表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

54/432

53.家宅捜索

 しかし、その伝説の傭兵は行方不明。

 しかも闇の装備品を手に入れてお尋ね者になってしまっている。となればリュディガーたちが向かう先はまず一つしかなかった。


「その人の家に行ってみない? 何か手掛かりがつかめるかも」

『ふむ……それは一理あるな』


 まずはそのロサヴェンの家を訪ねてみればきっと何かわかるかもしれない。

 そう考えてその町で食料を買い込み、馬が手に入らなかったので徒歩で王都クリストールへと向かうことになった一行だったが、その人捜しはそう簡単にはいかなかった。

 なぜなら、エスティナの提案と同じことを考えている人間は他にもいたからである。


「……これは……」

「ああ、完全に荒らされているわね」


 クリストールまで結構な距離を歩いてきたのに、やっとたどり着いたそのロサヴェンの家は廃墟といってもいいぐらいに荒らされていたのだ。

 窓は割られ、ドアは開けっ放し。内部の家具もめちゃくちゃに壊され、まるで暴風がこの家の中を駆け巡ったかのようになっていた。

 とどめに外壁には「傭兵の恥」とまで落書きがされている。やはり闇の装備品を持って行方が知れなくなってしまったというのが、他の傭兵たちや彼を慕っていた人間たちからの反感を買ってしまったのだろうか?

 もうまともな手掛かりがここで見つかるとは思えないが、とりあえず家の中を探索してみることにする。


「そもそも、何をどうしたらここまでこんなに荒らされるんだ?」

「それなりの理由があっての話よね。闇の装備品関係でこうなったのなら、やっぱりそれなりに価値があるものだから泥棒が入ったとか?」

『それも考えられるな』


 しかし、いくら探しても特に何も発見することができなかったので、一行は最初に話をしていた女二人から聞いた話である、西の方に向かったという情報を頼りにその傭兵を探すことに。


『ここから西の方に向かうと小さな集落がある。そこでまずは情報を集めてみるか』

「わかった」


 クリストールを出て、そこから再び歩き続けることおよそ二時間。

 リュディガーたちはアレクシアが言っていた、その小さな集落にたどり着いた。

 小さな集落ではあるがもちろん住人はいるので、その住人たちから情報を集めてみると、やはりここにロサヴェンが立ち寄ったらしいとの情報が手に入った。


「ああ、その人なら五日前にここに来たよ。宿を探していたらしいからこの村の宿泊所を案内してやったよ」

「そうですか! ちなみにその人はその宿泊所に行った後、どこに向かったかわかりますか?」


 だが、男もそこまではわからないらしいらしくフェリシテに対して首を横に振った。


「さあなあ……俺はその後に自分の家の裏にある畑を耕しに行ったから知らないよ。宿泊所に行って聞いてみたらどうだ?」

「そうですね。どうもありがとうございます」


 一方で、トリスも村人の女からロサヴェンに関する話を聞いていた。


「その人だったら私のお店に色々と食料を買い込みに来ていたわよ」

「本当ですか?」

「うん。私の店は見ての通りこの食料品店だけど、かなりたくさん買い込んでいたし有名な傭兵さんだったからよく覚えているわ。でも、あの買い込んだ量だと一人旅には多すぎるような気がするのよねえ……」

「そんなに買い込んだの?」


 思わずそう聞いてしまうトリスに対し、店主の中年の女は真顔で頷いた。


「ええ。運ぶための馬車を出そうかって提案したんだけど、それを断って店を出て行っちゃったのよ。一人で持ち運べるかどうかも怪しい感じだったから、もしかしたら一人じゃなかったかもね。その日はそれぐらいその人が買い込んでくれたおかげで、早めに店じまいすることになったからしばらくは忘れられないわね」


 そして、エスティナは村の警備兵に話を聞いていた。

 この警備兵は王国の騎士団とは何の関係もない、村人で結成された自警団の中からこの村の警備を担当している男らしいのだが、彼もロサヴェンのことは目にしていたらしい。


「そうなんですか。じゃあ、そのロサヴェンって人がどちらに向かったかは知っていますか?」

「ええ、知っていますよ。あの方でしたら宿泊所で宿泊した後、部下の方を連れてシャスドレイの森へと向かいました。あの方面でしたら山を越えればセーメインの町に着きますからね。そちらに向かったと思いますよ」

「え……部下?」


 警備兵の報告にエスティナは耳を疑う。

 情報によればロサヴェンは一人で失踪したという話だったはずだが、部下を連れているとなれば話はまた変わって来る。


「その部下ってどんな人間だったんです?」

「ええっと……緑髪の若い男の方でしたよ。お二人の様子を見た限りではかなり親しげに話している様子でしたので、それなりに長い付き合いのある方なんじゃないですかね?」

「そう、か……。知っている情報はそれだけですか?」

「ええ」

「そう、どうもありがとうございます」


 ここに来て明らかになった、部下らしき男の存在。

 三人はそれぞれ手に入れた情報を持ち寄って、同じく情報を集めて回っていたリュディガーとアレクシアにも情報を共有する。


「やっぱりここに立ち寄ったみたいね」

『そうか。とりあえずその町へのルートは一本道だし、そこを通ったのは間違いなさそうだ。わらわたちもさっそく向かおう』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ