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50.言いがかり

「お前たち、全員動くな!!」

「っ!?」


 突然、どやどやと洞窟の最深部になだれ込んできた騎士団員たち。

 それも全員が手に武器を構えたり、すぐにでも魔術を発動できるように臨戦態勢の状態である。

 明らかにただ事ではない雰囲気と、その溢れ出る殺気の矛先が自分たちの方に向けられていることに、リュディガーたちは驚きを隠せない。

 しかし、何があったのかを説明してもらうのが何よりも先だろうと考えたリュディガーは、なるべく落ち着いて対応するように心がける。


「おい、一体どうしたんだ? 何があったんだ?」


 しかし次の瞬間、思わぬ人物が姿を見せたことによってリュディガーたちは落ち着いていられない事態に陥ってしまう。


「一緒に城まで戻ってきてもらう。そこでいろいろと話を聞かせてもらわなければならないな」

「な……は?」

「えっ、ベリウン騎士団長!?」


 なんと、今はアクティルの城にいるはずのジアルがリュディガーたちの目の前に現れた。

 なぜ彼がここに? そもそもどうやってここまできた?

 それを問う前に、ジアルが全員に向けて愛用の槍の先端を向けてきた。

 しかし、リュディガーたちにはもちろんそういうことをされるような覚えはなかったので、ここは同じ騎士団の関係者としてフェリシテが一行の前に歩み出て対話を始める。


「いや、あの……ちょっと待ってください団長。私たちが何かしましたか?」

「……正直言うとまだ半信半疑なんだが、そこのフェリシテに用があって俺はここまでワイバーンで駆けつけてきた」

「私?」


 いきなり自分の名前が出てきたことに驚くエスティナに対し、ジアルは懐から一枚の紙を取り出した。


「そうだ。そこのエスティナと、この前の帝都襲撃事件を起こした首謀者にはどうやらつながりがあったらしいとの話が、とある情報提供者によってもたらされた」

「はぁ!? なんで私が帝都を襲わなきゃいけないのよ!? そもそも私はその連中らしき怪しい人間たちに追い掛け回された立場だったんだけど!」


 エスティナには全く心当たりがないが、ジアルが取り出した一枚の紙に記載されている内容を読み上げ始める。


「その情報提供者の仲間の傭兵たちに声をかけて、お前の動向を調べさせた報告がいくつもこの紙に記載されているんだ。このイディリーク帝国だけではなく、隣のアーエリヴァ帝国や海を越えた先の国々でもいろいろと、自分が闇の装備品を集めるために世界中を回っているとな」

「ちょ、ちょっと待ってよ。闇の装備品なんて私は知らないわ!」


 確かにこの首からぶら下げているのはその一つだけど、これは本当に他人からもらったものなのでそれ以外のことは知らない、と何度も主張するエスティナ。

 しかし、それに構わずジアルは続ける。


「そしてその情報があるとされるこのイディリーク帝国にやってきたお前は、そこに仲間が攻撃を仕掛けて国民の目をそらしている間に、帝国の中で調査されていないような遺跡などを荒らそうと動いていたようだとの報告もされた。これが本当なら、このまま国外に出すわけにはいかない」

「いやいやいやいや、なんで私がそんなことしなきゃいけないのよ!?」

「ここまで精密な情報であり、他国の公的な書類で報告されたとなれば疑いの余地はないだろうな」


 全然意味が分からないので必死に否定するエスティナだが、その情報提供者から渡された資料というのは実にしっかりと作られていた。

 一般人であれば手に入らないような他国の国立調査機関が発行する書類で作成され、それを証明する捺印もされていたために、エスティナが口でいくら否定してもどうしようもない状況に陥っている。

 だとすれば、もうこうするしかない。


『……おい、そなたたちは全員わらわの近くに寄れ』

「えっ?」

『この状況では何を言っても無駄だ。いったん違う国へ逃げるぞ』

「逃げるってどこへ……?」


 小声でボソボソと疑問を投げかけるトリスに対し、アレクシアは自分の中に溜めていた魔力を一気に開放し始める。

 するとその瞬間、洞窟内に強い風が吹き荒れ始めた!


「うわっ!? くっ!?」

『わらわに掴まれ!』

「うおああああっ!?」


 その暴風はジアルを始め、居並ぶ騎士団員たちを全員バタバタとなぎ倒していく。

 そして風の次は光が生まれ、その光に包まれたリュディガーたちの姿が掻き消えていく。

 ここまで来て逃がしてなるものかと何とか立ち上がって動き出すジアルだったが、すんでのところで光が収まってしまい、後には何も残っていなかった。


「に、逃げられた……!? 転移の魔術か!!」


 だとしたら一刻も早く、あの精霊と人間たちの居場所意を突き止めなければならない。

 ジアルは懐から魔晶石を取り出し、魔術通話によって帝都へと連絡を入れ始めた。

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