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323.混乱

「ま……るにす?」


 もう頭の中が混乱してどうにかなってしまいそうだ。

 自分とタリヴァルの戦闘に突如背後から乱入してきたのは、なんとアーエリヴァの騎士団長であるマルニス・クルセイダーその人だったのだ。


「……!?」


 マルニスに気を取られていたリュディガーだったが、ふとタリヴァルがいるはずの方向に振り返ってみればそのタリヴァルが忽然と姿を消していた。

 気が付いてみれば、この円形状の石畳の大きな部屋でマルニスと二人きりという状況に。

 何が一体どうなっているんだ? マルニスは食べられたはずではなかったのか?


「くっ……!!」


 とりあえずこのマルニスから離れないと危険だと悟ったリュディガーは、バックステップで距離を置くことにする。

 しかし、マルニスはそれを見て追いかけてくる素振りも見せずに、非常にうつろな表情でゆっくりと自分のロングソードを構えるだけである。


(亡霊か? それともこれはタリヴァルが見せている幻覚とかだったりするのか?)


 いずれにせよ、武器を構えて敵対するマルニスの姿が自分の目の前にあることは事実なので、リュディガーは気を取り直して武器を構える。

 これはマルニスを戦闘不能にまで追い詰めればいいのか? これはタリヴァルの試験なのか?

 タリヴァルの姿も消えてしまった以上、とにかく自分がこのマルニスと戦わなければならないのは明白だった。

 しかし、リュディガーには先ほどから気になっていることがもう一つあった。


「……おい、どうして何もしゃべらないんだ?」

「……」

「……まさか、もう人間じゃなくなっているのか?」

「……」

「だんまりか。それともしゃべれなくなっているのか?」


 すでにこの目の前のマルニスは、目もうつろだししゃべらないので人間ではないのかもしれない。

 とにかく武器を構えたまま何も動かないマルニスを見て奇妙な不気味さを覚えたリュディガーは、自分から何か動きを起こさないとまずいと思い、ロングソードを振りかぶって向かっていく。


「……ふっ!!」

「……」


 マルニスはリュディガーの振り下ろしを後ろに飛びのいてよける。

 それを見越して、マルニスに向かって横に薙ぎ払い攻撃を仕掛けるリュディガーだが、これも続けてのバックステップで回避するマルニス。

 さすがに一国の騎士団の騎士団長を務めているだけあって、動きに関しては申し分のないものがあるのだが、それもこれもすべては彼が人間ではなくなっている可能性がある……と考えてもおかしくない。

 しかし、そこでもう一つの予想にたどり着くリュディガー。


(まさか? マルニスはタリヴァルに操られているという可能性もあるな)


 そうなるとここで彼を殺してしまった場合、とんでもない未来が待っているのは明白である。

 何もかもが訳がわからなくなりリュディガーの頭に混乱に次ぐ混乱が生まれる中、戦うということだけは明白になっている。

 今度はフェイントを混ぜながらの斬りかかりを見せるリュディガーだが、マルニスはそのフェイントにも反応してしっかりとリュディガーのロングソードの軌道を見切り、お返しに回し蹴りをリュディガーの側頭部へ。


「がほっ!?」


 フェイントをかけて振り抜いた直後に、マルニスの右足が自分の右側から来たことでよけきれず、リュディガーは吹っ飛ばされてしまった。

 それとともにそのマルニスから借りているロングソードも手から吹っ飛んでしまい、側頭部の痛みに耐えながらもなんとかそれを取りに行こうとするリュディガー。

 だが、マルニスが最初の奇襲を除けばここで初めて自分から動いてきた。


「……」

「……っ!」


 ロングソードを取るべくリュディガーの伸ばした右手が、そのロングソードの絵に到達する前にマルニスの左足がロングソードを遠くへと蹴り飛ばす。

 これで丸腰の状況になってしまったリュディガーだが、そんな彼に対してマルニスは容赦せずにロングソードを振り下ろそうとしてきた。

 その動きを見て、ならばと地面に這いつくばる姿勢になっていたリュディガーはマルニスの両足に向かってその体勢から飛びかかり、一気に床へ通し崩すことに成功した。


「……っ!!」

(お、声が出た!)


 うめき声ではあるものの、初めてマルニスから声が出たことで妙な安堵感に包まれるリュディガー。

 だがここでこのマルニス(?)を倒さない限り、話はきっと進展してはくれないのだろう。

 自分のロングソードがマルニスによって遠くに蹴り飛ばされてしまった以上、ここでマルニスの上から移動してロングソードを取りに行けば、きっとその途中でまた背後から襲われるに違いない。

 そう考えたリュディガーのとった行動は、マルニスの持っているロングソードを彼の右腕を掴んで床に叩きつけることで手から落とし、先ほどの自分への仕打ちと同じように彼のロングソードを遠くへと蹴り飛ばして格闘戦に持ち込むことだった。

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