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274.近接戦闘は苦手なんです

 しかし、苦手などと言っている場合ではないのでこの状況でも戦うしかないのだ。

 そこでとある作戦を思いつくフェリシテ。

 だがそれはまだまだ先で使う作戦なので、先ほどソエリドの左肩に突き立ててから引き抜いたナイフを構え、再びソエリドに向かって斬りかかっていく。


「しぶといわね、あなたたちも!!」

「ふん、それはそうだろう。こっちだってやらなければならないことが山ほどあるのでね」


 フェリシテはソエリドに飛びかかるが、ソエリドもそんなフェリシテを蹴り飛ばして応戦。そのまま接近した状態の戦いに持ち込む。


「大人しくあの鉱山でやられておけばよかったものを。ここまで追いかけてくるとは正直恐れ入ったが、しつこい女は嫌われるぞ?」


 振るわれるナイフの動きを見切り、フェリシテの右手首を掴んで忠告するソエリド。


「嫌われるも何も、もともとあなたたちと私たちは敵同士だから、嫌われていても問題ないのよ。そもそも私だってあなたなんか好きじゃないんだし!!」


 右手首を掴まれたままの状態でそういうフェリシテに対して、ソエリドはフッと鼻で笑った。


「ふふふ、確かにそうだな。ならばこのままこちらに楯突いたことを後悔して死んでいくがいいさ。今までの戦いを見る限りではなかなかやるようだし、あんなドラゴンまで仲間にするのだから恐れ入るが、それでも勝つのはこちら側だ!」

「ふ……ざけんなあああああああっ!!」


 そのソエリドの言葉に、フェリシテは今までの自分を否定された気がして力任せに手首の拘束を解いた。

 相手は肩を怪我しているとはいえ、時間が経って魔力を取り戻して回復されてまた矢を放たれたら不利なので、フェリシテはとにかくナイフを振り回してソエリドに向かう。


「うおおおおっ!」

「悪くはない……が……」


 だがソエリドはそれを割と余裕をもって避けつつ、フェリシテに足払いをかける。


「まだまだだな」

「うあっ!?」


 しかしすぐに立ち上がって再度ナイフを振るい、ソエリドに対してフェリシテは隙を与えないようにする。

 一度ならず二度までも逃がしてしまった、なんてことになったら目も当てられない状況になってしまうので、そのためにも必ずここで決着をつけるという意気込み。

 それが次第にソエリドを追い詰め始める。


(くっ!)


 先ほどから少しずつ、別人のように戦い方に鋭さが増し始めたフェリシテに対して厄介な相手に出会ってしまったなlと思いつつ、何とかこの状況を打破しないといけないと考えるソエリド。

 だが懐に忍ばせている自分のナイフを出そうにも、今はフェリシテのナイフを避けるので精一杯。

 そこでやや強引ではあるものの、形勢逆転が可能なある方法を思いつく。


(これしかないな!)


 弓使いとしては常備品。

 自分の背中に背負っている矢筒から右手で矢を一本引き抜き、ナイフを突き出してくるフェリシテの動きをよく見てナイフを避けてから、肩を怪我をしている左手で彼女の腕を鷲掴みにする。


「な!?」


 そのままナイフを握っている彼女の右手めがけて、ソエリドは右手に握った矢を振り下ろす。


「ぐおあああっ!?」


 まさかの攻撃とその痛みにフェリシテは悶絶しつつ、ナイフを手から落としてしまう。

 その間にソエリドは矢を捨てて、懐のナイフを取り出した。


「そらあっ!」


 今度は形勢逆転し、自分がナイフを避け続ける展開になってしまったフェリシテ。

 しかし、いつまでもこのままというわけにもいかない。

 右手は負傷したが、不幸中の幸いでその傷は余り深くはなくナイフを持つのも弓を持つのもまだまだ大丈夫であった。


(だったら……私はあなた以上の作戦で行くしかないわ!)


 そう考えたフェリシテはソエリドのナイフを横に転がって避け、そのままナイフの元に駆け寄って左手に握る。


「ちっ!」


 ソエリドは舌打ちをするがもう遅い。

 フェリシテはそこから、そのままソエリドに向かってナイフを投げつけた。


「うおっと!?」


 それはギリギリで回避されてしまうものの、これこそがフェリシテの考えた作戦である。

 フェリシテはナイフを投げつけると同時に、先ほどソエリドが落とした弓とそばに落ちていた矢を素早く構え、ソエリドがそのナイフを避けるのを見越して矢を放ったのだ。


「うがっ……あっ……がはっ……」


 その矢はソエリドの胸に命中し、心臓をしっかりと射抜いていた。

 呻き声を上げてソエリドはゆっくりと地面に倒れ込み、すぐに動かなくなる。


(終わった……)


 ようやく自分の戦いが終わったことに、フェリシテは思わず息を吐いて笑みを浮かべた。

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