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28.謎の男

 しかし、バルドが帝都アクティルにおいて大活躍を果たしている一方で、アクティルの外へと一旦逃れていたリュディガーは思わぬ危機に直面していた。


「……?」

「あなたの親友は実にお見事ですね。いや、感心しましたよ」


 数日かけて精霊の無茶ぶりからようやく逃げ切って、このアクティルから離れた港町の波止場で一息ついている状態の彼の目の前に現れたのは、暗い金色の鎧にオレンジのマント、紫の上着に青いズボン、そして明るい茶色のブーツと手袋を着込んでいる初対面の若い黒髪の男だった。


「何の話だ? というかそもそもお前は誰だ?」

「私はあなたたちの仲間を襲った人たちの……まぁ、上司ってところです」


 パチパチと手を叩き、親友が自分たちの部下からよく逃げ切ったと称賛の声を上げるその男もまた、その「部下たち」と同じく自分たちの敵であるのに変わりはないと悟るリュディガー。

 先ほどフェリシテから連絡を受けたリュディガーは、アクティルで何が起こっているのかをある程度把握しているのだが、この男から感じる異様な雰囲気は只者ではないことを感じさせる。

 しかし、名前を名乗ってくれないので何者かがいまいち掴めない。服装からすると自分と同じ傭兵のようだが……?

 そんなリュディガーを見て、男はとんでもないことを言い出した。


「とりあえずあなたたちの情報は私たちで共有していますからね。さ、大人しく捕まってください」


 だが、このコートの男が自分やフェリシテたちを捕まえる目的も、捕まった先で何をされるのかも分からない以上、リュディガーも大人しくついて行く気はさらさらない。


「断る。俺たちをどうしても捕まえたい理由があるらしいが、その理由が俺たちには分からない以上はついていく気はない。そもそも、帝都にいる俺の仲間から連絡があったんだがな? 町中で騒ぎを起こしてまで俺たちを捕まえようとするんだから、良くないことに違いないだろう」


 リュディガーにそう言われて拒否された男は、やれやれと首を横に振って溜め息を吐いた。

 そして、腰に下げているロングソードを引き抜いて構える。


「仕方ないですね。ならばこちらも実力行使といかせてもらいますよ」

「実力行使だと? 本当にそこまでして俺たちを捕まえたい理由があるのなら、まずその理由を話すのが先じゃないのか? 理由によっては俺がお前についていかないとも限らないがな?」


 ここまでして強引にでも自分たちを捕まえたい理由がある。だけどその理由がわからないのであれば、ここで自分は捕まる訳にはいかない。

 たったこれだけのことなので、その理由をまず話してほしいと話を持っていこうとするリュディガーだが、男はどうしても話したくないようだ。


「それは今は言えません。私についてきたらいずれわかることですから」

「どうやら話は平行線を辿るばかりのようだ。それならば悪いが、こちらもあんたと同じく実力行使で強行突破させてもらうぞ」


 このまま話が進まないとイライラするばかりなので、どいてくれなければこちらも力尽くで通らせてもらう、とばかりにリュディガーは腰のソードレイピアの柄に手をかける。

 ならず者退治の時に壊されてしまい、ギルドの依頼達成と今回のならず者退治による国からの特別報酬で新しく手に入れたソードレイピアだが、まだ手に馴染まない。

 それを見て、男は呆れた口調でリュディガーに警告した。


「バカな男です。素直に私についてくれば怪我はさせない予定だったんですが……少し、痛い目を見てもらうとしましょう」


 そう言い終わると同時に、彼の右手の中で何かが煌めいた。

 その煌めきを見た瞬間、リュディガーは咄嗟に横に飛んだ。一瞬遅れて、今まで彼が立っていた場所に向かってナイフが飛んで行く。


「ふむ、そこそこの反射神経はあるようですな」

「褒める前に理由を言え」

「……ふん、わかりましたよ。じゃあ理由というか……あなたに聞きたいことがあるんですよね」

「何?」


 聞きたいこととはいったい何なのだろうか?

 こんな初対面の自分にいったい何を聞こうとしているのか。それも、こうして攻撃的な方法で。

 油断なくソードレイピアを構えつつ男の質問を待つリュディガーだが、その内容は思わず身体が固まってしまうほどの内容だった。


「あなたは……闇の装備品について知っていますね?」

「ん!?」


 闇の装備品。

 それはリュディガーの祖先である、ルヴィバー・クーレイリッヒがこの世界のどこかに隠したとされている、闇の魔力を封印してあるという装備品の数々。

 それをこうして聞かれるということは、この男が何を目的としているのかをリュディガーは察することができた。


「闇の装備品だと? まさかお前……それを狙っているのか?」

「質問に質問で返すのは失礼じゃありませんか? ……まぁいいです、その様子だと知っているけど教えたくないって感じですね?」

「ああ、そうだとしたらどうする? 俺としては大人しく帰ってくれるのが一番ありがたいんだがな」


 しかし、男は鼻で笑って拒否した。


「はっ、嫌ですね。あなたが無魔力生物であり、()()ルヴィバー・クーレイリッヒの子孫であり、闇の装備品について少しでも知っているとなれば……ますます引き下がるわけにはいかないんですよ!」

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