33.空中戦
リュディガーとジアルを逃がし、アレクシアはワイバーンに改めて向き合う。
ワイバーンは凶暴で見境無くこちらを襲って来ているので、早めにアクティルの住民たちを脱出させてしまわなければどんどん追い詰められるだけだ。
もしくはどうにかして町の外へと追い出すことに成功してしまえば、それによって一気に叩き潰すことだってできる。
だから何としてもそのチャンスを逃すまい、とするアレクシア。
だが、そんな彼女の目の前でワイバーン今度は身体をすくめ、彼女にもハッキリと見えるほどの魔力のオーラで身体を包み込む。
その灰色のオーラに包まれる異様な姿に反応したアレクシアが、息を呑みつつ魔術防壁を展開した。
『う……くっ!?』
次の瞬間、まるで竜巻が発生したかのような突風が魔術防壁に突撃してきた。
全力で押し戻そうとするアレクシアだが、それをあざ笑うかのようにジリジリとワイバーンがアレクシアを押していく。
このままでは周囲の建物にも影響が出て二次災害を引き起こしかねないと判断したアレクシアは、とっさにワイバーンと同じ高さの目線になるまで浮き上がって、決戦の場を空中へと持ち込んだ。
『ガアアアアアアッ!!』
鼓膜が破れそうなそのワイバーンの大声に、アレクシアは魔術防壁の展開をやめて上に向かって緊急回避。
一瞬遅れて、今の今まで彼女がいた場所に向かって二発目の突風がワイバーンから放たれた。
この攻撃からしてもワイバーンが完全に怒り狂っているのが分かるので、少しずつ恐怖と絶望がアレクシアの心を支配して行く。
【恐ろしい……ワイバーンがこれ程までに恐ろしいと感じた事は今まで無かった!!】
しかし、よくよく考えてみるとこのワイバーンはなんだかおかしい。
野生のワイバーンでもなかなかここまで強力な魔術を使ってくるとは思えない。それに明らかに戦い慣れているのがわかる戦い方なので、絶対にフラフラと迷い込んできたような個体ではなさそうだ。
なんにせよ、強力な攻撃と素早い動きで翻弄して来るのでタチが悪い以上さっさと倒さなければならない。
しかし、アレクシアとの距離が一時的に離れたのを見て再びワイバーンはアレクシアに覆い被さるように肉迫する。
『くっ!』
今度は土属性の魔術の一つである、魔力で作り出した岩のボールを手から撃ち出す『ロックボール』でワイバーンを足止めしようとした。
が、ワイバーンの動きが意外に素早かったためにそのロックボールがワイバーンの身体に弾き飛ばされてしまう。
【しまっ……!】
ロックボールが弾き飛ばされたのを見て目を見開くアレクシアだが、次の瞬間そのワイバーンは身をひるがえし、どこかへと飛んでいこうとする。
すぐにワイバーンの追跡をするアレクシアだが、そんな彼女の目の前でとんでもない光景が繰り広げられたのはこのすぐ後だった。
「う……うわっ!? なっ、ちょ、待て!」
『リュディガー!!』
先ほど、アレクシアに促されてワイバーンの魔の手から逃れることに成功したリュディガーだったが、ワイバーンは空中から彼を見つけて追跡。
そして地面スレスレまで弧を描く軌道で飛び、彼の右足を器用に自分の右足で掴んでそのまま空中に飛び上がる。
すると当然リュディガーの身体は宙吊り状態になり、まさかの事態に焦ったリュディガーはあろうことか唯一の武器であるソードレイピアを取り落としてしまった。
吊り上げられる恐怖と、自分の愛用の武器を落っことしてしまった絶望で完全にパニック状態になったリュディガーを足で掴んだまま、ワイバーンはバサバサと翼を動かして自分が入り込んだアクティルから出て行こうとする。
『くそっ!』
残されたアレクシアはとっさにリュディガーのソードレイピアを回収しつつ、魔力のエネルギーボールをワイバーンに投擲するが、それを余裕で回避したワイバーンはそのまま飛び去って行ってしまった。
まさかリュディガーがワイバーンに連れ去られてしまう、という最悪の状況を目の前で見てしまった彼女は、その顔に焦りの色を浮かばせながらワイバーンを追って全速力で町の外へ。
とにかく今は、先ほど自分がリュディガーに言った通り自分が出来る最善の行動をするしかない。
ワイバーンは肉食の魔物なので、連れ去られてしまったリュディガーが最終的にどうなるのか大体イメージできてしまうのが、更にアレクシアの焦りを増やす原因になっている。
とにかくワイバーンを見失わないようにしながら、リュディガーの救出を最優先に考えてアレクシアは急いだ。
【待っていろよリュディガー、必ず助け出してやるからな!!】




