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288.思わぬ助っ人

 今度は抵抗されても逃げられないように、男が床で頭を押さえて悶絶している間に部屋の中で見つけたロープを使って椅子にグルグル巻きにして縛りつける。

 見つかってしまうことは想定のうちに入っていたが、こんなにも早く見つかってしまうなんてなかなかの不運だなあと思いつつ、リュディガーは男に対して尋問を始める。


「で、だ。お前たちはどうやら、どこかの城に行ってこの暗殺計画を実行しようとしているらしいな?」

「な、何のことだよ……」


 男は目の前で、あのメモをピラピラとリュディガーの青い手袋をはめた手に揺らされても目を逸らす。


「まぁ、こんなメモを女の連絡先と一緒においておく奴もどうかしているとしか思えないのだが……まぁいい。お前が言わずとも、この部屋の中を色々と探れば何かが出て来るだろう」


 そのリュディガーの発言に男の顔色が変わる。明らかに動揺している表情だ。


「や、やめろ!」

「だったら素直にその全てを白状すれば良いだけの話だろう。それも嫌だと言うのであれば、そこで大人しくしておくことだな」

「やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろぉぉぉぉおおおお!!」

(あーうるさい……)


 男の吼える声を首を振ってリュディガーは聞き流す。

 しかしこの後、またもや男が驚愕の行動を起こすことになる!!


(相変わらず散らかっているな……)


 もはやこの家の中の散らかりようにも慣れてきた。

 この家の住人たちとして活動している、バルドと会話していたこの男を含めた集団には整理整頓という概念がないのだろうかと、リュディガーは他人事ながら呆れの感情を芽生えさせる。

 男の行動には気を配りつつ、他の部屋も探してみれば何か手がかりが他にも見つかるかも知れないと踏んで、リュディガーは他の部屋に行こうと踵を返す。

 ……が。


「……何をしている?」


 その時、男の座っていた椅子がガタンと横に盛大に倒れた。

 男の異変に気がついたリュディガーが声をかけたその瞬間、男は必死に伸ばせるだけ足を伸ばしてそばにあるテーブルの足の陰に隠されていた何かのスイッチを足で踏んだ。


「何だそれは?」

「ふっ、ふははは! さー早く逃げた方が良いぜ? 俺は忠告したからなぁ?」

「は?」


 リュディガーの問いかけに、突然笑いながらそう言い出した赤髪の男に、思わずキョトンとした表情をリュディガーは浮かべる。

 そしてそんなリュディガーの元に、バタバタと騒がしく外から複数人の足音が聞こえて来た。


「あーあ、さっさと逃げりゃ良かったのによ!」


 そう赤髪の男が言った瞬間、さっき窓の外から見かけた男たちが家の入り口のドアを蹴り破って帰ってきたではないか!!


「何、どうし……って、ああああああっ!?」

「き、貴様は私たちが捜している無魔力生物の!!」

「何でここに……ってそんなことはどうでもいい!! 僕たちのアジトに来て何をやってるんだ!」

「こいつ、家探ししてやがった!! おい、とっ捕まえろ!!」


 バルドは一緒に帰ってきていないものの、残りの赤髪の男と一緒にいた緑の髪の男、それからメガネの男もいる。

 原理はわからないが、先ほど赤髪の男が足で何とか押した床のボタンはどうやら仲間を呼ぶためのものだったのか……とリュディガーは納得しながら、とりあえずここから逃げることにする。

 二人を相手に、しかも全員がパラディン部隊の部隊長とくれば勝ち目は薄いからだ。


「すまねえ、助かったぜ」

「大丈夫だ、もうすぐバルドも帰ってくるだろう」


 その間に、赤髪の男はメガネの男にロープをほどいてもらっていた。

 あとは三人で無魔力生物を追い詰めていくだけだったはずなのだが、こんな時に限って見知らぬ乱入者が現れたのはその時だった。


『まったく、見ていられんな』

「へっ?」


 隊長たちにとっては聞きなれない声。だがリュディガーには聞きなれたその声。

 その声の主は裏口から現れたかと思うと、メガネの男の武器である二刀流のうちの一本を簡単に左足でバシンと蹴り飛ばした。


「なっ……!?」

「くっ、貴様!」


 その飛んで行った短剣の行方には目もくれず、続けて右側から飛びかかってくるロングバトルアックス使いの緑髪の男の腹を、全力の前蹴りで蹴って強制停止させる。

 その人物の姿にリュディガーは唖然とした表情になった。


「グラルバルト……どうして?」

『外に出ていくのが見えたから追いかけてきてみたらこれだ。ここは私に任せろ』


 余裕さえ感じさせるその声色に、ロープの拘束から自由になった赤髪の男が吼える。


「く、くっそー!!」

「僕たち二人でかかれば何とでもなる!!」


 メガネの男に勇気づけられ、顔を見合わせて彼と頷き合う茶髪の男。

 赤髪の男は大型のバスタードソードを武器にしているが、この家の中で振り回すのは不利だと判断し、懐から取り出した大型のナイフを握る。

 一方でメガネの男は愛用の二刀流で再びグラルバルトに向かってくるが、それでもグラルバルトは余裕そのものといった様子である。

 更に言えば、グラルバルトは一切の武器を持たないで戦うつもりなのだ……。

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