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320.第二の試験

 その火かき棒を手に取って、何とかランプに届かせたリュディガーはランプの仕掛けにも気がつく。

 普通だったらこんなにすんなりと動かないはずなのに、リュディガーが火かき棒でつついたそのランプは余りにもあっさりとクルクル回転する。

 そして土台の部分にある窪みを、ランプから天井に向かって続く窪みにつながるように合わせてみたら?


「……おっ」


 カチッと軽い音がして、自分が次の場所に進むための赤い扉に変化があることを悟ったリュディガー。

 試しに先ほどのメモのメッセージを信じて扉を両手でグイッと押してみれば、その扉はリュディガーの願いに従って奥に向かって開いてくれたのだ。

 これで次に進めると喜んで、火かき棒を置いて黒い鎧をガチャガチャと鳴らしながら進むリュディガーだったが、その扉の先には更なる試験が待ち受けていたのだ。

 それが……。


(これが……次の試練? いや、試験?)


 そこは下に大きな川が流れている、石造りの幅が広くて長い一本橋のある空間であった。

 そして今開けて進んできた扉の裏側に貼られていたメモによれば、たった一言しか書かれていない。


(まっすぐ進め……これだけか?)


 こんなまっすぐ進めばいいだけなんて、余りにも簡単すぎじゃないか?

 リュディガーは呆れながらもその一本橋を渡ってしまおうと一歩目を踏み出そうとしたが、持ち前の冷静さがその足で踏み出すのを躊躇させた。


(いや……待て。さっきのランプだって注意力が必要だった上に頭を捻らなければ扉が開かなかったからな。となると、まっすぐ進むというこの橋だって何かしらの仕掛けがあるに違いない!!)


 そう、ここはあの白いドラゴンが造った試験用の空間なのだから、絶対に何かあるはずに違いない。

 リュディガーは疑心暗鬼の中でそう確信し、その仕掛けを探してみる。

 ……が。


(特に何も変わった所はないな……)


 一通り橋の表面や扉の裏側を調べてみたものの、怪しいものは見当たらずに終わってしまった。

 これはもしかしたら本当に、単純にまっすぐ進めということなのだろうか?

 だったらどうしてあんなメモをわざわざ扉に貼ったのだろうか?


(まさかとは思うが、度胸を試せというのは……)


 いろいろと考えて出した一つの答え。

 それはつまり、この橋には何も仕掛けなんてものはなく、度胸一発で渡りきれということなのでは?

 リュディガーの頭の中にはそうとしか答えが浮かばなくなってしまったのだが、それだって実際のところはどうなのかわからないままである。

 しかし周囲に何も怪しい箇所がない以上、このままメッセージ通りにまっすぐ進むしかなさそうなので、改めて足を一歩踏み出す。


(最初の一歩は問題ないみたいだな……)


 軽さを重視して作られているとはいえ、総合的にみれば以前の装備よりも重量が増しているこの黒いドラゴンの鎧姿なので、まさかこの橋が崩れ落ちたりしないだろうなあと考えるリュディガーだが、少しずつ歩を進めていくと次第にその不安感も消え去っていく。

 あのメモに書かれていることを信じてそのまままっすぐ進んでいくリュディガーの視線の先には、次の空間に続いているのであろう緑色の扉があった。

 そこを目指して進んでいけば良かっただけなのかとリュディガーが思い始めていた……その瞬間!!


「……なっ!?」


 橋の三分の一ぐらいまで進んできた時、突然橋が振動し始める。

 何が起こったのかと足を止めて周囲を見渡すリュディガーの視界に飛び込んできたものは、なんと赤い扉を始点にガラガラと派手な音を立てて崩れてくる橋の姿だった!!


「うっ……わあああああっ!?」


 落ちたらどうなるかわからないが、きっとただではすまないだろう。

 この鎧姿で走るのはなかなか辛いものがあるが、川に落ちてしまうのはもっと辛いのでリュディガーは後ろを振り返らずにまっすぐ緑の扉を目指して全力疾走で一本橋を駆け抜けていった。


「はぁ、はぁ、はぁ……くっ!!」


 開いてくれなければ困ると心の中で叫びつつ、リュディガーは恐ろしく長いと感じる長さの一本橋の終点にある緑の扉に全身を使って体当たりを仕掛ける。

 バァン!! と激しい音を立てながら両開きの扉を突破することに成功したリュディガーだったが、その先に待ち受けていたものは奇妙な空間だった。


(……ここ……は?)


 もう後戻りはできないので、その空間の内部情報を目と耳で認識するしかないリュディガー。

 今度は壁も床も石造りの広い地下室なのだが、雰囲気としては牢屋のような無機質な場所だった。

 壁には規則正しく魔力のランプがかけられており、正方形の部屋を淡い緑色に照らしている。

 そしてその床には、これまた規則正しく正方形の奇妙なくぼみと突起が十六個、縦に四つと横に四つの並びで配置されているのだった。

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