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359/432

358.突入(北西編)

 所変わって北西部。

 赤いドラゴンのエルヴェダーの背中にはバルドとウェザートが乗り込み、しっかりと魔術防壁を突破して陸地に着陸する。

 そこに待ち構えていたのはまず、非常にドロドロとした溶岩が噴き出ている火山だったのだ。


「あ、暑い……」

「まあ、火山ですからね」

『っていう割にお前は平気そうだが、こういう暑さには慣れているのか?』


 汗がダラダラ流れるほどの熱気を含んだこの暑さに不快な表情を隠そうともしないバルドとは対照的に、涼しげな表情を浮かべているウェザートを見比べて不思議そうな表情をするエルヴェダー。

 その質問に、ウェザートは非常に魔術師らしい答え方をする。


「ええ、私は水属性の魔術で自分の体温を下げていますから」

「えっ、そんなことできるのか?」

「はい。あなたたちにもかけましょうか?」

「やってくれ!!」


 こんな暑さの中で戦うなんてことになったら、敵と戦っている間に自分の方がバテて倒れてしまってもおかしくない。

 なので早速ウェザートにその魔術をかけてもらうバルドだが、エルヴェダーは首を横に振って遠慮しておく。


『いいや、俺様はそもそもこういう暑さには慣れているし、見ての通り水属性に弱いからやめとくぜ』

「わかりました。それではバルドさんだけにかけておきますよ」


 こうしてバルドの体調も整ったところで、まずは事前に連絡のあった対空砲台の破壊に向かう。

 ただしそこら中を流れている溶岩に落ちれば命はないので、そこに気をつけて進まねばならなかった。

 エルヴェダーはドラゴンの姿のままでは進むのも一苦労だし何より目立ってしまうので、人間の姿になって進みやすくしておく。

 そしてそんな一行の足をさらに進みにくくさせる原因が、溶岩の中から生まれて陸地に這い上がってくる溶岩まみれの魔物たちだった。

 こんなのをまともに相手にしていたらさすがに武器が持たない上に、一発でも攻撃を喰らえばこちらが炎に包まれる原因になってしまう。

 それを考えると、ここにくるのはまずエルヴェダーではなくシュヴィリスの方が良かったのではないかと考えるバルド。


「俺は溶岩の魔物じゃない奴らを倒すから、溶岩系は任せるぜ」

「かしこまりました」


 豪快に戦うバルドと、どこまでも紳士的なウェザートの二名を援護する形になっているエルヴェダーだが、彼はドラゴンならではの動物的な勘で得体の知れない不安感を感じ取っていた。


【黒いあいつがこの大陸を支配しているとなれば、それはそれでこの飲み込まれそうな不気味な気配ってーのはわかるんだが……何なんだ、この不安感は……】


 黒いドラゴンの気配とはまた違う、そんな大きな不安感を感じつつも溶岩の中から現れる敵たちを倒しながら、荒れてゴツゴツしている地面を踏みしめて進んでいく一行。

 そしてそんな溶岩の敵を倒していくうちにわかったのだが、どうやらこの溶岩の敵たちは倒しても倒しても無限に出てくるらしいので、途中で魔力と体力を温存するべくなるべく無視して先に進むことを決める一行。


「どーりで全然敵が減らないわけだぜ。かーっ、こんなことならさっさと先に進みゃあよかったなぁ!!」


 無駄な時間を過ごしたと悔しがるバルドに対して、ウェザートもここは彼に同調するしかなかった。

 そしてほぼ一本道状態の地面を進んでいったその先には、かなり大きな溶岩の河が待ち構えていた。

 河の向こう岸には黒光りして溶岩の光を反射している、金属製の巨大な筒が斜め上に向かって鎮座している。

 あれがどうやら対空砲台の一つらしいのだが、あれを破壊するためにはこの河をどうにかして越えなければならない。


『しゃーねえ、橋も何も見当たらねえってなれば俺様が竜の姿に戻ってお前ら運んでやるよ』

「お願いします」


 そもそもこの河をどうやって超えて向こう岸にあんな砲台を造ったのだろうか?

 それが不思議で仕方がない一行だが、砲台の向こう側にも道が続いているのを見る限り恐らく向こう側の行き止まりがこの溶岩の河だったのだろうと納得した。

 だからここに対空砲台の設置をするのはわかるのだが、それを破壊するべく河を渡り始めた一行の目の前に思わぬ存在が現れる。


「……!?」

「おい、あれって……」


 エルヴェダーの背中に乗って進むバルドとウェザートの眼下。

 そこにはどこからか現れた多数の人間たちと魔物が、バラバラと一斉に自分たちに向かって魔術や弓で攻撃を始める光景だった。

 どうやらエルヴェダーが感じていた不安感というのは、こうして敵に待ち伏せをされているという現実だったらしい……。

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