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383.予期せぬ人物と予期せぬ行動

 今度は一体何が出てくるのか?

 そう思いつつ身構える一行の目の前で、その開いた上部の蓋の中から姿を見せたのは、何と一人の人間だった。


「えっ……?」

「おいちょっと待て、あの男って確か……」

『んん?』


 三者三様の反応を見せるその人物は、金と黒の二色に髪の色を分けている中年の男だった。

 上半身しか見えていない今でもわかるぐらいに鎧で武装しているこの男が、この四足歩行の凶暴な兵器を操っていた男らしい。

 そしてその人物はグルリとこの正方形の区画を見渡して、ふむとうなずいてから口を開いた。


「ふん、精霊だろうが騎士団長だろうがこれには手も足もでまい?」

「あんた……確か旧ラーフィティアの国王のヴァンリドだな!? ここに来るまでにいないと思ったらこんな所に……!!」


 デレクが驚きの声を上げるのも無理はなかった。

 まさかこんな場所でこんな凶暴な兵器を操って待ち構えていたなんて。

 すでに彼の部下であるパラディン部隊は全滅している上に、手を組んでいたというリュディガーの所属していた傭兵パーティーの傭兵たちも全員倒されている。

 つまり残っているリーダー格の人間たちは彼とニルスだけになるのだが、この男を倒さなければニルスには辿り着けないだろうと判断するアレクシアたち。


『それは果たしてどうだろうか!?』

「おっと……」


 やってみなければわからないと言わんばかりに、特大のエネルギーボールをヴァンリドに向かって投げつけるアレクシア。

 しかしヴァンリドは間一髪のところで蓋を閉めて防御し、再び四足歩行兵器を動かし始める。

 あの特大の砲口から撃ち出される魔力弾と、小さくて細かい魔力弾を撃ち出せる砲口の二つが脅威になる。

 しかも背中の方には金属製の長くて太い触手が二本ついている上に、重厚さを感じさせない素早い動きとかなりの強敵である。


(それでも……この国王の奴を倒さなければまた意味のない戦いが繰り返されることになってしまう!!)


 そんなことはさせないと決意を固めたデレクは、どうにかしてこの四足歩行の兵器を止めるべく、その四本の脚のうちのどれかを狙うことにする。

 四足歩行ゆえに、うまくやればあの兵器の下へと潜り込んで一気に決めることができるかも知れない。

 しかし、そのためにはあの脚を叩き斬れるだけの力がないといけないのだが、自分一人ではそんな力は出せそうになかった。

 そこで目をつけたのがアレクシアだった。


「おいアレクシア、俺に魔力を注いでくれ!!」

『何をするつもりだ?』

「あいつの脚をぶった斬る。そうすればまともに動けなくなるはずだからな!!」


 そうすることによって、今の自分ができる最高の戦果をあげることができるだろう。

 そう考えたデレクだが、敵は更に上の戦術を用意していたことをこの後に知ることとなる。

 アレクシアはこの作戦がうまくいくかどうかはわからないものの、とりあえずやってもらえるとなれば素直にデレクの使っているロングソードに魔力を充填する以外に道はなかった。


「行くぞ、あいつをここで倒すんだ!!」

「おうっ!!」


 ラシェンも一緒に魔力を注入してもらい、そこから一気に攻め立てる。

 こちらにはアレクシアの魔術もあるのだから。

 そう考えていたデレクとラシェンだったが、そんな二人の目の前で四足歩行の兵器は身を低く屈めながら後ろへと下がっていく。

 まさか勢いをつけて突進してくるつもりなのだろうか? いや、そうに違いない。

 だったらその前に叩っ斬ってやる……と考える二人だったが、ヴァンリドは彼らが全く予想していなかった行動を起こす。


「な……んだとぉ!?」

「うおっ!?」


 二人の人間と一人の精霊が見た光景。

 それは身体の下部に取り付けられたもう一つの魔力噴射口から、勢いよく魔力を吹き出してその大柄な体躯を宙に浮かせ、上の階へと移動していく兵器の姿だった……。


『くっ……』

「くそっ、あんな方法があったなんて!!」


 こんなことなら、さっさとあのデカブツを破壊しておくべきだった。

 そう思ってももう遅いので、とりあえずアレクシアが空中を通って追いかけることにし、残りの二人は下に援軍を求めに向かうことにする。


【まさか噴射装置がもう一つあったとはな。しかしあれなら背中のもので加速できるし、下のもので空中移動もできる。なかなか考えたものだ】


 空中に逃げられてしまうと、弓矢か魔術かドラゴンか、もしくは空を飛べる自分かでしか対抗手段がない。

 だがこの要塞は意外と部屋の横幅は狭いらしく、ドラゴンが変身すればそれだけで窮屈になるだけでなく、絶好の的になってしまうのは目に見えている。

 だったらここは自分がどうにかするしかないか……とアレクシアはやれやれと首を振りながら、上に見える兵器を追いかけて自分も上へと上がっていった。

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