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253.最終決戦

 そう言い出したフェリシテの横で、本来の自分である赤くて大きなドラゴンの姿に戻ったエルヴェダーは、フェリシテを背中に乗せて空中へと飛び立つ。


『それじゃあ最後は俺様とフェリシテが相手だ。せいぜい頑張れや!!』

「無茶苦茶だ……」


 しかも自分の唯一の武器であるソードレイピアはフェリシテに奪われたままなので、リュディガーは全くの丸腰で戦わなければならなくなった。

 この状況では万に一つの勝ち目もない。

 かといって、向こうと同じくドラゴンが味方になっているわけでもなければ、グラルバルトは審判役としてついてきているだけなのでこの戦いに介入してくれることはない。


「……まさか、あんたがドラゴンになってくれるとは……」

『言わないな。君一人で何とかするんだ』

「やっぱりか」


 リュディガーは自分が予想していた答えをグラルバルトから言われたことで、納得と絶望が混じった表情を浮かべる。

 ならばこの試験の最終決戦にふさわしく、何とかしてあのコンビに勝って認めてもらいたいところである。

 しかし、自分で呟いた通りこの条件で戦うのは余りにも無茶苦茶でしかない。

 確かに先日、エルヴェダーに認めてもらうためにはドラゴンの姿になっている彼と戦って勝つこと、という話をされていたのだが、それは仲間たちが一緒に戦う上に武器が手元にあっての話だとばかり考えていた。


(どうにかして、まずは戦える状況に持っていかなければな……)


 相手は巨大。

 四本の足に鋭い爪を持っており、同じく鋭い牙に噛みつかれたらそれで終わりだ。

 さらに炎のブレスまで吐いてくるので真正面には立てないだろう。

 しかもこの前、彼がフェニックスを押し潰してくれた山頂部分とはまた別の部分にある山頂で戦っているのだが、広場とはいえども所々に溶岩が流れていて非常に暑い。

 もし間違って溶岩の中に落ちてしまったら即死しかない。

 リュディガーは自分がかなりの劣勢に追い込まれていることを自覚しつつも、何か手はないかと必死に思考を巡らせながらエルヴェダーを観察する。


(とにかくエルヴェダーを何とかしないと俺に勝ち目はない。だとすれば、人間の姿にさせてしまえば何とかなるか……?)


 確か、ドラゴンたちが人間に変わるためには首からぶら下げている大きな袋に入っているあの瓶に入った液体を飲ませればいいのだという話だった。

 しかし、それを手に入れるためには嫌でもドラゴンに思いっきり接近しなければならない。

 せめてソードレイピアがあれば何とかなるかもしれないが、この状況では八方塞がりである。


(くそ……まずはフェリシテから俺の剣を取り戻さないと!!)


 ひとまず使えそうなものは足元に沢山転がっている石ぐらいなので、拳大のそれを拾い上げてエルヴェダーの動きに注意しながらフェリシテに当てようとするリュディガー。

 だが、それよりも使えそうなものを発見した。


(……そうだ、あそこの山小屋に何かあるかも!!)


 エルヴェダーとフェリシテの姿にばかり注意が行っていて、すっかりその山小屋の存在を忘れていたリュディガーは真っ先にその山小屋へと飛び込んだ。

 山小屋の中には暖をとるための薪や油が入っている容器、それから荷造りか何かに使うための麻縄ぐらいしかない。

 イスやテーブルなどというものがないので、脱出したというのはフェリシテが嘘をついていたらしい。

 ひとまずリュディガーはロープの先端に重りとして薪を数本縛り付け、すぐに脱出。

 幸いにも、エルヴェダーとの距離が離れていたためまだこの山小屋に来ていなかったのも助かった。

 もしあの巨体でこの山小屋に突撃されでもしたら、それこそ押しつぶされてしまっていただろう。


(道具は手に入れたが、これをどうやって……)


 起死回生の一発逆転を狙い、リュディガーはエルヴェダーの動きに気を付けつつ周囲を見渡す。

 すると壁に沿っているあるものを発見した。

 あれを使えば、もしかしたら本当にこのドラゴンとフェリシテに勝てるかもしれない。


(やってみるしかない!)

『ガアアアアッ!!』


 野生の本能むき出しで迫ってくるエルヴェダーの引っかき攻撃を転がって回避し、リュディガーは見つけた岩壁の出っ張りを目指す。

 小さくて狭いながらも、人間の体重を支えることができるほどの強度を持っているうえに、うまく階段状になっているその出っ張りを使って地面から離れる。


「逃がさないんだから!」

『任せろ!!』


 すでにドラゴンを操る人間になっているフェリシテは、ペチペチとエルヴェダーの背中を叩いてリュディガーを追いかけるように指示を出す。

 当然その指示によってエルヴェダーはリュディガーを追いかけ、岩壁と自分の身体で挟み込んで降参させようという狙いがある。

 しかし、それは同時にリュディガーも心の中で企んでいた狙いがあったのだった。

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