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318.タリヴァルの試験

 リュディガーは七色のドラゴンのうち、黒以外の最後の一匹であるタリヴァルに認められるべく、アーエリヴァからファルスまではるばる飛んできた。

 どうやらここでなければできないことらしく、手間がかかって仕方ないのだがそれもこれも全てはその黒い塊を止めるための話になる。


『我はラーフィティアとこのファルスを看視している立場なのだが、あいにく今はラーフィティアがあの黒い塊に占領されてしまっているのでな。だからこっちでやることにする』

「それはいいんだが、どうして俺の他にマルニスまで連れてきたんだ?」

「そうですよ。本来なら僕も一緒にラーフィティアの情報を集めるはずだったのに、急遽こちらに来てくれとタリヴァル様から指示を受けたものですから」


 本来なら今ごろ、グラルバルトたちと一緒に行動しているはずの彼がどうしてここにいるのか?

 その答えは単純だった。


『これからリュディガーに受けてもらう我の試験なんだが、最終的に我と戦ってもらうからな。そのための審判が必要だ』

「そのために僕を? 別に僕ではなくても良さそうな……」


 そもそも自分はアーエリヴァの騎士団長であり、皇帝が暗殺されかけたというのに警備の指揮を取らずにいることでソワソワしてしまう。

 更にいえばリュディガーを捕まえたという話を国中に流しているため、地下牢獄の最深部にいるはずの彼の監視をしていないと知られてしまえば、きっとニルスたちはまた新しい動きを見せるかもしれない。

 そう、今度こそ皇帝を暗殺するために……。

 だが、それについてはそれを全部ひっくるめて呑み込んだ上でのタリヴァルの判断であり、別にグラルバルトと相談して決めたことがあった。


『それについてはトリスとアレクシアとエスティナがいるから問題はなかろう』

「どっ、どういうことですか……?」

『情報収集というものは数が多い方が確かに早く進むが、それゆえに相手に情報を集めていることも悟られやすい。ましてや今回はラーフィティアのことを集めに向かうわけだからな』


 それに、とリュディガーのことについても話を絡めるタリヴァル。


『リュディガーが逮捕されたという話を聞いて、今まで一緒に旅をしてきた仲間たちが騎士団の本部だったり城にいない方が向こうにも怪しまれる。だからこそ、急遽決めたことで説明する暇もなかった。すまない』

「全くだ。俺もマルニスもまだ頭の中が混乱しているからな」


 そしてマルニスを一緒に連れてきたもう一つの理由としては、今までの話を全てひっくるめて、こうしてリュディガーが外出していると向こうに知られた場合の対処策でもあるのだとエルヴェダーは話す。


『仮にアーエリヴァにリュディガーがいないとバレた時には、アーエリヴァにリュディガーたちの仲間がいる件については騎士団から帝都から外に出られないように監視されていることにしておく。そしてマルニスが脱走したリュディガーを仕留めるために追いかけている……という筋書きだ』

「まあ……強引だが妙な説得力があるようなないような……」


 首を捻るリュディガーだが、いずれにしてもさっさとそのタリヴァルの試験を受けてエターナルソードを手に入れるために認められればそれで問題はないはずだ。

 だが、肝心の武器であるソードレイピアが壊れてしまった状況であり、今回は急遽アーエリヴァの武器庫からロングソードを借りてきたため、本来の実力が発揮できるかわからないリュディガー。

 しかしそれを言い訳にしても仕方がないので、肝心の試験内容はどのようなものなのかをタリヴァルに説明してもらうことにしたのだが、白いドラゴンはこれだけしか言わなかった。


『頭と度胸、それだけだ』

「え……? それってどういう……」

『我が今お前たちに言えるのはこれだけだ』


 その後は結局何も知らされないまま、東西に伸びているファルス帝国の西側からその帝都近くに降り立った白いドラゴンは、人間の姿になるとそこから今度は徒歩である場所へと向かい始める。

 そこはファルスの帝都ミクトランザからやや離れた場所に建てられた、一軒の木製の小屋だったのだ。


『ここの中で我の試験を行なう』

「頭と度胸を使う試験をか?」

『そうだ。中に入ってから説明しよう』


 タリヴァルに先導されて中に入ったリュディガーとマルニスだったが、その内部で見たものはデジャヴを覚えるものだった。


「ん……これは?」

『ここから試験を行なう場所に向かう。だがリュディガー、お前はここで待機だ』

「えっ?」


 てっきり自分も一緒に奥まで進むのかと思いきや、唐突にそう言われてキョトンとするリュディガー。

 そんな無魔力生物に対して、マルニスを引き連れた上でタリヴァルはこう言ったのだ。


『我とマルニスはこの最深部で待つ。お前はこの地下通路をその頭を使って最深部まで来るんだ』

「……なるほど、そういうことか」

「頭と度胸というのを、この地下通路を進むことで確かめるというわけですね」


 タリヴァルのやりたいことを理解した二人の人間たち。

 その試験は、この薄暗い通路に明かりが灯ったら開始となる……。

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