340.一騎当千
一方で、人間の姿になったタリヴァルもまた王都ベルトニアの解放に向けて活躍を繰り広げる。
エターナルソードがなくても、もともと彼はドラゴンの身なので人間如きが力で絶対に太刀打ちできるような相手ではないのだ。
だが、彼はその戦いの中で疑問に思っていることがあった。
【確かグラルバルトの奴は、どこかの地下みたいな場所で人間たちに負けてしまったとかいっていたな……】
その連中がいるというのがどうやらこの王都ベルトニアらしいのだが、力でも体術でも七色のドラゴンの中で他の追随を許さないグラルバルトが、複数の人間如きに負けてしまうとは正直にいって想像ができなかった。
実際、今の自分だってこうして両手に握っているレイピアを振るうだけで衝撃波を生み出せるほどの威力を誇る攻撃で、群がってくる敵たちを倒しているのだから。
しかしその一方で、リュディガーには予想だにしない出来事が少しずつ確実に忍び寄っていた。
(いける……いけるぞ!!)
いくら大勢の敵が向かってきたとしても、このエターナルソードがあれば絶対に負ける気がしない。
妙な高揚感に包まれながら、リュディガーは群がってくる敵をまるで振り払うようにやすやすと蹴散らす一騎当千の戦いを繰り広げていた。
このまま一気に敵を蹴散らしながら、目指すはそびえ立つ紫色を基調としたレガリア城。
無魔力生物たちを生み出している装置を破壊するのもそうなのだが、それよりも先にその無魔力生物たちに襲われているこの国の王族たちを助けなければならない。
以前はイディリーク騎士団の将軍だった男が国王となっているのだから、配下の人間たちも当然戦える者が数多くいるとみていいだろうが、リュディガーは妙な胸騒ぎを覚えていた。
(今は俺の方が優勢なのだが……なんなんだ、この不安感は?)
エターナルソードの威力は確かにすごいし、このまま突き進んでいけば間違いなく自分はレガリア城の解放をするであろう。
そう考えていたのに、まさかの事態が次の瞬間に起こることとなる。
「ぬん!!」
「うおっ!?」
突然、斜め右上の方向から大きな影とともに強い衝撃が襲ってくる。
とっさにエターナルソードを掲げて防御したリュディガーだったが、その衝撃をもたらした影は続けて長い何かを突き出してくる。
リュディガーはとっさにバックステップでその突き攻撃を回避して、お返しとばかりに衝撃波を飛ばして応戦しようとした……が。
「むんっ!!」
「なっ……」
なんと、今まで無魔力生物たちをあっさりと吹き飛ばしていたはずのその衝撃波の威力に、影は耐え切ったのだ!!
まさかこの衝撃波が効かない相手がいるなんて……とリュディガーは舌打ちをするとともに、その影の正体がわかった。
自分よりも少し背が高い、武装している中年の男。
緑と赤という二色の髪の色が特徴的で、先ほどリュディガーに防御されてしまったその武器はハルバードである。
周囲のパラディン部隊の隊員たちや無魔力生物たちとは明らかに雰囲気が違うその中年の男を見て、リュディガーはこいつがこれらの雑魚たちを束ねているリーダーだとすぐに理解した。
そして理解された側の中年の男が先に口を開く。
「ふん……私の奇襲を退けるとはなかなかやるじゃないか」
「そっちこそ、このエターナルソードの威力を意にも介さないとは……何者だ?」
リュディガーに正体を問われ、男が素直に自分の名前と所属を名乗る。
「私はラーフィティア騎士団の将軍、ジェイデルだ。……君の持っているそのたいそう派手な剣は噂に聞くところのエターナルソードのようだな。それは君が持っていて良いものではない。それは私が預かろう」
しかし、そんなことを言われてはいそうですかと渡すリュディガーではない。
「何を言っているんだお前は。これは俺が実力で勝ち取ったものなんだ。それにお前はラーフィティアの前に「旧」をつけるのを忘れているだろう。ここまでのことをしでかしておきながら、無事で帰れるとか思っているんじゃないだろうな?」
「ああ、思っているさ」
なぜなら、とそこで一拍おいてジェイデルはハルバードを振りかぶる。
「ここは私たちの国だからな!! 私たちがここで引き下がるわけにはいかないのだよ。例えそれがエターナルソードの持ち主が相手だったとしてもな!!」
「なら来てみろ。返り討ちにしてやる」
こっちにはエターナルソードがあるんだから負けるはずがない。
そう考えているリュディガーだが、この後にその考えが間違いだったかもしれないと思わせられる展開が待っていた。




