41.修羅場
「……危ないっ!」
「魔物か!」
そう、数が減ったとはいえまだまだ魔物もかなり多く出てくる。
だが、その全てをいちいち相手にしていたらキリがない。
しかも武器も防具も耐久力があることを考えると、その魔物との戦いで酷使した結果、いざという時に壊れてしまうようなことになったらまさに命取りだ。
なのでなるべく用のない魔物との戦いは避けるべく、魔物が出ていない時は普通のペースで進み、魔物が出たらペースを上げて突っ切ってしまう作戦だ。
これからだんだんと夜になるに従って魔物も活発化する時間になるので、その場合はキャンプを張ってサッサと身体を休めたい。
今のように魔物が目の前に現れたとわかれば、その魔物が討伐対象のターゲットかどうか馬の上から確認した上で、そうでなければ馬から降りずに一気に突っ切る。
しかし、今回はそうはいかなかった。
『わらわに任せろ!』
アレクシアが魔術を使って、林の木々の根を動かして魔物たちを次々に絡めとっていく。
行く手を阻む魔物集団の中には討伐依頼のターゲットがいないらしいのだが、先ほど追い払われてしまった黒ずくめの集団の野営地のすぐ近くなので、騒いで見つかったら厄介だ。
なので無駄な戦いを避けることで、武器や防具だけではなく自分の面倒ごとも回避するのが大事なのだ。
『さて、これでよしと。ここから先はそなたたちに任せるぞ』
もう日も暮れ、自分たちもこの黒ずくめの集団を調べた上で急いでキャンプの準備をしなければと考え始めた一行だったが、そこでまるで見計らったかのようなタイミングでまたもや魔物の集団が現れたのだ!
「なっ!?」
「またぁ!?」
魔物の中には知能が高いものもおり、そうした魔物が指揮を執ってこうして待ち伏せをしたり集団で連係プレーをしたりする。
今回はこの林の中で待ち伏せを食らってしまったらしい。
恐らく、このところ帝国騎士団や警備隊によって仲間が討伐されていることを知った魔物たちが独自の情報網を使い、ここで待ち伏せを仕掛けたのだろうと推測する一行。
そしてその言葉が通じないリュディガーたちに対して、容赦なく襲い掛かって来る魔物達。
魔物の数は全部で十匹ほど。
大きいのから小さいのまで様々な大きさとタイプの魔物軍団で、一匹の攻撃の隙をカバーするようにして別の一匹が攻撃をしてくるのでかなり厄介である。
「おらああっ!」
自分に飛びかかってきた大トカゲの魔物を、エスティナが空中で叩き切る形でロングソードを振り下ろす。
その横から蛇の魔物がこっそりとフェリシテに噛みつこうとしていたので、リュディガーが足で踏んで蛇を止めてからソードレイピアで地面ごとその身体に穴を開ける。
黒ずくめの集団の様子を気にする余裕はなく、リュディガーたちは魔物たちと同じくお互いの隙をカバーするスタイルで抵抗を続ける。
(1匹1匹はそんなに大した実力でもないが、これだけ数が多いと厄介だな!!)
個々は小さな力でも、数が集まればそれはもう立派な戦力だ。
それでもアレクシアにも手伝ってもらって抵抗を続け、確実に魔物の数を減らして行くと、ようやく集団のリーダーらしき魔物がリュディガーたちの後ろから姿を現した。
その魔物を見た瞬間、リュディガーたちの表情が変わった。
「……!」
「お、大きい!」
現れたのはオオカミ。しかし、今まで倒してきたものと違って明らかに三倍、四倍、いや五倍ほどの大きさがある。
まさかここに来て、こんな大きな魔物に出会ってしまうとは。
黒ずくめの集団の様子を探るだけのはずが、突然現れた魔物の集団と戦った上でまだこのオオカミを相手にしなければならないのは骨が折れる。
リュディガーたちがそれぞれ武器を構えるのに呼応して、オオカミが唸り声と共に飛びかかってきた。
しかし、こういう時に限って悪いことは続くものである。
この一連のやり取りによって、野営地の見張りで巡回していた黒ずくめの集団に気づかれてしまった。
「なっ、おい貴様たち、何をしている!?」
「くっ、まずいわね! こうなったらやるしかないわ!」
「ああ……面倒なことになったわね……」
決意を固めるエスティナと、額に手を当てて頭を横に振るトリス。
先ほどリュディガーたちを追い出した黒ずくめの男に見つかってしまったので、ますます修羅場が形成されていく。
この状況になってしまったらもう強行突破しかないと考えていたのだが、実はこの後ろから襲いかかってきたオオカミにはある秘密があったのだ。




