363.潜入(西編)
アレクシアが巨大シロクマと死闘を繰り広げているころ、フェリシテとジアルとラシェンはこの空中大陸に存在している無数の対空砲台の一つを発見して、その破壊をするべく動き出していた。
しかし今の状況では、その対空砲台に対してなかなか近づけなさそうだと察する一行。
『やはり大陸を一つ空中に造るだけのことはあるな。どう考えてもこの敵の多さには納得だ』
というのも敵の攻勢がかなり激しく、セルフォンが風属性の魔術で敵を蹴散らしても次から次へと湧き出てくるのだ。
どうにかしてこれらの元を絶たなければ、いつまで経っても前に進むことができない。
かといって先に進むためにはこの敵を倒さなければならないので、そのチグハグな状況に苛立ちを隠すことができない一行。
「大陸中のどこかにこの魔物たちの親玉か、巣みたいなものがあっても不思議ではない!!」
「そうでしょうね。とりあえず私たちは先に進むだけですよ!」
ジアルとフェリシテのイディリーク騎士団員たちは、それぞれ前衛と後衛に別れてしっかり役割分担ができている。
一方のラシェンは自分たちをここまで運んできてくれたセルフォンとともに、こちらもまた上手く役割分担をしながら進んでいた。
セルフォンが風の魔術で敵たちを蹴散らし、それで蹴散らしきれなかった敵たちをラシェンが倒していく。
『おい、そちらに行ったぞ!!』
「任せろ!!」
右翼騎士団の騎士団長を務めているだけあって、二刀流を巧みに駆使して戦うラシェン。
だが、その敵の攻勢がひと段落したところで彼があることに気がついた。
「あっ、おい……あそこ見てみろ!!」
『ん?』
ドラゴンの姿のセルフォンが、ラシェンの指差す方向に目を向けてみる。
そこには渓谷の崖の上から続いている森の中から、ワラワラと出てきている多数の魔物たち。
そしてその後ろに少しだけ見える黒い渦……。
今までは敵を倒すのに夢中になっていたこともあって、上の方から敵たちが出てきていることには気がついていた一行だったが、その奥にある黒い渦には木々に隠れていたこともあって気づかなかった。
そこで空を飛ぶことができるセルフォンが黒い渦の正体を確認しにかかるが、その黒い渦の近くまで近づいた時に思わぬ事態が起こった。
『この魔力は……ぬおっ!?』
「えっ!?」
渦に近づいたセルフォンが、何と一瞬でその渦の中に呑み込まれて消えてしまった。
そしてその渦の中からは今まで通り多数の魔物たちが出てきている。
その光景に唖然とするフェリシテたちだったが、最初にハッと我に返ったフェリシテが残りの団長二人の方を向いて叫んだ。
「ちょ……ちょっとセルフォンさんが!!」
「何が起こりやがった!?」
「俺たちもあの上の方に行って確かめなければならないが、魔物たちがどんどん出てきている以上それは危険だ!」
吸い込まれてしまったセルフォンが果たしてどうなってしまったのかは、三人ともすごく気になることである。
しかしこの魔物が次々にその渦の中から出てきている状況で確認しに行くのは、ジアルがいう通り確かに難しいことである。
そして無理にそこを突破して見に行ったとして、自分たちまでその渦に吸い込まれてしまった場合どうなるかわからない。
「かといってここでこのままジッとしているわけにもいかない。ここは敵を避けて強行突破といくぞ!!」
「わかりました!」
「うっしゃ、走れっ!!」
三人は全速力で、群がってくる敵たちを適当に相手にしながら走り続ける。
一体セルフォンの身に何が起こったのか。
まさかあの渦に吸い込まれたらそのままもう二度とこの世界には戻ってこられなくなってしまうのだろうか?
いろいろな疑問がグルグルと頭の中を駆け巡る三人だが、今はとにかく敵の中を駆け抜けるしか思いつかなかった。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「はあ、何とかここまで逃げればあの連中も追ってこないようだ」
「けどよぉ……セルフォン抜きで俺たちこれからここ進まなきゃならねえみてえだぜ?」
そうして渓谷を抜けてみると、今度はだだっ広い荒野に出てしまった。
そしてその荒野の至る所に対空砲台が置かれているのも見える。
茶色い土の地面に設置された、黒光りする巨大な金属製の筒が嫌でもその存在感を目立たせており、その砲台の周辺にはそれぞれ何人かの人間たちの姿も見える。
恐らく砲台の見張りという存在なのだろうが、なんにせよ砲台を壊すのを邪魔するのであれば倒さなければならないのだ。
「じゃあ……行くとしますか」
「そうですね。生きてセルフォンさんにまた会わなきゃいけないんですから……私たちは!」
「そうだな」




