404.荒れ果てた地下の戦い
地下へと降りていくアレクシアたちの部隊は、ドラゴンたちに言われた通りやたらと横に広い地下二階を散開して徐々に制圧していく。
しかし、そのまま進んでいた一行の中でトリスが非常に恐ろしい記述のある書類を発見してしまった。
「え……ちょっと、これって!?」
「どうした?」
「ロックスパイダーの巣を作る計画って書いてあるんだけど……ロックスパイダーって「あの」ロックスパイダーよね!?」
一緒に書類を見始めたデレクも、まさかのその名前に目を見開く。
「お……おいこりゃあまずいんじゃないか?」
「そうよね!? とにかく全員に知らせましょう!!」
魔術通信を使ってその恐ろしい計画を知らせる二人によって、この先の地下三階から先の階層に何があるのかを知った地下制圧部隊は、地下二階を制圧し終えて合流した後にロックスパイダーたちの巣へとやってきていた。
「ロックスパイダーといえばもともとはかなりランクが高い魔物だが、ニルスの考えることだからそこから強化されたものがいてもおかしくないだろうな」
「そうですね。もうそこら中に蜘蛛の巣が張ってますから動きを制限されないように気をつけていきましょう」
岩のように硬い皮膚を持っている蜘蛛ということでそんな名前がついている魔物、ロックスパイダーの巣へと足を踏み入れた一行の目の前に、早速小さめのロックスパイダーがカサカサと音を立てて襲い掛かってきた。
『某たちの城の中を我が物顔で這い回るのはやめてもらおうか!!』
自分だって一応剣技を習ってきているので、風の魔力を最大限にまで纏わせながらセルフォンは横なぎにロングソードを振る。
その瞬間、横に振り抜かれたロングソードの刃の軌跡がそのまま衝撃波となって敵に飛んで行った。
いや、それだけならまだ被害は軽くて済んだ。
セルフォンの一振りから放たれた衝撃波は、今まで見てきた彼の攻撃の威力の中でもっとも大きなものだったらしく、まずは目の前に寄ってきたロックスパイダーを一撃で切断。
さらにそのロックスパイダーの身体の素材と同じ、岩の壁をガリガリと削り取ってそこにへばりついているほかのロックスパイダーたちをも、一撃で倒してしまった。
「……え?」
「す、すごい威力……やっぱりこれがドラゴンの力なのね!?」
「ドラゴンの力がとんでもないのは知っていたが、まさかここまでなるとは思わなかった……」
ラシェンもエスティナもジアルも呆然とするしかない。
カサカサと聞こえてきていた足音はすべて消え去り、代わりに妙な色と臭いのする体液をまき散らしたロックスパイダーたちの死骸が、洞窟内のいたるところに転がっている。
何かの大技や必殺技とかならまだしも、ただの一振りでここまでの威力を発揮する技を見るのは初めてのような気がする一行。
「す、すげえ……すげえぞおおおおおっ!!」
これだったらこの先も楽勝だぜ。
そう確信したラシェンは他のメンバーたちとともにさらに奥へと進み、立ちはだかるロックスパイダーたちを縦横無尽に暴れまわって斬り刻んでいく。
その彼の姿を見た他のメンバーも奮闘するが、ここで一番活躍しているのはセルフォンだった。
縦に振れば、攻撃範囲は狭いが横なぎよりもさらに強い衝撃波が風を切って飛んでいく。
斜めに振れば横薙ぎと縦斬りの中間といった攻撃力と範囲を誇る。
土属性の魔物であるロックスパイダーに対しての効果は、風属性が一番それを発揮するのだ。
「うひゃあ、上で見つけたあの書類で数が多いって話は書いていたけど予想以上だな。確かにこりゃあ倒しても倒してもキリがねえぞ!」
「本当ね。いくら私たちといっても数の暴力で来られたら限度があるわね」
そう、どこから湧いてくるのかはわからないがロックスパイダーたちの増援が止まらないのだ。
グラルバルトいわく、この地下で自分たちドラゴンの攻撃魔術を最大威力で使えば、パーティーメンバーを巻き込むだけではなく階層そのものが崩落してしまう可能性がある。
セルフォンの攻撃による岩壁を削る動きも、余り多くの場所でやるとまずいかもしれない。
そう考えて、なるべくロックスパイダーたちを引き付けてから一撃で倒せるように工夫している。
そしてアレクシアも魔術を使って戦いを繰り広げる中で、あることを察していた。
『この多さは尋常ではない。恐らく絶対にこの増殖の原因があるはずだ。それさえ倒してしまえばこの増殖も止まるかもしれない』
無魔力生物の生成装置みたいなものがあるのか、はたまた別の存在がいるのか。
そう考えつつアレクシアたちはこの階層の内部を進んでいき、その答えを見つけることに成功した。




