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328.悪魔の所業

 その連絡で他のメンバー含め、いったん引き下がる決意をした地上部隊のメンバーたちは、その行動をとったことによって命拾いをすることとなる。

 なぜなら、空中からその様子に気がついていたグラルバルトが向かってきている無魔力生物の大群に目をやると、明らかに危険な物体がその無魔力生物の身体に巻き付いているのがわかったからだ。


『爆弾だ!!』

「爆弾?」

『そうだ。あの無魔力生物の連中は身体に爆弾を巻きつけて特攻させてきている!! 連中は頭がおかしいぞ!!』


 それを聞き、トリスは唖然としながらもすぐに地上部隊に連絡を入れて更なる撤退を命じる。


「……というわけだから、迂闊に攻撃するとこの辺り全てが火の海になるわ!! 全力で離れてっ!!」

『わかった!!』

「もう……これじゃあ全然近づけないじゃない!!」


 今できるのは、遠距離攻撃を専門としていないメンバーたちはとにかく迫ってきている無魔力生物の大群から少しでも距離を置くこと。

 そして広範囲の攻撃魔術が使えるグラルバルトとアレクシアとフェリシテ、弓がメインの武器であるトリスでその危険な集団を全て排除することだった。

 以上の作戦を地上部隊に連絡し、そのためにまずはフェリシテを地上で回収して攻撃を始めたまでは良かったものの、この大群に違和感を覚えていたのはフェリシテだった。


「向こうはあの装置を改良したのかしら? 以前はあんな爆弾を身体に巻き付けさせたものを生み出しているなんてことはなかった気がするんだけど……」

「そういえば変よね」


 一緒にグラルバルトの背中に乗っているトリスが、敵の地上部隊を空から掃討しながら疑問を持つ。

 そんな爆弾を身体に巻き付けているような生物を生み出すなんて、悪魔の所業に間違いないのは確かなのだが、そもそも生物兵器として使いにくいだろうとも考えてしまう。

 王都にもその爆弾無魔力生物を向かわせているのだろうか?

 いや、ここで最初に無魔力生物を攻撃していた時はいくら攻撃しようが爆発なんてしなかった。

 となれば相手の爆弾無魔力生物はあの設備から生み出されているものではなく、どこか途中で爆弾を身体に巻き付けられているのではないだろうか?

 そうでなければ辻褄が合わないので、空中からそういった爆弾製造をしていそうな連中を探しに向かう空中部隊。

 すると、望遠鏡を構えていたトリスが気になる部隊を発見した。


「……んっ!? 北東の方角に怪しい部隊がいるわよ!!」

『本当か?』

「ええ……うん、そこで無魔力生物に何かコソコソやってるわ!!』


 だったらそこを潰すべく、一気に攻勢をかけようとするグラルバルトたち。

 しかしそんな空中の一行に向かって、敵の対空砲台が火を吹いた。


『うおっ!?』

「えっ、あっ、ちょっと!!」


 突然飛んできたその対空砲台の砲弾をギリギリで回避したグラルバルトだったが、急に身体を傾けられたことによってフェリシテがグラルバルトの背中からズルリと滑り落ちてしまった。

 気がついたトリスが咄嗟に手を伸ばすものの、反応が遅かったのかフェリシテの手を掴めずに終わってしまう。


『くっ……!!』


 ならばとグラルバルトの隣を飛んでいたアレクシアが一気に急降下し、落ちていくフェリシテをなんとか空中で受け止めることに成功した。

 ……までは良かったが、そこに次の砲弾が飛んでくる!!


『くうっ!?』

「うっ!!」


 緊急回避の急降下で砲弾の直撃は免れたものの、地面になかなかの強さで落下。

 幸いにも茂みの中を通り抜けてそれがクッションとなったのだが、ここから空中に戻るにはかなり骨が折れそうだった。


『まずいな……わらわたち、囲まれているぞ!!』

「そのようね……」


 今まで魔術に頼らずに敵を少しずつ潰していた自分たちは、それまで魔術が使えなかった分のうっぷんを無魔力生物の装置を魔術で破壊することによって晴らしてやろうと思っていた。

 だが、この周囲には多数の無魔力生物の気配が近づいてきている。

 探査魔術で捉えられなくても二人にはわかるのだから、おぞましい数の暴力である。


『とりあえずこの近くに無魔力生物の装置が一つあったはずだ。そこを潰さなければな』

「でも、無魔力生物たちは爆弾を巻きつけて特攻してくるのよ!?」

『それなんだがな、とりあえず思いついた作戦が一つある』


 そのアレクシアの作戦はかなり危険なものだが、やってみるしかない。

 そうでなければここで何もできずに爆死してしまうだけなのだから。

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