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294.サソリ視点

 さて、今日の獲物はどこかな?

 巨大なサソリがそう考えながら地下迷宮を徘徊していると、人間たちの匂いが漂ってきたのでそちらへと足を向ける。

 何人もの人間たちが、自分が王者として君臨しているこの地下の迷宮に入り込んできた。

 そこで自分を倒そうとして、武器を持って襲いかかってくる。

 しかし、いくら力を持っているといっても所詮は人間である。

 人間ごときが、圧倒的な力を持っている自分に対して立ち向かおうなどとは笑わせてくれる。

 実際にそんな思い上がった人間たちを、自分は今まで何人もエサとして美味しく食べさせてもらった。

 最近は奇妙な人間たちと、それを生み出す人間たちがこの地下迷宮に入ってきているらしいが、あの奇妙な人間たちからは食べてはいけない雰囲気を感じるのでそっちには手を出していないんだけど。

 そんなこんなで今日もまた獲物を探して地下を徘徊していると、外から冒険者の集団がやってきたらしいのでありがたくいただくことにする。


「やべえ、サソリでかいぞ!!」

「とにかく今は逃げるのよ!!」


 男女入り混じったその冒険者たちだからこそ、ご馳走にありつけそうだ。

 こうやって必死に逃げて、そして追い詰めれば追い詰めるだけご馳走にありつけた時の満足感は大きくなる。

 今もこうして必死に逃げている人間たちを自分がこうやって追い詰めているので、誰を最初に追い詰めるかと考えながら追いかけている。

 すると人間たちは姑息な手段に出てきた。


「俺たちはこっちに行く!!」

「じゃあ私たちは向こうに行くわ!!」


 どうやら目標を絞らせないために別々に逃げることにしたみたいだが、だからといって手間が増えるだけで自分が追いかけていた人間たちを喰らい尽くすのに変わりはないのだから。


「ちょ、ちょっとこっち来たわよ!!」

『足を止めるな!! 全力で逃げ続けろ!!』


 まずは魔力が高い女二人を食べることにしよう。

 かなり肌が出ている女の方はこれまでに感じたことがないぐらいの魔力を持っているみたいなので、これは食べるのが楽しみになってきた。

 でも曲がるのはこんなに大きな身体で苦手だ。

 それでも魔力を辿っていけば……ほら、ちゃんと行き止まりに追い詰めることができたじゃないか。


『キシャアアアアアッ!!』

「い、行き止まりよ!!」

『くっ……』


 こうなったら後はもうジックリと食べてしまうだけだ。

 反撃してくるんだったら自分も戦うけど、今は腹が減っているので一気に押し潰してしまおう。

 そうすればすぐに美味しいご馳走が食べられるというものだ。


「……えっ、無茶苦茶よそんなの!!」

『わらわだって無茶なのはわかっている!! しかしこれしかないんだ!!』


 何かを相談しているみたいだが、この通路の横にも縦にもほとんどの空間を使っているこの巨体から逃げられるはずがない。

 せいぜいあがくがいいさ。

 どうせ壁に挟まれて死んだ後は、自分の腹の中に収まるだけなのだから。


『よし……行けっ!!』

「う……うわあああああっ!!」


 うるさい叫び声を上げながら向かってきたって、結果は同じだよ人間。

 それにそんな小さい身体で自分にぶつかりにくるなんて、やけになっての特攻としか思えないんだよ。

 だったら自分の無力さというのをしっかりと思い知って、自分に喰われればいい。

 だがその時、不意に地面が揺れる気がした。

 それと同時に、ピシリと嫌な気配のする音が上から聞こえてきたがきっと気のせいだろう。

 ここは割と脆い造りをしているんだし、そんなに簡単に崩れるわけがない……。


『グガッ!?』


 頭に降り注ぐ強い衝撃。

 それから外の空気の臭いに、細かい砂が続けて山のように……いや、文字通りの山となって天井から降り注いできた。

 思わずバランスを崩してしまった自分の身体の上を、全力疾走でさっきの女二人のうちの一人が駆け抜けていく。


『グガッ、ギャウウウッ!?』

『今度はこっちだ!!』

『ギュエ!?』


 もう一人の女の声が聞こえる。

 それと同時に、左右の壁が自分を思いっきり挟み込む感触を味わった自分の意識はだんだんと薄れていく。

 一体何が起こったんだ?

 もしかしてあの女が何かしたから、自分はこんな状況になってしまっているのか?

 それがよくわからないまま、自分の意識はそこでプッツリと途切れて……何も聞こえず何も見えなくなってしまった。

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