243.思わぬ協力者と思わぬ敵
だが、その歩き出したリュディガーの目の前にいきなりこの人物が現れた。
「待って。私も一緒に行くわ」
「ん?」
そう言いながら登山道の上から姿を現したのは、なんとエルヴェダーと一緒に先にこの火山にきたはずのフェリシテだったのだ。
当初は自分一人で火山を登っていくはずだったのに、なぜいきなりフェリシテが? とリュディガーに疑問が生まれる。
それについてはフェリシテ自身の口から説明してくれた。
「こっちの登山道は結構入り組んでいる道が多いから、道をある程度教えられた私が案内するわ。それから仲間と一緒にどう戦うのかを見てみたいから協力してやってくれってエルヴェダーさんから言われたのよ」
「ああ……そうか」
だったら納得だ、と考えたリュディガーはそのフェリシテの言葉を素直に信用し、改めて登山道を登り始める。
すると早速、フェリシテが緊張感のある声でこんなことを言い出した。
「待って」
「ん?」
「何か動物の足音みたいなのが聞こえる。それから息遣いも……」
「……俺には何も聞こえないが……」
そんな会話をするリュディガーの目の前に、今度はザシッ……ザシッと人間の足音が聞こえてきた。
「……!」
「今まで一緒に冒険をしてきて、それなりの実力は持っているってわかっているわ。だけどここは通さないわよ」
「……そうか。そういうことか」
最初に目の前に立ちはだかるのはエスティナ。右手には抜身のロングソードを持っている。
それを見て、エルヴェダーが先に自分とグラルバルト以外のメンバーをこの火山に連れてきた理由がわかった。
「要は、俺以外のメンバーと模擬戦をしろってことだな」
「そういうことよ。実力を手っ取り早く図るにはこれが一番だからね」
「そう言われても、俺とフェリシテだって先に進むしかないんだ。大人しく退いてくれ」
「それはできない相談よ。それに相手は私だけじゃないのよ?」
そう言い終わると同時にエスティナが右手の指をパチンと鳴らすと、そばの木々の間から多数の魔物が現れて、エスティナと一緒にリュディガーの目の前に立ちはだかる。
「……さっきから聞こえていた足音はこの連中ね」
自分の耳の良さに感謝しながらも、緊張の色は隠せないフェリシテもリュディガーと一緒に身構える。
それを見たエスティナは手に持っているロングソードを構えつつ、じりじりとリュディガーに近づいてくる。
「エスティナは俺が相手するから、フェリシテは魔物の相手を頼む」
「う……うん」
「ダメだと思ったらすぐに逃げろ。逃げるのも戦略だぞ」
フェリシテにそう言って彼女が魔物の一匹に向かっていったのを確認したリュディガーは、ロングソードを構えて自分に走り寄ってきたエスティナにすぐに向き直る。
「やああっ!!」
リュディガーは突き出されるエスティナのロングソードを必死に避け、かわし、時には足で防ぐ。
更にそのロングソードを持つ手を掴んで体勢を崩そうと試みたが、そこにエスティナの蹴りがリュディガーの腹に目掛けて入って吹っ飛ばされる。
「ぐぉ!!」
チャンスとばかりにエスティナはロングソードを構えて走り寄るが、リュディガーは自分のソードレイピアを振るい、エスティナのロングソードをギリギリで受け流した。
その受け流しからリュディガーは反撃に出る。
仲間に対して武器を振るうのはためらわれたが、一度火がついてしまったらもう歯止めはきかない。
ソードレイピアはロングソードに対してリーチこそ少し劣るが、その分素早い攻撃が出来るのでエスティナの薙ぎ払いをしゃがんでかわし、逆に彼女の足を思いっ切り足払いで払い飛ばす。
「ぐっ!?」
地面に転がったエスティナに対して一気に畳み掛けようとするリュディガーだが、すんでの所でエスティナも持ち直して立ち上がり、技の応酬に戻る。
どこで何をどうやって学んできたかは不祥にしろ、エスティナもなかなか素早い動きを見せ、再び彼の蹴りがリュディガーの腹を捉えた!
「ぐへお!!」
再び吹っ飛ばされソードレイピアも衝撃で手から吹っ飛ばされたリュディガーだったが、彼は何とか痛みを堪えつつ立ち上がる。
「それっ!!」
エスティナはロングソードで追撃しようとしたが、リュディガーはその横に振るわれたロングソードを回避し、その勢いで今度は体勢を低くしながらエスティナの顔目掛けて回し蹴りを放つ。
だが、ギリギリでエスティナも避ける。
そこから逆に、リュディガーの腹目掛けて地面に倒れ込んだ姿勢のまま右足でキックを放った。
「おああ!」
蹴りが見事リュディガーの腹に命中して彼がふっ飛んだ。
しかしリュディガーはその痛みに耐えながら何とか立ち上がり、少し身体を振ったり手足を回しながらお互いを見据えた。
「なかなかやるじゃないのよ。だけど勝つのは私よ」
「そうはさせない。フェリシテだって頑張って戦ってるから、俺はお前を倒して先に進む!!」




