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335.さすがに手ごわい

 シェザの部下たちの相手はバルドとジアルに任せて、エスティナとデレクは立ちはだかるシェザと戦いを繰り広げ始める。

 問題はそのシェザの強さなのだが、ハッキリいえば……。


(つ、強い……!!)

(くっ、確かに第一パラディン部隊長ってだけのことはあるね!!)


 エスティナもデレクも、今までの経験を活かして必死に立ち向かい始める。

 だがしかし、シェザの率いている第一パラディン部隊の隊員たちですら一人一人がなかなかに強い実力を持っていた。

 それをまとめているリーダーともなれば、かなり強いのは当たり前といえば当たり前である。

 タリヴァルが戻ってきたとはいえ、一緒についていったはずのマルニスやリュディガーがここにいないのも気になるのだが、今そんなことよりも目の前のシェザを気にしなければいけなかった。

 それでも、シェザはまるで前だけではなく後ろにまで目がついているのかと思うぐらいにスキのない戦い方をしてくる。

 エスティナと、彼女と一緒に戦ってくれているデレクという二人の猛者を相手にしながらも、決して焦った様子ではない。

 むしろどこか余裕のある動きで二人を牽制し、防御して反撃して、そして追撃する。

 大柄で取り回しのききづらいロングバトルアックスを使っているとは思えないほどのスピードであるが、人数的にはデレクとエスティナの方が有利なので人数差で勝負を決めにいく。

 ……だが、そんな時に限ってシェザの部下が割り込んで邪魔をしようとするのだ。


「くっ、邪魔なのよぉ!!」


 シェザと自分の間に割り込んできた第一パラディン部隊の隊員たちを、素早いロングソードさばきで仕留めるエスティナ。

 しかし、それはエスティナにとって大きな隙ができてしまうことになる。


「はああっ!!」

「っ!!」


 倒れていく隊員たちの後ろから現れたのは、跳躍しながらエスティナに向かって愛用の武器を大きく振りかぶるシェザの姿だった。

 これでは防御しても武器ごと叩き切られてしまうだけだと瞬間的に判断したエスティナは、防御しつつ後ろへとバックステップで飛び退いて少しでも衝撃を和らげ、攻撃範囲の間合いから逃れようとする。


「く……っ!!」


 かなり広めの攻撃範囲から逃れることには成功したものの、それはエスティナの肉体だけの話。

 代償として、彼女が愛用していたロングソードを刃の部分で叩き切られてしまったのだ。

 斧のサイズは関係なく、バトルアックスを相手にする時はそのパワーには注意が必要だとわかっていたのに、こうしていざその威力を目の当たりにすると身震いが起きてしまう。


(腕も痺れているし……やっぱり力じゃかなわないわ!!)


 どうしても男と女では元々の力の違いも出てきてしまうこともあって、エスティナの腕も限界に近づいている。

 それを見たデレクが二刀流を振りかざして突っ込んできたが、シェザはロングバトルアックスのリーチを活かして冷静に対処していく。

 エスティナはこれで一時的にシェザの目標ではなくなったものの、武器が折れてしまってはとても素手で戦えるとは思えない。


(こうなったらその辺りに倒れている隊員の武器を奪って……!!)


 武器がなければ現地調達するしかない。

 だがシェザがデレクを圧倒し、再び自分の方へと向かってくるのが見えたエスティナはここで焦ってしまい、地面を見ずに棒状のものを手に掴んで応戦しようとしたのだが……。


「うっ!?」


 なんと地面を見ないで掴んでしまったのは、隊員たちが使っているロングソードではなく、その近くに落ちていた太めだが短めの丸太。

 これでは先ほどの自分のロングソード以上に叩き切られておしまいである。

 しかし投げ捨てている時間もなければ、投げつけてもロングバトルアックスに弾き飛ばされるだけなので、エスティナは一か八かで斜め前に向かって飛んだ。


「くっ!!」

「ちっ……」


 シェザの舌打ちが聞こえるのを横から感じつつも、エスティナは低い体勢でそのシェザの横をすり抜ける。

 そして起き上がりざま膝を使って身体を反転させ、振り向いたシェザの右膝を思いっきり横殴りにする。


「ぐっ……!?」

「ふん!!」

「ごはっ」


 膝への一撃で、その膝を地面につくことになってしまったシェザは反応が遅れる。

 エスティナはそこを見逃さず、今度は両手で握った丸太を思いっきり上に振り抜いてシェザの顎を下から上に打ち抜いた。

 正中線の一部分に強烈な一撃を喰らえば、いくら歴戦の猛者であるシェザでも頭への衝撃は免れない。


「くっ……ううっ!!」


 それでも今までの経験や鍛え抜かれた歴戦の勇士だけあって、シェザはふらつきながらもなんとか踏ん張る。

 だが、そこに今度はデレクの声が響いた。


「エスティナ、伏せろぉっ!!」

「っ!?」


 後ろから聞こえるその言葉に咄嗟に伏せるエスティナの上を、助走をつけて跳躍したデレクが飛び越えつつ、デレクの顔面に飛び蹴りをお見舞いした。


「ごはっ」

「ふん!!」

「ぐあっ……」


 シェザは顔面に恐ろしい衝撃を受け、ロングバトルアックスを取り落として顔面を両手で覆う。

 そうすると自分の両手で視界が奪われて見えなくなってしまうので、そんなシェザの頭目掛けてエスティナが全力で丸太を振り下ろした。


「はあ、はあ、はあ……」

「……死んでいる」


 バルドとジアルの援軍があったとはいえ、第一パラディン部隊長のシェザをこうして仕留めることに成功したエスティナとデレク。

 だが、まだ戦いは終わっていないのだ……。

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