奮闘していた。だが、そんなエスティナの背中を物凄い衝撃が襲う。
後ろから来る気配に一瞬気がつくのが遅れた次の瞬間には、大きなその衝撃により地面にうつ伏せに倒れ込んだ。
手からロングソードも離れて遠くに転がっていってしまったが、何とか力を振り絞って起き上がろうとするエスティナ。
そんなエスティナの目の前に、自分のものとは違うロングソードの先端が見えた。
「はっ……!?」
見上げてみると、緑髪で細身の若い男がロングソードを持ってエスティナを見下ろしていた。その男にエスティナは見覚えはないものの、只者でないことはまとう雰囲気からわかった。
「ゆっくりとそのまま立つんだ」
その声に従ってエスティナはゆっくりと立ち上がる。
「あなたは誰なのかしら?」
「答える必要はない。そのままゆっくりと手をあげて、その廃屋の中に入るんだ」
ロングソードを振ってエスティナに指示する男だが、彼女はとっさにロングソードを右腕で押し退けつつ、男の股間を全力で蹴り上げる。
「てやぁ!」
「ぐおおおお……な、何を……!!」
次の瞬間、その男の表情が苦痛にゆがんだ。
やはり急所攻撃は効いていたようで、思わず前屈みになった男の顔面に今度は頭突きを食らわせる。
エスティナは衝撃でよろけた男に向かって走り、彼に跳び蹴りを入れて後ろの廃屋の壁に背中から叩きつける。
男はその衝撃でロングソードを手から落としてしまったのだが、もちろんこれで終わりではなく、エスティナの戦いは続く。
まずは大型兵器の攻撃によって破壊された廃屋のレンガを両手にそれぞれ一個ずつ持ち、男の顔面に叩き付ける。
「ぐお、おがぁ!」
怯みながらも懸命にパンチを繰り出す男だが、レンガの衝撃によって大振りになってしまう。
それをエスティナはあっさりかわして、レンガの一つを投げつける。
「とりゃあ!」
「ぐわぁ!」
さらに男に向かってジャンプし、彼の頭にレンガを振り下ろす。
またもや怯んだ男だが、衝撃に耐えきれなくなったレンガが砕けてしまった。
エスティナは拳を構えて男へと走り寄り、パンチを二発連続で男の腹に入れ、続けて男の側頭部に右のハイキックを入れる。
が、やっぱり体格差もあるのだろう。
彼女のパワーでは余り効かないようで、お返しとばかりに男に前蹴りを食らってしまい、エスティナは再び地面に倒れ込む。
それを見逃さず男はエスティナに駆け寄り、その身体を引っ張り上げて土の地面へとエスティナを投げ飛ばす。
「ぐえあ!」
そのまま走り寄ってきた男を視界に捉えたエスティナは、次の攻撃を繰り出される前に男の足を自分の足で蹴りつけて転倒させる。
そうすると男の顔面が自分の足の前に来たので、もちろんその顔面にも右足で蹴りを入れる。
先に立ち上がったエスティナは、立ち上がりかけている男に対してハイキックを繰り出して怯ませ、続けて男に飛び付きつつ頭に膝蹴りを叩き込んだ。
「おりゃあ!」
「ぐぇう!」
エスティナは、地面に倒れた男の頭に思いっ切り前蹴り。
さらに立ち上がろうとする男の頭に何度も蹴りを入れ、最後に男の頭を全力で踏みつぶした。
「あが……」
(お、終わった……)
女の底力を思い知ったかと心の中で呟きながら、エスティナは駆け寄ってくる仲間たちの足音に気が付いた。




