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368.死闘(南西編)

 何とかシロクマたちを倒したアレクシアたちだったが、その後にまだ戦いが残っていた。

 というのも、どうやら今の自分たちがいるこの場所の真の主はあのアレクシアが倒した巨大シロクマではなく、その後にのそのそとゆっくり出てきた巨大な雪狼だった。

 しかもその雪狼は一匹ではなくどうやらつがいのようで二匹いることから、先ほどの巨大シロクマよりも苦戦しそうなのは目に見えている。

 とどめに、その巨大シロクマを倒したことで増援は出てこなくなったもののシロクマ自体はまだ何匹も残っているので、そちらの相手もしなければならなかった。


「くっそ、まだあんなのが残ってたのかよ!!」

『こうなっちゃったら仕方ないね。僕だけであれの片方を相手にするから、もう片方は君たちに任せるよ。シロクマたちは無視してとにかくあの二匹を倒すことに集中するんだ!!』

『わかった。ではカリフォン、いくぞ!』


 二匹いっぺんに襲いかかって来られたら不利な状況になるのは間違いない。

 なのでここは戦力を分散し、相手の戦力も分散させる作戦に出る。


『僕に敵うとでも思ってるの?』


 こざかしいという気持ちを隠しもせず、シュヴィリスは巨大な雪狼の片方を相手にする。

 地上の機動力では同じぐらいだが、シュヴィリスには翼があって空を飛ぶことができる。

 それもあって、一気に向かってきた雪狼の突進攻撃を回避してから、そのまま後ろに回り込んだ青いドラゴンは、自分の頭を使って雪狼の尻に頭突きをお見舞いする。


「ギャンッ!!」

『それっ!』

「ギャウッ!?」


 続けて雪狼の横っ腹に体当たりをかましたシュヴィリスは、派手に横倒しになったその雪狼の身体の上にのしかかり、四つの足を使って爪を食い込ませつつ雪狼を空に向かって持ち上げた。


『くっ、あーっ……重い!!』


 懸命に翼を動かし、シュヴィリスは少しずつ上空へと上昇していく。

 そのままキョロキョロと周囲を見渡し、お目当ての場所を見つけたシュヴィリスは、雪狼を落とさないようにしながら一気に身体の力を抜いた。


『ふぅ……』

「グウウウッ……ガッ!?」


 上空から一気に真下に下降していった所にあったのは、雪を被っている大きな岩。

 そのまま雪のある場所に叩きつけてもダメージは少ない。

 となれば、どこか硬い場所に叩きつけてやればそれなりのダメージを与えられることができると踏んだシュヴィリスは、雪狼をその岩へと真下に向かって叩きつけた。

 ドゴンと爆音のような派手な音を立てて、雪狼のつがいの一匹が叩きつけられて絶命する。

 これで脅威の一つは去ったわけだが、そこに今度はアレクシアからの救援要請が入る。


『シュヴィリス、助けてくれっ!!』

『えっ?』

『雪狼には魔術が効かん!! 無魔力生物だからわらわたちではとても対応しきれん!!』


 シュヴィリスは自分で雪狼を持ち上げて叩きつけただけなので気づいていなかったのだが、この雪狼のつがいも無魔力生物だったらしい。

 今は必死にカリフォンが相手しているが、彼一人では絶対に無理な話であるのでアレクシアがシュヴィリスに助けを求めにきたという話だった。


『しょーがないなあ、もう……』


 絶命している方の雪狼はそのままに、シュヴィリスはもう一匹の雪狼の方に向かって翼を動かす

 そこには雪深い場所に突っ込まないようにしながら、必死に自分のロングソードで戦っているカリフォンの姿があった。

 これだけの大きな魔物を相手にして何とかなっている時点で、さすがは一国の騎士団で隊長を務めているだけの実力は持っているとわかるカリフォンだが、このままでは追い詰められてしまうので、まずはシュヴィリスが雪狼の死角から全速力で突進していく。


『ふんっ!!』

「ガアアッ!?」


 人間を相手にしていたら、いきなり横から強い衝撃を受けてなすすべなく地面を転がる雪狼のもう一匹。

 それもそのはずで、自分と同じぐらいの体格を持っているドラゴンに体当たりされれば吹っ飛ばされてしまうのも無理はない。

 さらにいえば自分の死角から何の予兆もなしにいきなりやられたのもあり、身構えることも何もできていなかった雪狼に向かい、シュヴィリスはもう一匹の雪狼と同じく四つの足で持ち上げて上空から叩きつけようとする。


『この……大人しくしてよねっ!!』

「グガッ、ギャウッ、ガアアアアアッ!!」


 しかし雪狼は大暴れして身をよじり、なかなかシュヴィリスに自分の身体を掴ませようとしない。

 だったら抵抗できないぐらいのダメージを与えてしまえばいいということで、雪狼の前方に回り込んだカリフォンが自慢のロングソードを使い、手が届く距離まで近づいた雪狼の左目にそのロングソードを突き刺した。

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