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359.突入(北東編)

 ぐるりとその溶岩の河の反対部では、緑のドラゴンのアサドールの背中に乗っているエスティナとデレクとセフリスが、空中大陸の北東部から侵入しようと試みている。

 だが、その行く手を阻むのが大陸から次々に撃ち出されてきている対空砲台の砲弾の雨だった。

 どうやらここには多数の砲台が設置されているらしいのだが、その理由として非常に納得できるのがこの北東部に生い茂る無数の木々である。

 それが深い森となって道や砲台がどこにあるのかを遮っており、アサドールたちとしてもその砲台から発射される多数の砲弾に四苦八苦している。

 こんな時に火属性のエルヴェダーであれば森ごと焼き尽くしてくれるだろうと思ってしまうものの、あいにくエルヴェダーたちは北西に行ってしまったのでここは自分たちだけで何とかするしかない。


『仕方ない、吾輩たちは少し離れた所に降りよう。そこから森の中にある砲台を全て破壊しにいくんだ』

「森の木々を動かせなかったのか?」

『動かせるだけの隙がなかった。とりあえず降りよう』


 そうしてアサドールが森から離れた所に着地したことによって、そこまでの道のりは敵を倒しながら進むしかなくなってしまった。

 それでも一応着陸できたので、アサドールの背中に乗っていた人間たちは非常に危険なことをしていたという緊張感から解放された。

 だが、ここは敵の本拠地なのでまだまだ油断はできない以上、いやでも再び緊張感が高まる。

 その証拠に、植物を改造したと思わしき新種の魔物たちが一行の行く手を遮るのだから。


「ふーむ、これはさすがに私でも見たことがないな」

「俺も初めて見る魔物だ。でかい花だ……」


 セフリスが驚きを隠せない表情になり、デレクがそれに同意する。

 そんな一行の目の前には、白と緑のコントラストが鮮やかな大きな花びらを四枚持っている、二足歩行の花の魔物の姿があった。

 軽快なステップでこちらの様子には気づいていない様子を見せているが、その足下に散らばっている金色の大量の粉が気になるエスティナ。


「ねえ、何かしらあれ……」

「恐らく花粉か何かではないでしょうか? 迂闊に近づくと私たちの身体に何か異変が起こるかもしれません」


 見たことのない魔物のそうした分泌物に身構えながら、最初はアサドールが大地の力を借りてさっさと木々のツタを利用し、その花を絡め取ってしまおうという作戦に出る。

 だが、そのアサドールの作戦は見事に失敗してしまった。

 アサドールはなぜかそうした類の魔術が発動できなくなってしまったのだ。


『あれ……おかしいぞ』

「どうしたの?」

『魔術が発動できん……無魔力になる薬はとっくに解毒しているのだが、変だな……』


 何と、ここに来てアサドールは魔術が発動できなくなってしまった!!

 何がどうなっているのかよくわからない状態だが、少なくとも地上にいた時よりも自分たちが不利になっていることだけはわかった人間たち。

 そしてそんな人間たちとドラゴンの異変に気がついた花の魔物が、シャカシャカと奇妙な足音を響かせながら一気に一行に向かって近づいてきた。


『くっ……』


 こうなってしまっては魔術なしで戦うしかなさそうなので、アサドールは人間たちよりも前に出てその花の魔物を迎え撃つ。

 ドラゴンたちの中では一番接近戦が苦手なアサドールだが、さすがにドラゴンの姿で一気に押し潰してしまえばいくら何でも勝てるだろう。

 そう考えていた彼の目論見は、次の瞬間に襲ってきた全身の痺れで脆くも崩れ去ってしまった。


『ウガッ……!?』

「えっ……ちょっとどうしたのよ!?」


 目の前で全身を痙攣させて、呻き声とともに地面へと横倒しになってしまったドラゴンの姿のままのアサドール。

 当然それを見ていた人間たちは驚きを隠せないが、その中で最初にアサドールの異変の正体が何なのかを察知したセフリスが声を上げる。


「まずい……あれはバインド状態になってしまっている!」

「えっ、バインドって痺れて動けないあの状態!?」

「そうです。どうやら先ほどあなたが気がついた金色の花粉がアサドール様に当たり、痺れて動けなくなってしまったのでしょう」


 冷静にそう分析するセフリスだが、そんな分析している場合ではない。

 なぜならその花の魔物が、せっかくの特上のご馳走を目の前にして今にも捕食しようとしているのだから。

 当然そんなことをさせるわけにはいかないので、セフリスがその花の魔物に向かって火属性の攻撃魔術を発動した!!

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