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29.リュディガーの危機と精霊からの報告

(なんなんだ、こいつの耐久力は!?)


 リュディガーが相手にしている男は、様子をうかがっているのか鎧の重さで動けないのかわからないが、動きがかなりゆっくりなので攻撃を当てようと思えばいくらでも当てられる。

 それでもなかなか倒れてくれない。

 どんなに攻撃しても怯む様子がほとんど見られず、リュディガーからしてみるとダメージが全然通っていない感触だ。


(くそ、攻撃を当てても当てても倒せない!!)


 魔術というものを理解できない自分にはわからないが、どうやら何か特殊なことをしているらしく、ダメージを与えても無効化されてしまうのだと理解するリュディガー。

 さらに、男はこんな攻撃も繰り出してくる。


「それっ!」

「うわ!!」


 ロングソードの先端を手前から奥……下から上に向かって半月状にえぐるように男が地面に向かって振るえば、なんと波止場の舗装が削り取られて破片として飛ばされてきたのだ。

 間一髪で地面を転がり、その大小さまざまな破片を回避したリュディガーだったが、その隙をついて男が全力疾走からのタックルを入れる。


「ぶほっ!?」


 クリーンヒットのタックルで、無様にゴロゴロと波止場を転がるリュディガー。

 このままでは確実にまずい。

 追い込まれているのは自分の方だと思いつつ、それでもリュディガーは立ち上がる。

 まずいと思うのは自分の攻撃に対する男の耐久力だけではなく、まだ他にも一つあるのだ。


「はぁ、はぁ……はぁ……っ!!」


 戦う時は守るよりも攻める方が体力を消耗する。

 守りに入っている時は精神力が削られるのだが、攻める場合は攻撃を繰り出すので守るよりも確実にスタミナが削られる。

 防御の「ぼ」の字も見られないような男に対して、ひたすら攻撃を当て続けていたツケが回ってきたリュディガーは、明らかに最初よりも動きが鈍っている。


「どうしたんです? もう終わりですか?」


 その顔にニタニタと嫌らしい笑みを浮かべ、リュディガーを次第に追い詰めて行く男。

 このままではトリスやバルドにもう一度再会する前に殺されてしまう未来しか見えないので、それは避けたいリュディガーだったが、その時リュディガーの目の前に迫っていた男に一本の矢がどこからか飛んできた。


「ぐあっ!?」

「えっ!?」


 突然の出来事に、攻撃を受けた男はともかくリュディガーも動きが止まる。

 だがまだ戦いは終わったわけではないので、最後まで油断はできない。男が完全にギブアップするまでが戦いだ。

 片膝をついて荒い息を吐く男を、厳しい目つきで見据えるリュディガーの耳に足音が複数聞こえてくる。

 そちらの方に目を向けてみれば、どうやら騎士団員達が騒ぎを聞きつけてやって来たようなのでこれで一安心出来る、とリュディガーは息を吐く……はずだったのだが。


『まったく、世話の焼ける男だ』

「なっ、何でお前がここに!?」


 間違いない。

 金色のロングヘアに、ところどころに黒い文様の入っている白い身体の女の姿もそこにあった。

 それは自分が厄介ごとに巻き込まれたくなかったので、事情聴取を受けている間にさっさと逃げ出して、ほとぼりが冷めるまで身を隠しておこうと決意したはずの……。


「アレクシア……」

『話は後だ。まずはこの男をどうにかするぞ!』


 その声に反応して、彼女が呼んだのであろう騎士団の団員たちとともに黒髪の男の方を向くリュディガー。

 しかし、それと同時に男は再びロングソードを振るって波止場の地面を抉り飛ばしてきた。


「ぐっ!」

『危ないっ!』


 アレクシアがリュディガーたちの前に飛び出しつつ、全員を覆うように魔術防壁を展開する。

 しかし、それはリュディガーにのみ効果がないものだった。

 それを感覚で察知したリュディガーは、一目散に横っ飛びを繰り返して飛んでくる破片という破片を避け、なんとか難を逃れることができた。

 だが、その破片に気を取られている間に男の姿は波止場から消え去っていた。


『……逃げられたか』

「一体何だったんだあいつは? アレクシアは何か知っているのか?」

『ああ。だが……今はそれよりも大事なことをそなたに伝えなければならない』

「何だ?」


 あの男の正体よりも重要なこと。それは一体?

 アレクシアの口から出てきたのは、今からリュディガーが全力で立ち向かわなければならないことだった。


『アクティルが謎の集団によって襲撃されている。そしてそなたの妹が働いている料理屋も襲撃され、妹がさらわれてしまった!』

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