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26.狙われる二人

「私は余りこういうやり方は好きではありませんが、こちらも任務ですから手加減はしません。あの魔術師の女性をまずは捕まえて下さい。そして、その魔術師の女性を捕まえて逃げる途中でもう片方の女性が追い掛けて来るはずです。うまく路地裏かどこかに誘い込んで、そこで一気に捕まえてしまいましょう」


 帝都内で騒ぎを起こすのは気が進まないのだが、二人を捕まえろという命令が下っている以上、やむを得ないことではある。

 狙うのはまず二人の女だ、と自分たちの部隊にも伝わっている。


(私たちから逃げ切れると思ったら大間違いですよ)


 心の中でそう呟き、部隊長は路地裏へと姿を消した。

 一方でエスティナとフェリシテは、自分たちを尾行してきている集団の存在に気がついていた。


「ねえ、フェリシテ」

「うん……何か着いてきている人たちが居るわね」


 事実、ここに来るまでに何人か黒いコートを着込んでいる人間に遭遇しては、気付かれないように人混みに紛れてスルーすることの繰り返しだ。

 そんなに同じようなコートが流行っているなら、もっと他の人だって着ているわよ、とフェリシテが心の中で付け加えて、二人はその集団にこれ以上目を付けられない内にさっさとアクティルを出ることにした。

 ギルドの依頼はギルドの支部がある町でならどこでも引き受けられるので、今は自分たちの身の安全を最優先に考えることが大切だろう。

 しかしその黒いコートの集団は、メインストリートの人混みが途切れがちになる場所に何人かで先回りをしていた。

 そしてエスティナとフェリシテがその地点に差し掛かった時に、行く手を阻む形で二人の目の前にバラバラと現れた。


「走るわよ!」


 尾行に気が付いていたエスティナとフェリシテも、先回りされるかも知れないとはある程度予想出来ていた。

 だからこそ、その集団が自分たちの前に現れたのが視界に入って確認できた時、いつでも走り出せるように準備していたのが功を奏した。

 路地裏に入って走って行くフェリシテを追い掛けて、黒いコートの集団の何人かも彼女の後に続いて走り去る。

 フェリシテはそのまま足を動かして、アクティルの路地裏へと入り込む。

 その路地裏にはゴミを入れる為のタルや木箱が置いてあり、それを転がしながら逃げる。

 それに加えて魔術師ならではの逃げ方、つまり氷の魔術を駆使して地面を凍らせ、後ろから追って来る黒いコートの連中を派手に転ばせることから始まり、風の魔術で路地に散乱していたいろいろな物を飛ばしてぶつけたりもする。

 それでも数では絶対に敵わないので、どうにかして逃げ切らなければならない。


(エスティナは一体どうするつもりなのかしら!?)


 自分とは別行動で逃げているはずのあの二色の髪の女を思い出しながら、自分も必死に逃げるフェリシテ。

 このコートの集団の尾行に気がついてから、エスティナと交わした約束があった。


「二手に分かれて逃げましょう。逃げ切ってしまえば何とかなると思う」

「うまく行くかしらね?」

「わからないわ。でもまともに真正面から戦うのは無茶よ。ここはさっさと振り切ってしまった方がお互いに安全でしょうから、とりあえず二手にわかれて逃げて、どこかで落ち合おう」

「わかったわ。それじゃあタイミングを見計らって、それぞれがうまく逃げられるように頑張りましょう」


 こんな約束を交わしていたのだが、後ろから追って来る人間の数を考えてみるとこのまま無事に逃げ切れるかどうかは自分の方がかなり怪しい、と感じるフェリシテ。

 だがそれでも逃げ続けなければいけない。

 必死になって足を動かす彼女の目の前に、今度は民家の屋根に続く備え付けの階段が現れた。

 このまま路地の中を逃げ続けていて、もし挟み撃ちにでもあったりしたらそれこそ逃走劇の終わりである。

 なるべく広くて周りを見渡せるような場所に出ると、相手に見つかる可能性は高いかも知れない。だが、その一方で周りの状況をしっかりと見渡して自分も逃げやすくなると考えたフェリシテは、一目散にその階段を駆け上がり始める。

 もちろん、階段を氷の魔術で凍らせることも忘れずに。

 何とか自分を捕まえようと手を伸ばして来るその集団を押しのけたり、杖で殴ったりして逃げ続けるが、次第に後ろから追いかけてくる足音が小さくなるのが耳で分かった。


(えっ?)


 その違和感に対して思わず振り向いた彼女の目に映ったのは、自分を追いかけている最後の一人を足払いで転ばせ、その転んだ男の腹を思いっきり踏みつけて悶絶させているバルドの姿だった。


「無事だったか、フェリシテちゃん?」

「ええ、なんとか私は無事だけど……なぜあなたがここに?」

「俺がトリスちゃんの所で飯食って家に帰ろうとしている時に、この連中がいろいろな場所から二人を追いかけているのが見えたから、思わず追いかけてきたんだ」

「そうだったの……とにかく助かったわ」


 しかし、バルドには気になることがあった。


「なぁ、それはそうとリュディガーの奴はうまく逃げ出せたんだろうな?」

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