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406.上階の戦い

 そのころ、五十階にある展望台から突入したリュディガーたちの部隊は六十階から上に上にと上っていたのだが、そんな一行の進軍を異世界の種族が邪魔してなかなか進めない状況が続いていた。


「うおりゃあああっ!!」

「くっ!!」


 六十七階にて、バルドは狼の頭部と足と尻尾を持っている男の獣人を相手に戦っていた。

 当然だが、バルドはこんな狼の頭を持っている人間なんて初めて目にするし戦うのだって初めてだ。

 そして自分のロングバトルアックスの攻撃範囲に入らないように、すばしっこい動きでかく乱しながら戦いを繰り広げる狼男にバルドはだんだんとイライラが募ってくる。


(くっそ……ちょこまかと動き回りやがって!!)


 狭い場所に誘い込んで戦おうと考えたが、それは相手もわかっているらしく誘いには乗ってくれないようだ。

 そしてバルドが大苦戦している一方で、エルガーやジェバーといった実力者たちもまた獣人たちを相手にして苦戦していた。


(翼を持っている人間……鳥人か!?)


 見たままの名前をつけてみたエルガーのその相手は、背中に翼を生やした頭部がワシの女の人間であった。

 アレクシアやドラゴンたちと同じく自由自在に空を飛び回れるだけにとどまらず、空中から弓矢で狙いを定めてくるのでロングソードを主力武器として戦うエルガーは非常に分が悪い状況だった。

 もっと言ってしまえば、倒した敵から奪った弓矢を使って狙撃しようとしても翼を使ってやすやすとかわされてしまう。


(バカな……魔術が効かない!?)


 一方のジェバーは、無魔力生物でもない相手に自分の魔術がことごとく無効化されている現実を受け止めきれないでいた。

 その相手とはゾウの頭部と足を持っている大柄な男の獣人だった。

 魔力を存分に感じるため、自分の魔術が通じる前提で戦いを繰り広げていたジェバーだったが、なんだか様子がおかしいのだ。


「ぶるああああっ!!」

「うわっ!!」


 手に持った棍棒を振り回して力任せに戦うゾウの獣人を相手にするジェバーは、一瞬の隙を突かれて思いっきり左肩を殴られる。

 それだけでも肩に激痛が走ってとんでもないのに、ゾウ獣人は自分の長い鼻を駆使してジェバーの右足を絡め取り、これまた力任せに振り回す。


「わあああ……ごはっ!?」


 天井が高い何かの研究室のような場所でテーブルや椅子がそこら中に転がっているだだっ広いこの部屋の、石造りの壁に背中から全力で叩きつけられたジェバーは、息が一瞬止まった感覚に襲われてしまった。

 魔術が効くとか効かないとかもそうなのだが、根本的にこういう力任せで押してくるような相手は昔から苦手だったので、最初からどうしても及び腰になってしまっていたのも敗因の一つだった。

 無様に地面へと転がって、立ち上がれないほどの激痛に悩まされているジェバーに向かってのっしのっしと重さを感じる足音をさせて近づきながら、右手に持った棍棒をとどめとばかりに大きく振りかぶるゾウ獣人。


(ここまでか……!!)


 かつてイディリークに刃向かったしっぺ返しがここできたのかと思いつつ、何とかそれでも立ちあがろうとするジェバー。

 だが、彼が両手と両足に力を入れて踏ん張っていたその時、ドスッという何かが何かに突き刺さる音が間近に聞こえてきた。


『……おい、しっかりしろ』

「す……すみません、助かりました!!」


 ゾウ獣人を後ろからそっと近づいて倒したのは、人間の姿では二刀流のレイピアを使いこなすタリヴァルだったのだ。

 しかし、彼もどうにか間に合っただけでありこの獣人が溢れている状況には頭を悩ませているらしい。


『さすがに我も獣人とやらと戦ったことはないが、少し戦っただけでもわかる。これは思った以上に手強い連中ばかりだ』

「やけに戦闘慣れしている感じですしね」


 自分の負った傷を回復魔術で治しながら、すでに事切れた肉の塊と化しているゾウ獣人を見下ろして率直な感想を述べるジェバー。

 そんな彼に対して、タリヴァルは新しく見つけた紙の束の資料を差し出した。


「これは?」

『どうやらこの獣人たちの何割かは、特殊な配合をしてある薬を飲んで魔術を無効化しているらしい。何が書いてあるのかは異世界の言語だからさっぱりわからんが、絵も色々描いてあってそれで何とか内容を読み取ったんだ』


 確かにその資料は先ほどの資料と違って、訳のわからない言語で書かれているためジェバーは内容がわからない。

 しかし、絵だけに注目していけばその内容がタリヴァルの言う通りなんとなくわかってきた。


「ふむふむ、これは恐らく薬の作り方が書かれていますね。私が戦っているこの場所も、その薬を作り出すための場所なんでしょう」

『そうだな。棚に椅子にテーブルに、それから色々な器具も散乱しているのを見ると、無関係には思えない』


 何にしても、この事実を早く他のメンバーにも伝えなければならないので、ジェバーとタリヴァルは死体だけになったその六十七階の部屋を後にして他のメンバーを捜しに向かった。

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